2010年5月末、韓国国内で公開されなかった高位の脱北者A氏に会ったことがある。北朝鮮で武器開発に関与した人物で、同年3月26日に発生した韓国哨戒艦「天安」爆沈事件の調査結果が発表された直後だった。当局は事件発生海域で発見したとして魚雷の推進体を公開した。北朝鮮が海外に輸出するために製作したCHT-02D魚雷紹介書と同じだった。当時、調査団はこの推進体と魚雷設計図が一致するという点を「天安」爆沈事件が北朝鮮の犯行という証拠として提示した。事件発生の数日前に北朝鮮のヨノ(=サケ)級潜水艦が基地を出発し、CHT-02D魚雷で「天安」を攻撃したという説明だった。
こうした内容に接したA氏の見解はこうだ。
「北朝鮮のことをよく知らなければいけない。そのような攻撃は200%成功の可能性があってこそ敢行する。機械はいくら完ぺきにしても故障することがある。それなら目で直接見て攻撃する方法を選択するのが北朝鮮だ。CHT-02D魚雷の残骸が発見されたが、これを人間魚雷に改造することも可能だ。北朝鮮は1970年代初め、人間魚雷を導入していろいろと改造した」。
高度の訓練を受けた「要員」を投入し、潜水艦から人間魚雷を操って「天安」の真下まで接近して自爆した可能性が高いという話だった。A氏の主張が事実かどうかは確認されていない。12年が過ぎた時期にA氏の「200%」という表現が思い浮かぶのは、最高指導者が変わっても北朝鮮の属性はそのままという気がするからだ。
◆慎重か、機会を逃したのか
北朝鮮は先月12日、政治局会議を開き、新型コロナで死亡者が発生した事実を外部に知らせた。新型コロナ拡大を懸念して国境をセルフ封鎖してから28カ月後だ。北朝鮮は中国で新型コロナが拡大すると、2020年1月、外部と接触を断って真空状態を維持する政策を選んだ。10年ほど前の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の時と同じだ。
しかし数カ月間で落ち着いたこれら伝染病とは違い、北朝鮮は新型コロナを避けることができなかった。多くの国が新型コロナに苦しんで正常に戻る時期に、北朝鮮が自ら「大動乱」と表現するほどの危機を迎えた。北朝鮮は先月16日(発表日基準、39万2920人)をピークに、12日後には感染疑い患者が10万人(一日発生)以下に減ったと主張する。
北朝鮮の主張が事実なら幸いだ。個人の経済生活などを考慮しない統制社会の北朝鮮であるため可能だったのかもしれない。しかし新型コロナの爆発力を考慮すればまだ消えた火ではない。世界保健機関(WHO)のライアン対応チーム長は1日(現地時間)、「状況は良くならず悪化していると推定している」と診断した。
ここで一つ。韓国と米国は昨年から北朝鮮へのワクチン支援を議論してきた。先月10日に発足した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権もワクチン支援を検討した。米国は昨年末、北朝鮮住民全体が3回接種できる分量の6000万ドーズを支援するために北朝鮮と接触した。ニューヨークの国連に派遣された北朝鮮代表部を通じてだ。当時、北朝鮮側(金星大使)は「ファイザーか、モデルナか。上部に報告する」と関心を見せたという。
しかし、いかなる理由のためか、それ以降は北朝鮮の応答がなかった。むしろ北朝鮮は今年に入って17回もミサイルを発射し、軍事的緊張を高めた。北朝鮮が新型コロナ感染者発生の事実を公開したのは外部の支援を念頭に置いているという見方もあったが、北朝鮮は先月25日にもミサイルを発射した。北朝鮮がミサイル発射でなく、ワクチン支援の提案に呼応していれば、住民の被害は減り、朝米対話を再開する機会になったのではないだろうか。
北朝鮮が機会を逃した事例は他にもある。金正恩(キム・ジョンウン)委員長は執権後「一挙飛躍」というカードを取り出した。CNC(コンピューター数値制御)など科学技術を活用して経済発展速度を高めるという戦略だった。国際社会との交流・協力が必須条件だった。これを意識したのか、金委員長は2018年から韓国と米国・中国などと首脳会談をした。しかし2019年2月にベトナムで開催された2回目の米朝首脳会談で寧辺(ヨンビョン)核施設と追加施設(アルファ)を不能化すべきだという米国の主張を拒否した北朝鮮は「長期戦」と「緊縮」に転じた。
【コラム】「一挙飛躍」の機会を逃した金正恩…問題はタイミングだ(2)
こうした内容に接したA氏の見解はこうだ。
「北朝鮮のことをよく知らなければいけない。そのような攻撃は200%成功の可能性があってこそ敢行する。機械はいくら完ぺきにしても故障することがある。それなら目で直接見て攻撃する方法を選択するのが北朝鮮だ。CHT-02D魚雷の残骸が発見されたが、これを人間魚雷に改造することも可能だ。北朝鮮は1970年代初め、人間魚雷を導入していろいろと改造した」。
高度の訓練を受けた「要員」を投入し、潜水艦から人間魚雷を操って「天安」の真下まで接近して自爆した可能性が高いという話だった。A氏の主張が事実かどうかは確認されていない。12年が過ぎた時期にA氏の「200%」という表現が思い浮かぶのは、最高指導者が変わっても北朝鮮の属性はそのままという気がするからだ。
◆慎重か、機会を逃したのか
北朝鮮は先月12日、政治局会議を開き、新型コロナで死亡者が発生した事実を外部に知らせた。新型コロナ拡大を懸念して国境をセルフ封鎖してから28カ月後だ。北朝鮮は中国で新型コロナが拡大すると、2020年1月、外部と接触を断って真空状態を維持する政策を選んだ。10年ほど前の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の時と同じだ。
しかし数カ月間で落ち着いたこれら伝染病とは違い、北朝鮮は新型コロナを避けることができなかった。多くの国が新型コロナに苦しんで正常に戻る時期に、北朝鮮が自ら「大動乱」と表現するほどの危機を迎えた。北朝鮮は先月16日(発表日基準、39万2920人)をピークに、12日後には感染疑い患者が10万人(一日発生)以下に減ったと主張する。
北朝鮮の主張が事実なら幸いだ。個人の経済生活などを考慮しない統制社会の北朝鮮であるため可能だったのかもしれない。しかし新型コロナの爆発力を考慮すればまだ消えた火ではない。世界保健機関(WHO)のライアン対応チーム長は1日(現地時間)、「状況は良くならず悪化していると推定している」と診断した。
ここで一つ。韓国と米国は昨年から北朝鮮へのワクチン支援を議論してきた。先月10日に発足した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権もワクチン支援を検討した。米国は昨年末、北朝鮮住民全体が3回接種できる分量の6000万ドーズを支援するために北朝鮮と接触した。ニューヨークの国連に派遣された北朝鮮代表部を通じてだ。当時、北朝鮮側(金星大使)は「ファイザーか、モデルナか。上部に報告する」と関心を見せたという。
しかし、いかなる理由のためか、それ以降は北朝鮮の応答がなかった。むしろ北朝鮮は今年に入って17回もミサイルを発射し、軍事的緊張を高めた。北朝鮮が新型コロナ感染者発生の事実を公開したのは外部の支援を念頭に置いているという見方もあったが、北朝鮮は先月25日にもミサイルを発射した。北朝鮮がミサイル発射でなく、ワクチン支援の提案に呼応していれば、住民の被害は減り、朝米対話を再開する機会になったのではないだろうか。
北朝鮮が機会を逃した事例は他にもある。金正恩(キム・ジョンウン)委員長は執権後「一挙飛躍」というカードを取り出した。CNC(コンピューター数値制御)など科学技術を活用して経済発展速度を高めるという戦略だった。国際社会との交流・協力が必須条件だった。これを意識したのか、金委員長は2018年から韓国と米国・中国などと首脳会談をした。しかし2019年2月にベトナムで開催された2回目の米朝首脳会談で寧辺(ヨンビョン)核施設と追加施設(アルファ)を不能化すべきだという米国の主張を拒否した北朝鮮は「長期戦」と「緊縮」に転じた。
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