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米「グローバルサプライチェーン再編」の波紋…G2に挟まれた韓国(1)

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
210億ドル(約27兆ウォン、約2兆8000億円)。最近、米国議会を通過したインフレ削減法案(IRA)が今後5年間に削減すると推定される米国政府の予算規模だ。米議会予算局(CBO)が分析したこの金額は、同じ期間の米国のGDPの0.018%にすぎない。政府の支出を減らしてインフレを抑えるという法案の趣旨が疑われる理由だ。民間の評価はさらに厳しい。米ペンシルベニア大ウォートンスクールの予算モデル(PWBM)はむしろ今後5年間に政府の支出が614億ドル増えると推定した後、IRAがインフレに及ぼす影響は「認識できないほどわずかな水準」と評価した。

世間の評価がこうであるため、IRAの本当の目的はインフレ削減でなくサプライチェーン再編という解釈に傾く。法案の骨子は2030年までに気候変動対応に3690億ドルを投入し、大企業に少なくとも15%の法人税を賦課して財源を確保するという内容だが、この過程で中国を徹底的に排除しているからだ。例えば、この法案に基づくと、米国内で組立・生産した電気自動車を購入する場合に限り税額控除を適用するが、この過程で中国が入り込む余地を残さなかった。電気自動車の核心部品バッテリーのほか、バッテリーの原料となる主要鉱物も米国または米国と自由貿易協定(FTA)を締結した国で採掘して生産したものを使用しなければならない。中国産の電気自動車はもちろん、中国産部品を使用した電気自動車は税制優遇を受けることができない。バッテリーサプライチェーン全般を事実上、米国内に再編するという意志が込められたのだ。

◆中国「サプライチェーン歪曲、国際貿易かく乱する」


米国のサプライチェーン再編意志が込められた法案はこれだけでない。7月に米上下院を通過した「半導体産業育成法(Chips and Science Act、CHIPS法)」も中国を排除している。いわゆる「ガードレール条項」が盛り込まれたのだ。この法案では米国に半導体工場を建設する企業に対して税制優遇をする。その代わり米国政府の支援を受けた企業は今後10年間、中国に半導体関連の投資ができない。法案で明示的に中国を排除したほど直接的な言及もあった。バイデン米大統領は9日(現地時間)、CHIPS法に署名しながら「中国共産党が法案通過を阻止するためにロビー活動もした」と同法案が中国に脅威となる点を強調した後、「未来の半導体産業は米国内で進行するだろう」と述べた。

大統領がライバル国を刺激するような発言をするのは異例だ。西側メディアは21世紀の超強大国に浮上した中国を牽制する米国の動きが浮き彫りになっていると評価する。米国の意志が表面的に表れる地点はシステム半導体製造の中心地の台湾だ。ファイナンシャルタイムズ(FT)チーフコラムニストのギデオン・ラックマン氏は最近のコラムで「過去にバイデン大統領は、中国が侵攻すれば米国が台湾を守るために戦うと3度も話したが、これは米国の公式文法である『戦略的あいまい性』から抜け出した発言」とし「台湾の運命が21世紀の力の均衡を決定するというワシントン政界の考えを反映した」と指摘した。

米国で台湾に「21世紀の覇権」がかかっているという評価が出てくる理由は何か。米国内では半導体とバッテリーが単なる高付加価値商品でなく、石油に代わるグローバル覇権の源泉と考えられているからだ。例えば米国では半導体をめぐり「21世紀バージョンの戦略的な化石燃料」というインテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者の表現がよく引用される。バッテリーも同じだ。グローバル投資銀行(IB)のモルガン・スタンレーはバッテリーについて「過去100年を支配したエネルギーサプライチェーンを再編する第2の石油」と評価した。

こうした背景から米国はトランプ前大統領の在任時期から本格的に中国を牽制している。バイデン大統領の動きも前政権と軌を一にするというのが専門家らの分析だ。亜洲大のキム・フンギュ米中研究所長は「バイデン政権が進めているのは戦略的な品目で中国の産業と技術発展を抑止する戦略」とし「トランプ政権当時に対中国貿易制裁に入ったが、予想以上に中国経済の回復弾力性が強かったため、今は同盟国と共に中国に対応する力量を備えようというのが核心」と述べた。

難しい状況に直面したのは韓国企業だ。半導体・バッテリー産業には韓国の主要企業が布陣していて、韓国経済の命運がかかっているといっても過言ではないが、韓国の最大貿易相手国の中国は不快感を隠さない。中国外務省の汪文斌報道官は10日、米国のCHIPS法が公布された直後、「世界半導体サプライチェーンを歪曲し、国際貿易のかく乱する」とし「いかなる規制も中国の科学技術の発展と産業の進歩を防ぐことはできない」と述べた。中国政府はその間、韓国が米国主導の「チップ4」同盟に加入しないよう露骨に勧告したりした。中国は韓国の半導体の最大輸入国だ。

半面、米国は韓国を代表する半導体企業のサムスン電子とSKハイニックスに対する「求愛」を繰り返している。すなわち半導体市場の分業体系に変化を要求しているのだ。これまでグローバル半導体市場は米国の技術と設計(ファブレス)の下、台湾・韓国企業がそれぞれシステム半導体とメモリー半導体を製造する分業体制だったが、CHIPS法は米国内への設備投資を要求する状況だ。ジョン・コーニン米共和党上院議員は「米国が先端半導体の供給から遠ざかれば、米国のGDPは最大3.2%減少し、年間240万件の雇用を失う」と予測した。韓国企業が米国に生産基地を移す場合、これに相応する良質の雇用が韓国から消えるということだ。

さらに台湾や日本など隣接国の間で激しい競争になる点も負担だ。これらの国は自国の利益を確保するために迅速に動いている。日本は5月に発足した「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)から中国を排除しないよう米国を説得したという。米国の半導体サプライチェーンに加わろうという動きの一方で、中国との関係を維持するためのアクションを見せたのだ。キム・ヨンウSK証券リサーチセンター長は「日本の今までの動きからみて、半導体製造が強みの韓国をチップ4同盟から押し出す一方、中国とは関係を維持して自国の素材・部品・装備企業の影響力を高めることを望むようだ」とし「韓国も中国の反発を最小化すると同時に、米国には韓国が重要な国だということを認識させる必要がある」と述べた。


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