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【時視各角】26年前のおぞましい「船上集団殺人」…「気の毒だ」と弁護したのが文前大統領だった

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

1996年8月に南太平洋でおぞましい集団殺人劇が起きたペスカマー15号。[中央フォト]

建国以来多くの凶悪犯罪が発生したが、残酷性と人命被害で「ペスカマー号船上反乱事件」を凌駕する犯罪はあまりない。1996年8月2日、南太平洋でマグロ漁操業中だった254トン級遠洋漁船ペスカマー15号で起きたおぞましい集団殺人事件だ。当時その船には船長を含め韓国人8人、インドネシア人9人、中国籍の朝鮮族7人が乗船していた。しかし朝鮮族の船員が仕事がへただという理由で韓国人幹部が暴行しながら双方の間で対立が発生した。結局韓国人船長は朝鮮族船員を中間で下船させることに決めたが、一文無しになることを恐れた朝鮮族船員6人が船を奪取することを決めた。

犯人は船長と甲板長ら韓国人幹部を1人ずつ操舵室に呼び出して凶器でめった刺しにして海に投げ入れた。犯行に加担しなかった朝鮮族1人とインドネシア人船員3人は冷凍庫に閉じ込めたが、彼らが死なないため5日後に引きずり出して海に投げ入れた。さらに虫垂炎の緊急搬送のため別の船から移ってきた当時18歳の海洋高校の実習生も同じ方法で殺害した。犯人が殺した数は実に11人。操舵技術がなかった犯人は韓国人のうち航海士1人は生かしておいたが、後にこの航海士が機知を発揮して犯人を倉庫に誘引して閉じ込め事件が明るみに出た。

釜山(プサン)地裁は1996年12月の1審判決で犯人の朝鮮族6人全員に死刑を宣告した。ところが翌年4月の釜山高裁での2審では主犯のチョン・ジェチョンを除く残り5人は無期懲役に減刑された。この時2審で犯人の弁護人を務めたのが文在寅(ムン・ジェイン)前大統領だ。


文前大統領は2011年10月のメディアインタビューで「私たちは彼ら(朝鮮族同胞)に対しひそかに蔑視や見下す心理がある。ペスカマー15号事件の加害者も同胞として暖かく抱きかかえなければならず、いまもその考えに変わりはない」と明らかにした。彼は「死刑が確定したが韓国は実質的に死刑廃止国で、チョン氏は特別減刑で無期懲役となり結果的に弁論が実を結んだ」と話した。主犯のチョン・ジェチョンの減刑は2007年12月に文氏の大統領秘書室長時代に決定された。「文在寅室長」の意中が反映された蓋然性は十分だ。

ここまでは人権弁護士の美しい善行ストーリーになる。ところがペスカマー号殺人犯の領置金まで管理したという文在寅弁護士が大統領になってから180度変わった。

文在寅政権が2019年11月2日に江原道(カンウォンド)の東海(トンヘ)軍港で拿捕された北朝鮮漁民2人を5日後に強制送還したのは彼らに間接的に死刑を執行したのと同じだ。「共に民主党」は「16人を殺害した猟奇的な凶悪犯までわが国民として受け入れなければならないのか」として強制送還の正当性を防御する。民主党が極右政党ならそのような話をしても関係ない。だが民主党は「人が先だ」としていた党ではないのか。文明社会ならばいくら16人殺した凶悪犯であれ政府が裁判や公論化の手続きなく思いのままに死地に追いやることはできない。実際にペスカマー号で11人を殺した中国人は1人も死刑にならず、26年にわたり韓国国民の税金で運営される刑務所で健やかに過ごしている。

さらにその北朝鮮漁民が16人を殺したのが果たして事実なのか、事実ならば経緯はどうなのか明確になっていない。国際法上「難民を迫害することが明らかな国に強制的に送還してはならない」というノン・ルフールマンの原則もある。板門店(パンムンジョム)で目隠しをはずされ死を直感した北朝鮮の漁民が地団駄を踏んだ姿を見よ。

当初文在寅政権は強制送還を秘密裏に処理しようとした。自らも気まずかったようだ。これほどのことが大統領の裁可なく行われたとは信じ難い。ペスカマー号殺人犯には「罪は重いが事情が気の毒だった」として同情心を見せた人権派弁護士が脱北漁民にはなぜあのように冷酷に対処したのか、本当に気になる。

キム・ジョンハ/政治ディレクター



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