韓国の尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領が１１日、韓半島（朝鮮半島）への戦術核再配備に関連し「わが国と米国のいろいろな意見を傾聴して確かめている」と述べた。

この日午前、龍山（ヨンサン）大統領室庁舎に出勤する際、記者から「北が戦術核能力を備えているが、韓国も臨時的にでも戦術核を再配備すべきではという意見がある」という質問を受けると、「大統領としてあれこれと公開的に立場を表明する問題ではない」とし、このように答えた。

５月２３日の米ＣＮＮ放送のインタビューで「戦術核再配備の可能性は排除した」と述べたのと比較すると、可能性を開いたようなニュアンスだ。大統領室の安保ラインでも拡大抑止案の一つとして戦術核再配備カードを積極的に検討する気流が感知されている。北朝鮮の挑発への対策として戦術核再配備の優先順位を引き上げようという雰囲気だ。これに関連し「ｔｉｔ　ｆｏｒ　ｔａｔ（しっぺ返し）」戦略を基調に核には核で恐怖の均衡を図りながら平和を維持するのではという分析も出ている。


戦術核再配備論が与党で浮上するのは、高まる北朝鮮の連鎖・多層ミサイル挑発と直結している。北朝鮮は大陸間弾道ミサイル（ＩＣＢＭ）発射、７回目の核実験など戦略挑発を敢行するという見方が多い。洪準杓（ホン・ジュンピョ）大邱（テグ）市長は５日、フェイスブックに「対北朝鮮核戦略を全面的に見直すべき時」と主張し、同じ日、劉承ミン（ユ・スンミン）元議員も「戦術核再配備交渉を始めるべき」というコメントを載せた。国民の力の重鎮議員は電話で「北を非核化交渉テーブルに引き込むためにも戦術核の再配備が避けられないという主張が党内部で力を増している」と伝えた。戦術核の撤収を北朝鮮非核化カードにできるということだ。

ただ、負担も少なくない。何よりも韓半島の軍事的緊張が急激に高まる。南北間の偶発的な事故が核戦争に飛び火する可能性が高まる。中国やロシアなど周辺国の強い反発も確実視される。このため米国も韓国にまた戦術核を搬入するのが負担となる側面がある。

こうした背景を意識したかのように大統領室の関係者は午後の記者会見で、「戦術核再配備に対する大統領室の正確な立場は何か」という質問に対し、「尹大統領が以前と異なる立場を述べたとは感じていない」とし「今後どのような状況が展開するか速断するのは難しいため、そのような点を含めたのではないかと思うが、基本的に従来の立場と変わったものはないとみられる」と答えた。尹大統領は就任１００日の記者会見で「ＮＰＴ（核拡散防止条約）体制を最後まで放棄せずに守る」と述べた。

一方、尹大統領は、「韓日米軍事安保協力などの韓国政府の対北政策基調は、完全な北の非核化という最終的目標を引き出すのに依然として有効だと思うか」という質問に対し、「有効だと考える」と答えた。そして「北の非核化は３０年間、１９９０年代初期から我々も戦術核を撤収させて韓半島全体の非核化という次元で推進された」と説明した。「韓日軍事協力強化に対して国民の懸念があるが」という質問には、「核の脅威の前でどんな懸念が正当化されるのか」と反問し、批判的な立場を見せた。野党が「親日国防」「旭日旗」などの表現を使いながら韓日米軍事協力強化を批判していることについては、「賢明な国民がよく判断するだろう」と述べた。