◆「都市型コミュニティー」が最大の課題
--日本にとって人口減少社会の含意は。
「日本の人口は明治維新後に急激に増加し、第2次世界大戦後にも同じ傾向が続いた。しかし2008年をピークに減少に転じて、現在の出生率(1.34)が続けば2050年ごろには1億人を下回り、その後はさらに減少すると予想される。『人口と経済は拡大を続ける」という近代化以降の当然の前提が根本から変わるだけに、日本社会のあらゆる面で大きな影響を及ぼすと考えられる。人口は定常化するのが望ましい。現在の出生率が2人前後に徐々に改善するのがよく、2100年ごろに向かってそうなれば、日本の人口は8000万人前後で減少が止まって安定化する。これが望ましい方向だ」
--人生の前半期の社会保障強化を強調しているが。
「出生率低下の背景には夫婦の出生児数減少と未婚・晩婚が挙げられる。しかし夫婦の出生児数はほとんど減っていない。したがって未婚・晩婚が大きな理由であり、これは若い世代の雇用・生活の不安定とも関係している。このため若い世代に対する支援が何よりも重要であり、教育(大学教育の私的負担軽減など)、雇用、住宅をはじめとする多くの面で支援を強化しなければいけない」
--「地域拠点集中」の国土構造を説明してほしい。
「東京一極集中が大きな問題だ。東京の出生率は47都道府県のうち最も低いため、東京に集中するほど日本全体の人口減少が加速する。現在進行していることをは正確に言えば『一極集中』でなく『少極集中』だ。すなわち、札幌、仙台、広島、福岡の人口増加率(移動含む)は東京圏ほど高く、地価上昇率は東京圏より高い。これを多極集中にしなければいけない。極になる都市・地域が多数存在し、極自体が集約的な構造になることをいう」
--日本の人口移動に関して「地方から離陸する時代から地方に着陸する時代に変わった」という点が興味深い。
「地方から大都市圏への人口移動が多かった時期は今まで3回あった。1960年代の急速な都市化と高度成長期、1980年代後半のバブル経済期、2000年代以降から現在までがそれだ。この中で圧倒的に規模が大きい移動は1960年代であり、1980年代と2000年代以降は規模が小さい。現在、若い世代で『ローカル(local)、地域、地元』志向が強くなっている。例えば慶応・早稲田など東京の私立大の場合、以前は全国から学生が集まったが、今は入学生の80%が首都圏出身だ。さらに新型コロナの影響で集中を避けようという傾向が表れている」
--コミュニティーはなぜ重要なのか。
「『世界価値観調査』の結果を見ると、日本は先進国のうち最も『社会的孤立』が高い国だ。ここには農村や会社など古いコミュニティーが崩れ、新しいコミュニティーが生じない点が関連している。日本社会は『内と外』の区別が強く、集団の閉鎖的傾向も強い。個人が独立しながら集団を越えてつながっていく『都市型コミュニティー』の構築が日本社会の最大の課題だ。日本の都市は米国をモデルにして過度に道路、自動車中心に建設され、コミュニティー空間という性格を失っている。地方都市の相当数は中心部が空洞化して『シャッター通り』になっている。ドイツなど欧州の都市を参考にして、歩いて楽しめる都市をつくっていくことが極めて大きな課題だ」
◆経済拡大への信頼は捨てるべき
--人口と財政の側面で日本の流れは。
「昭和(1926-89年)は人口と経済が拡大し、経済成長目標ばかりを目指した『集団で1本の道を登る時代』だった。平成(1989-2019年)は昭和時代の『ナンバーワンの日本(Japan as Number One)』の成功体験が染みついて昭和の方式を続けた結果『失われた30年』となり、財政赤字が大きく累積した。令和(2019-)は人口減少の時代だ。『人口と経済は拡大を続ける』という発想を根本から変えて『持続可能な福祉社会』を実現すべき時代だ。若い世代であるほど昭和的な発想から徐々に変わっていて、希望を見ている」
--韓国に提言することがあれば。
「韓国と日本の状況は大きくみると非常に似ていると思う。出生率低下、若い世代の厳しい状況、過度な集中社会などがそうだ。これは急激な『追いつき追い越せ』型の近代化と成長社会の経験による側面が大きい。日本は高齢化による負担増加の問題を直視せず、1000兆円(GDPの約2倍)にのぼる負債を将来の世代に先送りしている。現在の日本の最大の問題はここにある。韓国が問題を将来世代に先送りせず、現世代で正面から議論・対応していくことを期待し、また提言したい。日韓両国は急激な人口減少社会への移行という点で共通の大きな課題に直面している。これに関する相互対話、交流、連携が今後さまざまな形態で進行することを期待する。両国が連携してアジアで『持続可能な福祉社会』を実現していくことが時代の課題(テーマ)だとみる」
【コラム】「2050年の日本、地方分散型に進んでこそ破局免れる」(1)
--日本にとって人口減少社会の含意は。
「日本の人口は明治維新後に急激に増加し、第2次世界大戦後にも同じ傾向が続いた。しかし2008年をピークに減少に転じて、現在の出生率(1.34)が続けば2050年ごろには1億人を下回り、その後はさらに減少すると予想される。『人口と経済は拡大を続ける」という近代化以降の当然の前提が根本から変わるだけに、日本社会のあらゆる面で大きな影響を及ぼすと考えられる。人口は定常化するのが望ましい。現在の出生率が2人前後に徐々に改善するのがよく、2100年ごろに向かってそうなれば、日本の人口は8000万人前後で減少が止まって安定化する。これが望ましい方向だ」
--人生の前半期の社会保障強化を強調しているが。
「出生率低下の背景には夫婦の出生児数減少と未婚・晩婚が挙げられる。しかし夫婦の出生児数はほとんど減っていない。したがって未婚・晩婚が大きな理由であり、これは若い世代の雇用・生活の不安定とも関係している。このため若い世代に対する支援が何よりも重要であり、教育(大学教育の私的負担軽減など)、雇用、住宅をはじめとする多くの面で支援を強化しなければいけない」
--「地域拠点集中」の国土構造を説明してほしい。
「東京一極集中が大きな問題だ。東京の出生率は47都道府県のうち最も低いため、東京に集中するほど日本全体の人口減少が加速する。現在進行していることをは正確に言えば『一極集中』でなく『少極集中』だ。すなわち、札幌、仙台、広島、福岡の人口増加率(移動含む)は東京圏ほど高く、地価上昇率は東京圏より高い。これを多極集中にしなければいけない。極になる都市・地域が多数存在し、極自体が集約的な構造になることをいう」
--日本の人口移動に関して「地方から離陸する時代から地方に着陸する時代に変わった」という点が興味深い。
「地方から大都市圏への人口移動が多かった時期は今まで3回あった。1960年代の急速な都市化と高度成長期、1980年代後半のバブル経済期、2000年代以降から現在までがそれだ。この中で圧倒的に規模が大きい移動は1960年代であり、1980年代と2000年代以降は規模が小さい。現在、若い世代で『ローカル(local)、地域、地元』志向が強くなっている。例えば慶応・早稲田など東京の私立大の場合、以前は全国から学生が集まったが、今は入学生の80%が首都圏出身だ。さらに新型コロナの影響で集中を避けようという傾向が表れている」
--コミュニティーはなぜ重要なのか。
「『世界価値観調査』の結果を見ると、日本は先進国のうち最も『社会的孤立』が高い国だ。ここには農村や会社など古いコミュニティーが崩れ、新しいコミュニティーが生じない点が関連している。日本社会は『内と外』の区別が強く、集団の閉鎖的傾向も強い。個人が独立しながら集団を越えてつながっていく『都市型コミュニティー』の構築が日本社会の最大の課題だ。日本の都市は米国をモデルにして過度に道路、自動車中心に建設され、コミュニティー空間という性格を失っている。地方都市の相当数は中心部が空洞化して『シャッター通り』になっている。ドイツなど欧州の都市を参考にして、歩いて楽しめる都市をつくっていくことが極めて大きな課題だ」
◆経済拡大への信頼は捨てるべき
--人口と財政の側面で日本の流れは。
「昭和(1926-89年)は人口と経済が拡大し、経済成長目標ばかりを目指した『集団で1本の道を登る時代』だった。平成(1989-2019年)は昭和時代の『ナンバーワンの日本(Japan as Number One)』の成功体験が染みついて昭和の方式を続けた結果『失われた30年』となり、財政赤字が大きく累積した。令和(2019-)は人口減少の時代だ。『人口と経済は拡大を続ける』という発想を根本から変えて『持続可能な福祉社会』を実現すべき時代だ。若い世代であるほど昭和的な発想から徐々に変わっていて、希望を見ている」
--韓国に提言することがあれば。
「韓国と日本の状況は大きくみると非常に似ていると思う。出生率低下、若い世代の厳しい状況、過度な集中社会などがそうだ。これは急激な『追いつき追い越せ』型の近代化と成長社会の経験による側面が大きい。日本は高齢化による負担増加の問題を直視せず、1000兆円(GDPの約2倍)にのぼる負債を将来の世代に先送りしている。現在の日本の最大の問題はここにある。韓国が問題を将来世代に先送りせず、現世代で正面から議論・対応していくことを期待し、また提言したい。日韓両国は急激な人口減少社会への移行という点で共通の大きな課題に直面している。これに関する相互対話、交流、連携が今後さまざまな形態で進行することを期待する。両国が連携してアジアで『持続可能な福祉社会』を実現していくことが時代の課題(テーマ)だとみる」
【コラム】「2050年の日本、地方分散型に進んでこそ破局免れる」(1)
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