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【コラム】差別・嫌悪まで認めないのか、礼儀と謙遜を備えよう=韓国(2)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
◆韓国政界では「イデナム」が広がる

PCという用語は1960年代米国新左派の愛読書であった毛沢東の『毛沢東語録(Little Red Book)』に登場する「正しい考え(correct thinking)」という概念が由来だという説が支配的だ。PC運動は1980年代米国大学街で広がったマイノリティ人権運動の論理だった。ジェンダー・人種・年齢・性的志向・容貌などすべての種類の差別に反対した。

1990年代に入り保守勢力の反発が始まった。PCは左派の専有物、「言語と思想の警察」と攻撃した。2016年にトランプが当選した米国大統領選挙を基点に進歩内部でもPCの限界を指摘する声が高まった。


民主党はトランプ支持者を「反女性主義者・人種差別主義者・嫌悪主義者」と攻撃したが、政治的議題のないPC過剰がむしろ反感を買い、選挙にも負けて代案右派の誕生を助けた格好だからだ。PCとアイデンティティ政治が実質的な社会変化を主導することができないという批判、PCが新しい原理主義に変質しているという自省の声が出てきた。

韓国では2000年代に入ってPCに対する社会的議論が始まった。その後、男性が多いナムチョ(男超)掲示板を中心とした「アンチフェミニズム」情緒が偽善的なPCに対する反感、李俊錫(イ・ジュンソク)という政治家と出会って「イデナム」現象まで続いた。

カン・ジュンマン教授の新刊『政治的正しさ』(原題)によると、今韓国社会でPCは進歩・保守どちらからも攻撃されている状況だ。PCが表現の自由を傷つけ、言葉と行動が違っていて偽善的で、構造的な社会変化を阻害するという理由からだ。

◆道徳的自己誇示は何の足しにもならない

しかし、果たしてPCと社会変革は共存できないのだろうか。カン教授は「経済に集中している階級政治と(PCなど)認定に集中している文化政治は相互補完関係」と評す。カン教授はまた「道徳的自己誇示の代わりに人間に対する礼儀を守る謙虚なPC」を注文する。あれこれ指摘せざるをえないのがPCの運命だが、マナーが必須ということだ。たとえば米国のPC運動は自己誇示と認定闘争の要素が際立ち、進歩的な民主党支持者の間でも反感が大きい。2018年イェール大学の調査で深層インタビューをした3000人のうち8割が「PCが問題」と答えた。『Political Correctness Gone Mad?』の共同著者である英国のベストセラー作家スティーブン・フライは左派であり同性愛者だがPCに反対している。「私が究極的にPCに反対する理由は一生嫌悪して反対してきたことがPCにあるためです。説教調の介入、敬けんなふりをする態度、独善、異端狩り、非難、羞恥心を与えること、証拠のない確言、攻撃、魔女狩り式の尋問、検閲などがPCに結びついています」。フライはまた「人間が犯す最も大きな失敗は効果的なことよりも正しいことを好むこと」としながら「PCがどれくらい効果的かは考えないで、ただどれくらい正しいかだけに執着する」と突いた。

もちろん、今の韓国の状況を西欧と単純比較することはできない。我々にはまだより多くのPCが必要なのが事実だ。ただ問題はドグマのエラーだ。独善と傲慢になったPCは自ら危険に嵌っていくためだ。「(政治的)正しさに向かった倫理的情熱を大事にするものの、その情熱を『正しさ』自体を疑い、相対化するところまで推し進める必要がある」。文学評論家のハン・ヨンインの言葉だ。

ヤン・ソンヒ/中央日報コラムニスト


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