北朝鮮が核実験を再び行うかどうかは金正恩(キム・ジョンウン)しか知らないだろう。いや、彼もまだ決めかねているのかもしれない。北朝鮮が核実験をしなくてはいけない理由はある。まず、核能力高度化のためにだ。核弾頭を少量化、軽量化してミサイルなどに装着することができるように標準化、規格化することが必要だ。
米国を圧迫するためにもそれが必要だ。2019年ハノイ会談失敗後、北朝鮮は「新しい算法」を持ってくるよう要求したが米国は動かなかった。バイデン政府になって米国の北朝鮮問題に対する集中度も弱まった。このような米国の現状維持戦略を変えるには2016~17年のように大型事件(?)が必要だと信じているはずだ。
だが、北朝鮮が今年4月、6月、7月初めに核実験をするという予測はすべて外れた。なぜだろうか。核実験を単純な問題と見たためだ。金正恩は軍事的な必要だけでなく対内状況と国際関係に及ぼす影響をすべて考慮して核実験を決める。
ところが現局面は2016年に4回目の核実験を行った時と大きく異なる。当時は核開発のために実験が不可欠で、経済も悪くなかったほうで、対中・対米関係でも失うものはなかった。しかし今の核実験は核武力の完成にはプラスになるかもしれないが必須不可欠ではない。特に核は過剰、経済は過小投資された状態で追加核実験は資源配分をより一層非効率的にする。
最も大きな問題は彼の権力に悪影響を与える恐れがあるという点だ。2016年の核実験は政権支持度を引き上げたが7回目の核実験は引き下ろすだろう。かなりの北朝鮮住民は核実験が制裁を招き、そのせいで自身の所得が急減したことを知っている。追加核実験のせいで彼らの経済的苦痛が長く続くことも直感している。もしコロナが終わっても経済が良くならないなら不満は強まるだろう。
ソウル大学統一平和研究院が北朝鮮離脱住民を対象に彼らが北朝鮮に居住する当時、住民の金正恩支持度を質問した結果、2017~18年平均72.5%から2019年62.5%に10%ポイント下落した。制裁による経済難とハノイ会談失敗が原因とみられる。現在の支持度はさらに落ちて、執権以降、最低水準になっているはずだ。コロナ防疫と貿易封鎖で経済難が深刻になったうえ、住民統制を強化したためだ。この状況での核実験は政権に危機感を呼び起こす水準まで支持度を墜落させる可能性がある。
中国の反応も無視できない。中国の目で北朝鮮の核は諸刃の剣だ。国連安保理で中国は対朝制裁に反対するだろうが苦心は深いはずだ。ひとまず米中対立が激しくなる局面で北朝鮮カードの価値が上がるという点ではプラスだ。しかし核実験がもたらす韓半島(朝鮮半島)の不安定は中国の利益に反する。冷静にみると、北朝鮮の核は米国よりも北朝鮮に隣接した国に深い懸念をもたらす問題だ。もし中国の引き止めにもかかわらず核実験を敢行するなら、中国は北朝鮮を経済的に圧迫することができる。
7次核実験だけで米国の現状維持戦略を変えることもできない。バイデン政府は米国対中露の対立が激しくなった今、北核対応側に政策の優先順位を移すのは難しい。11月米国中間選挙を控えて成果を出しにくい北朝鮮問題に集中しようとするかも疑問だ。拡張抑止を強化すること以外に米国の対応手段が制限的な点も重要な理由だ。中国とロシアの反対で国連安保理の追加制裁は採択されにくいことから、米国はセカンダリーボイコット(secondary boycotts)を考慮するだろう。
しかし北朝鮮とロシアを対象にしたセカンダリーボイコットは象徴的であるだけで実効性はほとんどない。効果を上げるには中国の大企業と銀行を制裁しなくてはならないが、米国がこれに伴う危険を引き受けるかどうかは疑問だ。対中制裁は中国をロシアと密着させてウクライナ戦争に否定的な影響を与える可能性があるためだ。
金正恩が7次核実験を敢行するならば8次、9次につながる公算が大きい。金正恩が身動きできる幅は非常に狭い。有利な局面を作ろうとして核実験を行い、逆に願わない結果が発生する可能性もある。だからといって2016年以前に戻ることも難しい。
このようなすべての危険も顧みず核実験を試みるのであれば、金正恩の決心は揺るぎないという意味だ。これはそれだけ内部状況が切迫している反証でもある。コロナ終了後、中朝貿易の再開と中国の経済支援を待つ余裕がないということだ。もし米国が「新しい算法」を出さないなら、北朝鮮は8次、9次核実験を通じて米国をさらに強く圧迫しようとするだろう。2017年の状況が再演されるといえる。
北朝鮮の7次核実験はその場限りの事件ではなく構造的変化の信号弾だ。北朝鮮の変動性が大きくなる中で韓国が直面する不確実性も大きく展望だ。揺れ動く世界秩序が北核問題と絡まって経済の下方危険を高めるだろう。韓国の政策決定者はこの大きな絵を見なければならない。そして前もって見て、細密に準備しなければならない。過去の政府でオウムのように繰り返していたありがちな政策ではなく、さまざまな政策を段階別に混合・配列する変化に富んだ政策を実行していかなければならない。
キム・ビョンヨン ソウル大国家未来戦略院長
米国を圧迫するためにもそれが必要だ。2019年ハノイ会談失敗後、北朝鮮は「新しい算法」を持ってくるよう要求したが米国は動かなかった。バイデン政府になって米国の北朝鮮問題に対する集中度も弱まった。このような米国の現状維持戦略を変えるには2016~17年のように大型事件(?)が必要だと信じているはずだ。
だが、北朝鮮が今年4月、6月、7月初めに核実験をするという予測はすべて外れた。なぜだろうか。核実験を単純な問題と見たためだ。金正恩は軍事的な必要だけでなく対内状況と国際関係に及ぼす影響をすべて考慮して核実験を決める。
ところが現局面は2016年に4回目の核実験を行った時と大きく異なる。当時は核開発のために実験が不可欠で、経済も悪くなかったほうで、対中・対米関係でも失うものはなかった。しかし今の核実験は核武力の完成にはプラスになるかもしれないが必須不可欠ではない。特に核は過剰、経済は過小投資された状態で追加核実験は資源配分をより一層非効率的にする。
最も大きな問題は彼の権力に悪影響を与える恐れがあるという点だ。2016年の核実験は政権支持度を引き上げたが7回目の核実験は引き下ろすだろう。かなりの北朝鮮住民は核実験が制裁を招き、そのせいで自身の所得が急減したことを知っている。追加核実験のせいで彼らの経済的苦痛が長く続くことも直感している。もしコロナが終わっても経済が良くならないなら不満は強まるだろう。
ソウル大学統一平和研究院が北朝鮮離脱住民を対象に彼らが北朝鮮に居住する当時、住民の金正恩支持度を質問した結果、2017~18年平均72.5%から2019年62.5%に10%ポイント下落した。制裁による経済難とハノイ会談失敗が原因とみられる。現在の支持度はさらに落ちて、執権以降、最低水準になっているはずだ。コロナ防疫と貿易封鎖で経済難が深刻になったうえ、住民統制を強化したためだ。この状況での核実験は政権に危機感を呼び起こす水準まで支持度を墜落させる可能性がある。
中国の反応も無視できない。中国の目で北朝鮮の核は諸刃の剣だ。国連安保理で中国は対朝制裁に反対するだろうが苦心は深いはずだ。ひとまず米中対立が激しくなる局面で北朝鮮カードの価値が上がるという点ではプラスだ。しかし核実験がもたらす韓半島(朝鮮半島)の不安定は中国の利益に反する。冷静にみると、北朝鮮の核は米国よりも北朝鮮に隣接した国に深い懸念をもたらす問題だ。もし中国の引き止めにもかかわらず核実験を敢行するなら、中国は北朝鮮を経済的に圧迫することができる。
7次核実験だけで米国の現状維持戦略を変えることもできない。バイデン政府は米国対中露の対立が激しくなった今、北核対応側に政策の優先順位を移すのは難しい。11月米国中間選挙を控えて成果を出しにくい北朝鮮問題に集中しようとするかも疑問だ。拡張抑止を強化すること以外に米国の対応手段が制限的な点も重要な理由だ。中国とロシアの反対で国連安保理の追加制裁は採択されにくいことから、米国はセカンダリーボイコット(secondary boycotts)を考慮するだろう。
しかし北朝鮮とロシアを対象にしたセカンダリーボイコットは象徴的であるだけで実効性はほとんどない。効果を上げるには中国の大企業と銀行を制裁しなくてはならないが、米国がこれに伴う危険を引き受けるかどうかは疑問だ。対中制裁は中国をロシアと密着させてウクライナ戦争に否定的な影響を与える可能性があるためだ。
金正恩が7次核実験を敢行するならば8次、9次につながる公算が大きい。金正恩が身動きできる幅は非常に狭い。有利な局面を作ろうとして核実験を行い、逆に願わない結果が発生する可能性もある。だからといって2016年以前に戻ることも難しい。
このようなすべての危険も顧みず核実験を試みるのであれば、金正恩の決心は揺るぎないという意味だ。これはそれだけ内部状況が切迫している反証でもある。コロナ終了後、中朝貿易の再開と中国の経済支援を待つ余裕がないということだ。もし米国が「新しい算法」を出さないなら、北朝鮮は8次、9次核実験を通じて米国をさらに強く圧迫しようとするだろう。2017年の状況が再演されるといえる。
北朝鮮の7次核実験はその場限りの事件ではなく構造的変化の信号弾だ。北朝鮮の変動性が大きくなる中で韓国が直面する不確実性も大きく展望だ。揺れ動く世界秩序が北核問題と絡まって経済の下方危険を高めるだろう。韓国の政策決定者はこの大きな絵を見なければならない。そして前もって見て、細密に準備しなければならない。過去の政府でオウムのように繰り返していたありがちな政策ではなく、さまざまな政策を段階別に混合・配列する変化に富んだ政策を実行していかなければならない。
キム・ビョンヨン ソウル大国家未来戦略院長
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