◆敵の挑発に報復できなければ拡大抑止は失敗
拡大抑止戦略に成功するには、敵が挑発した時に拡大抑止力に動員された核兵器などで直ちに懲らしめる必要がある。問題は米国がそのようにできるのかという疑いだ。まさに「ドゴールの疑心」だ。米国がソウルを守るために北朝鮮のICBMに対してニューヨークを犠牲にする覚悟があるかどうかだ。北朝鮮は核ミサイルで日本を脅迫し、米国が在日米軍基地さえ使用できないよう妨害する可能性もある。韓国のために米国と日本が人質になるジレンマ状況だ。
また、米国は実際、軍事作戦に核オプションを入れたことがないという。1991年の湾岸戦争当時も核オプションを検討したが、すぐに放棄した。このため韓半島でも米国が核兵器を含む軍事攻撃オプションを実行する可能性はほとんどない(ソン・スンジョン大田大教授)。このように実行の可能性が落ちる核オプションを「破れた核の傘」という。
「ヒーリーの定理」もある。1964年にデニス・ヒーリー英国防相がソ連の脅威からのNATO防御に関する会議に何度も出席した後に出した結論だ。「米国の(核)報復能力の信頼性で5%はソ連抑止に、残りの95%は欧州の人々を安心させるのに使われる」。
結局、米国は欧州の疑心と不満を解消するために戦術核をNATO5カ国に前進配備した。米国の戦術核が欧州にあるため、いつでも作動するという担保だ。
なら、同じ形で米戦術核を韓半島に配備することも可能ではないかという質問が出てくる。CCGAの調査によると、国民の56%が米国の戦術核の韓半島配備に賛成している。米国は1958年に戦術核を韓半島に配備したが、1991年にすべて撤収した。
しかし今になって再配備するのはむしろ韓半島を不安定にするという指摘もある。1991年以前に戦術核を配備していた当時は北朝鮮に核兵器がなかったが、今は状況が異なる。戦術核を韓国に再配備すれば北朝鮮の核先制攻撃を刺激するということだ。新しい施設の確保と維持も容易ではない。現在、戦術核再配備は韓米政府ともに採択していない。
◆段階的適応式の拡大抑止戦略
それで考慮できる代案が段階的適応(Phased and Adaptive)方式だ。拡大抑止に対する疑いを減らし、北朝鮮の核に現実的に対応できるオプションと判断される。米国防大学大量破壊兵器センター研究員のシェイン・スミス博士が安全保障専門サイト「38ノース」で提示した論理だ(「Renewing US Extended Deterrence Commitments Against North Korea」)。スミス博士はかつてウィリアム・ペリー米国防長官と共に仕事をした。
段階的適応方式は北朝鮮の核攻撃が近づいた状況に備えて核の傘が作動する条件を事前に整えておくことだ。この準備を完了しておけば、有事の際、韓半島への米核兵器展開時間を短縮できる。また準備の過程で米国の核の傘を含む拡大抑止力の信頼性と実行力を高めることができる。
段階的適応式拡大抑止戦略の準備過程は▼1段階=有事の際に米戦術核を配備する韓国内の場所・環境の物色▼2段階=韓米部隊による核兵器保管所周辺の警戒、事故への対応、回収作戦などの訓練▼3段階=韓米空軍戦闘機F16またはF35に核任務を付与して平時に連合訓練実施▼4段階=有事の際に米核兵器を保管する施設の事前構築--などだ。この方式は米戦術核を平時には韓半島に配備せず、有事の際に導入するという点で、NATO式の核共有体系とは異なる。
韓米はこうした準備をゆっくりと進めながら北朝鮮に拡大抑止力の実体と意志を見せることができる。中国とロシアに負担を与え、北朝鮮に圧力を加えることができる。また、韓米の戦術核保管施設の確保と訓練で拡大抑止力の信頼度が高まる。この過程で韓米は米国が単独でしてきた拡大抑止力に関する具体的な案を議論し、意思疎通が自然に行われる。
しかし米国の拡大抑止力で小雨は防げても夕立ちまで防ぐのは難しい。韓国軍の能力の強化が必須だ。国防部が進めてきた3軸体制(キルチェーン、韓国型ミサイル防衛システム、大量反撃報復)を今よりもはるかに強化する必要がある。北朝鮮のミサイルが1発でも飛んでくれば、そのミサイル基地全体を破壊する能力を備えなければならない。
<Mr.ミリタリー>「ソウルを守るためにNYを犠牲にできるのか」 韓半島版ドゴールの疑心(1)
拡大抑止戦略に成功するには、敵が挑発した時に拡大抑止力に動員された核兵器などで直ちに懲らしめる必要がある。問題は米国がそのようにできるのかという疑いだ。まさに「ドゴールの疑心」だ。米国がソウルを守るために北朝鮮のICBMに対してニューヨークを犠牲にする覚悟があるかどうかだ。北朝鮮は核ミサイルで日本を脅迫し、米国が在日米軍基地さえ使用できないよう妨害する可能性もある。韓国のために米国と日本が人質になるジレンマ状況だ。
また、米国は実際、軍事作戦に核オプションを入れたことがないという。1991年の湾岸戦争当時も核オプションを検討したが、すぐに放棄した。このため韓半島でも米国が核兵器を含む軍事攻撃オプションを実行する可能性はほとんどない(ソン・スンジョン大田大教授)。このように実行の可能性が落ちる核オプションを「破れた核の傘」という。
「ヒーリーの定理」もある。1964年にデニス・ヒーリー英国防相がソ連の脅威からのNATO防御に関する会議に何度も出席した後に出した結論だ。「米国の(核)報復能力の信頼性で5%はソ連抑止に、残りの95%は欧州の人々を安心させるのに使われる」。
結局、米国は欧州の疑心と不満を解消するために戦術核をNATO5カ国に前進配備した。米国の戦術核が欧州にあるため、いつでも作動するという担保だ。
なら、同じ形で米戦術核を韓半島に配備することも可能ではないかという質問が出てくる。CCGAの調査によると、国民の56%が米国の戦術核の韓半島配備に賛成している。米国は1958年に戦術核を韓半島に配備したが、1991年にすべて撤収した。
しかし今になって再配備するのはむしろ韓半島を不安定にするという指摘もある。1991年以前に戦術核を配備していた当時は北朝鮮に核兵器がなかったが、今は状況が異なる。戦術核を韓国に再配備すれば北朝鮮の核先制攻撃を刺激するということだ。新しい施設の確保と維持も容易ではない。現在、戦術核再配備は韓米政府ともに採択していない。
◆段階的適応式の拡大抑止戦略
それで考慮できる代案が段階的適応(Phased and Adaptive)方式だ。拡大抑止に対する疑いを減らし、北朝鮮の核に現実的に対応できるオプションと判断される。米国防大学大量破壊兵器センター研究員のシェイン・スミス博士が安全保障専門サイト「38ノース」で提示した論理だ(「Renewing US Extended Deterrence Commitments Against North Korea」)。スミス博士はかつてウィリアム・ペリー米国防長官と共に仕事をした。
段階的適応方式は北朝鮮の核攻撃が近づいた状況に備えて核の傘が作動する条件を事前に整えておくことだ。この準備を完了しておけば、有事の際、韓半島への米核兵器展開時間を短縮できる。また準備の過程で米国の核の傘を含む拡大抑止力の信頼性と実行力を高めることができる。
段階的適応式拡大抑止戦略の準備過程は▼1段階=有事の際に米戦術核を配備する韓国内の場所・環境の物色▼2段階=韓米部隊による核兵器保管所周辺の警戒、事故への対応、回収作戦などの訓練▼3段階=韓米空軍戦闘機F16またはF35に核任務を付与して平時に連合訓練実施▼4段階=有事の際に米核兵器を保管する施設の事前構築--などだ。この方式は米戦術核を平時には韓半島に配備せず、有事の際に導入するという点で、NATO式の核共有体系とは異なる。
韓米はこうした準備をゆっくりと進めながら北朝鮮に拡大抑止力の実体と意志を見せることができる。中国とロシアに負担を与え、北朝鮮に圧力を加えることができる。また、韓米の戦術核保管施設の確保と訓練で拡大抑止力の信頼度が高まる。この過程で韓米は米国が単独でしてきた拡大抑止力に関する具体的な案を議論し、意思疎通が自然に行われる。
しかし米国の拡大抑止力で小雨は防げても夕立ちまで防ぐのは難しい。韓国軍の能力の強化が必須だ。国防部が進めてきた3軸体制(キルチェーン、韓国型ミサイル防衛システム、大量反撃報復)を今よりもはるかに強化する必要がある。北朝鮮のミサイルが1発でも飛んでくれば、そのミサイル基地全体を破壊する能力を備えなければならない。
<Mr.ミリタリー>「ソウルを守るためにNYを犠牲にできるのか」 韓半島版ドゴールの疑心(1)
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