韓国の尹錫悦（ユン・ソクヨル）次期大統領が５月１０日に発足する新政府の初めての外交部長官候補に野党「国民の力」の朴振（パク・ジン）議員を指名した。朴氏は１３日にコメントを通じて「国際情勢が急変する厳しい時期に外交部長官の指名を受けることになり重い使命感を感じている」とし「外交にはただ国益だけという姿勢で国会聴聞過程から謙虚に臨みたい」と述べた。朴氏は新型コロナウイルス感染症（新型肺炎）感染によりコメント発表を書面で行った。

◆金泳三（キム・ヨンサム）大統領の通訳務めた「米国通」外交専門家

朴氏は党内外で外交専門家、特に「米国通」として有名だ。４選のベテラン議員で、２００８年第１８代国会で統一外交通商委員長を務め、現・第２１代国会では外交統一委員会の委員として文在寅（ムン・ジェイン）政府の外交政策を批判的観点から評価してきた。１９７７年外務考試（司法試験）に合格して外務部事務官を務め、留学後は帰国して金泳三政府で公報・政務企画秘書官として仕事をした。首脳会談などでは通訳も担当した。


引き継ぎ委員会関係者は「韓米同盟を中心に外交地形を多角化し、中国に対して『言うべきことは言う外交』が必要だというのが朴氏の外交哲学」としながら「尹氏の外交政策スローガンである『堂々とした外交』を実現する最適任者と評価される」と話した。

朴氏は大統領選挙当時は尹キャンプのグローバルビジョン委員長を務めて「文在寅政権が崩壊させた大韓民国の外交・安保を根本から変える」と述べた。新政府の主要外交課題では韓米同盟の正常化と相互尊重に基づいた対中外交を強調してきた。今月３日には７泊８日の日程で韓米政策協議団を率いて米国を訪問し、韓米の包括的戦略同盟の強化とサプライチェーン（供給網）・気候変動・新型コロナなど新政府が解決しなければならない韓米間懸案について広く協議した。

◆大統領選挙予備選で競ったが落選後は尹氏支持を宣言

朴氏は昨年７月に大統領候補の出馬を宣言して一時党内の予備選で尹氏と競ったことがある。出馬宣言当時、朴氏の最初のメッセージは外部の政治の重要性だった。次期大統領に必要な資質として外交力を強調し、「先進国型グローバル大統領になる」という抱負を明らかにした。朴氏は在外同胞や国内居住外国人、主要国の外交関係者をターゲットに「ＰＲＯＭＩＳＥＳ　ＦＯＲ　ＰＥＯＰＬＥ（国民のための約束）」という題名の英語出馬宣言映像を製作したこともある。

だが、昨年９月の国民の力大統領選挙予備選でカットオフとなった後、尹氏に対する支持を宣言した。当時尹氏は「本人が持っておられる政治的キャリアだけでなく、外交安保専門家としての実力とネットワークを（使って）、私が選挙を行ってさらに執権以降まで継続して背後からサポートすると話してくださったので心強い」と話していた。

◆文大統領の終戦宣言、原点から再検討か

尹政府では北朝鮮に対するアプローチの大転換が予想されている中で、文政府が注力していた終戦宣言に対して朴氏も以前から反対の立場を明確にしてきた。昨年１０月、国会外交統一委員会の在米韓国大使館国政監査で、文政府の「先に終戦宣言、後で非核化」構想に対して正面から批判した。「（終戦宣言は）非核化の入口ではなく出口になるべき」としながらだ。これは北朝鮮の実質的な非核化の進展を前提とした場合に終戦宣言の議論を始めることができるという尹氏の立場と一致する指摘だった。

朴氏はジョー・バイデン米国大統領とも縁がある。２００８年国会統一外交通商委員長時期、米上院外交委員長だったバイデン大統領と会った。その後も朴氏は韓米協会会長、韓米同盟財団顧問などを歴任し、対米公共外交に取り組んできた。バイデン大統領が就任した昨年１月には直接書簡を送り、韓米コロナワクチンパートナーシップ締結を提案した。

朴氏が国会人事聴聞会を経て任命されれば最も重要な初めてのミッションは韓米首脳会談の準備になるものとみられる。バイデン大統領が５月２４日の訪日前後に訪韓する見通しであるため、尹政府は歴代大統領のうち就任から最もはやい期間に初の韓米首脳会談を行うことになる可能性が大きい。準備期間が短いだけに、新しい外交安保ラインは尹政府の同盟観と外交安保政策構想を効果的に米側に伝達し、北核対応などの懸案を高密度で議論することに集中するものとみられる。