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【コラム】「金正日の遺書」入手した脱北博士…なぜ文政権でスパイ扱いされたのか(2)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
「最高の対北朝鮮諜報将校」に挙げられたチョン・ギュピル大佐は慶北浦項(ポハン)が故郷だ。陸軍士官学校第42期として任官後、2019年に大佐として転役するまで37年間、現役服務した。情報兵科出身であり、1991年、大尉時代に人間情報(HUMINT)を担当する北朝鮮派遣工作部隊(HID)チーム長を務めた縁から、2017年まで26年間は国防部と合同参謀本部傘下の情報本部、国軍情報司令部所属の対北朝鮮工作官として国内外で活躍した。

妻子と離れて一人で中・露・朝国境地帯で「工作」をしながら風餐露宿もし、中国で14年間も在中大使館の武官などとして活動した。特に2010年の北朝鮮による韓国哨戒艦「天安」爆沈と延坪島(ヨンピョンド)砲撃挑発以降、対北朝鮮ホットライン構築のために中国に急派された。

弾劾で2017年5月に文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足すると、中国から帰国したチョン氏は定年を1年6カ月後に控えた2019年3月末に転役した。「高校卒業後初めて自然人になったため自由を思う存分享受する」という期待に胸が膨らんだ。しかし5月14日、国家情報院要員21人が28坪のマンションに集まって22時間にわたり家宅捜索を強行し、一夜にして軍事機密保護法違反(流出)容疑を受けるスパイとして扱われた。現役時代には安重根(アン・ジュングン)義士の「為国献身軍人本分」を信念として国家のために尽くすという使命感と名誉心で生きてきたチョン氏の人生が180度ひっくり返る瞬間だった。


チョン氏は国家情報院の要員に「国家と民族の前に自らの心に引っかかることがあるのなら光化門(クァンファムン)の交差点で割腹する」と話すほど堂々としていた。「誤解があると判断してコンピューターのパスワードまで親切に知らせたが、状況は予想外の方向に流れ、時間が経過しながら感情の起伏が激しくなった。信じた国家がいかなる過ちもない私にこのようにするのかという怒り、中朝国境地帯で黒色要員として活動しながら10元(約200円)で1週間を持ちこたえた当時が思い出され、悔しさが押し寄せてきて心臓が止まりそうだった。結局、救急車で運ばれた」。

国家情報院とソウル中央地検で数回の調査を受けたが、2020年2月18日に機密漏洩罪の容疑はないという通知を受けた。国家情報院が提起した機密というものはチョン氏が現役時代に機務部隊に自ら報告した内容だった。ところが容疑なしと通知しながら検察は「軍事機密保護法上、非認可者が機密を探知・収集・占有している」とし、家宅捜索令状になかった別件で起訴した。青天の霹靂だった。チョン氏「転役する前にコンピューターにあった資料をすべて削除したが、国家情報院がフォレンジックで復旧し、検察に無理に『起訴請託』をした」と反発した。

法廷で「2013年に生成した文書は1年後にすでに機密解除されたうえ、私が作成した文書を私が収集・探知したという別件の起訴は軍事機密保護法の性格上、論理に合わない」と反論したが、7月、ソウル中央地裁は懲役6月、執行猶予1年を言い渡した。直ちに控訴したチョン氏は「軍人として37年間務めながら、前から飛んでくる敵の弾丸は避けたが、後方からの味方の斧は避けられなかった」と心情を吐露した。

チョン氏は先日、大統領室に「国家情報院のスパイ捏造事件について調査してほしい」という請願書を提出した。請願書で「37年間国家のために献身した軍人をスパイとして扱い、私が勤務した対北朝鮮工作部隊・国軍情報司令部・国防情報本部はもちろん、在中大使館武官部など対北朝鮮情報を扱うヒューミント関連組織までも別件の調査を理由に焦土化させた」とし「文政権時代の国家情報院が何をしたのかを明らかにし、軍情報機関と組織の名誉を回復させるべきだ」と訴えた。

軍部独裁政権時代にはスパイ捏造事件が多かったが、「人が優先」というスローガンを掲げた文政権時代に生じたスパイ事件は多くない。イ代表とチョン氏は「文政権時代の国家情報院のスパイ扱いは、北朝鮮に不利な活動をしてきた脱北者と対北朝鮮諜報組織を破壊するために主体思想派勢力が仕組んだシナリオ通りに動いた」という疑惑を提起する。

チョン氏は「文政権に入ると左派が2017年に過去史委員会を作って国家情報院を掌握し、2018年には国軍機務司令部を解体し、2019年には国軍情報司令部を荒した。対北朝鮮情報システムが崩れたため、2019年11月の脱北青年漁民2人秘密強制送還事件、2020年9月の海洋水産部公務員イ・デジュン氏西海(ソヘ、黄海)射殺事件の真相が当時伏せられるしかなかった」と主張した。

「チョン・ギュピル大佐スパイ捏造疑惑」は9月20日の国会の対政府質問でも取り上げられた。韓悳洙(ハン・ドクス)首相は「必要な場合、監査をすることもある」とし「結局は真実が明らかになるだろう」と答えた。文政権が釈明し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が明らかにすべき疑惑が追加されたということだ。

チャン・セジョン/論説委員


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