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【コラム】すべきではない話があふれる韓国社会

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
西洋の人たちが韓国人に対して持っている印象のひとつが礼儀正しいということだ。頭を下げ腰を曲げてあいさつし、握手も両手でしたりもし、名刺も丁寧にやりとりする。名前さえむやみに呼ばず肩書きなどを付ける。尊敬語というものもあるので相当に礼儀正しい人たちとみられる。

だがこうした韓国人に対し西洋の人たちが意外に驚くことがある。その代表的な例が容貌に対して直接言及するケースだ。韓国人は安易に他人の容貌に対して話す傾向がある。さらに体重や髪型に言及したりもする。それほど親しくもない関係なのにだ。何気なくした話だが言われる立場では気分は良くはない。若く見えれたり健康に見えたり美人だというなど容貌をほめる言葉だとしてもやはり同じだ。話す側では良い意味だとしても、どこか評価として聞こえたりもする。だから容貌に対する話をするよりはいっそ話をしない方がましだ。かなり親しい仲でもそうだ。

「肉はかむべきで言葉は話すべき」という韓国のことわざがある。しかし実は言葉とは話して問題になることがもっと多い。無駄な話やすべきでない話をして失うことになる点数が話をして得られる点数よりも多いためだ。だから話というものはむしろ減らすことが味であるようだ。歳を取るほど財布は開いて口は閉じるのが良いという言葉をとても多く聞きうんざりするほどだ。だが同じ話を繰り返し聞いたからと実践するようになるものではない。それができるならば学生時代ほとんどだれでも勉強を熱心にすることになっただろう。もちろん言葉を控え、話しても用心をすべきというのはただ歳を取った人たちだけが肝に銘じるべき話ではない。


たとえ考えても言葉にしなければむしろ問題になりにくいという助言は他の深刻な主題に対しても有用だ。最近のようにソーシャルメディアが発達した時代には「言葉」を「文」に変えられるだろう。すなわち、考えても文に書きソーシャルメディアに投稿しなければリスクは減る。差別ないしヘイト発言をしたと非難されるケースを例に挙げられる。差別ないしヘイト発言とは他の人が属した集団が持っている特性、すなわち性別や人種や国籍、宗教または性的嗜好などに対しさげすんだり侮辱したりするなどの表現をすることといえるだろう。内心で何を考えていても言葉にしたり文として書くことなどで表現しなければその胸の内を問い詰める方法はない。すなわち、「表現」をすることが問題だ。もちろん最初から胸の内そのものが差別的でなければ何の問題もないが。

もちろん「表現の自由」とは憲法上保護される基本的な権利だ。だが心の中だけで考えるのとは違い、外に向け考えを現わし明らかにする権利は無制限で保護されるものではない。他人の人格や名誉を傷つける場合には制限される権利だ。そのため他人に対し抱いていた差別的や侮辱的な考えを外に表現することまで表現の自由という名目で保護することはできない。場合によっては処罰を受けることもあるため、処罰によって考えそのものが変わればより良いだろう。だが考えを変えるのは話をせず口を閉じることよりもさらに難しい。

最近韓国では大学1年生の女子学生が、試験が終わり同じ大学に通う男子学生との酒席で強姦され暴力的な死に追いやられる事件があった。こうした類の事件がとりわけ残酷に感じられるのは被害者である女性の立場では日常的なことをしただけでそれにもかかわらず致命的な結末が発生したためだ。試験が終わり学校の友達と酒を飲むことが強姦され命を失うこともあると覚悟しなくてはならないほどのことだったのか。

この悲劇的な事件に対し正しくなく不快なさまざまな話が飛び交うのを見る。こうした言葉をいわゆる2次加害と規定することもない。言ってはならない言葉だ。もし、どんな話をしてはいけないのかまったくわからないのならば、思いがけぬ無念の死を哀悼し悲しむ以外の言葉ならばあえて口の外に出す必要がないと考えれば良い。事件と関連して被害者のせいにすること、すなわち最初から男と、それも遅くまで酒を飲んだのが問題だということ。 遺体発見現場を扇情的な用語で描写し消費すること。死んだ被害者の容貌を気にして個人情報を知ろうと思うこと。加害者に対し生半可に感情移入して同情すること。こうした考えが浮かんでくるよりも犯罪そのものと加害者に対し憤怒することが当然だが、もし類似の考えがあるならば心の中にだけとどめていなければならないという話だ。まだ幸いなのは時代がそれなりに変わったというべきか、悪意なく騒ぐ声を韓国社会が素直に容認するだけではない雰囲気になったような点だ。

韓国人が礼儀がないと指摘されるもうひとつの姿が口を覆わないでするくしゃみだ。これもまた大きな音を出して大きなくしゃみをすることがすっきりすると思っていたならば、いまではパンデミックを経て気を付ける姿がみられる。くしゃみを通じたウイルス感染を防ぐためにも、舌禍を防ぐためにも、口を開くのは気を付ける方が良い。

キム・セジョン/SSWプラグマティックソリューション弁護士



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