青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の龍山(ヨンサン)移転をめぐり新旧の権力が衝突している。尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領は宮廷のような青瓦台を捨てて国民に返すという意志を繰り返し表したが、文在寅(ムン・ジェイン)政権は安保の空白を理由にブレーキをかけている。文大統領は21日、国家安全保障会議(NSC)拡大関係長官会議で「韓半島(朝鮮半島)安保危機が高まり、安保力量の結集が必要な交代期に、青瓦台危機管理センターと国防部、合同参謀本部を移転するのは、安保の空白と混乱を招くことになる」と述べた。合同参謀本部議長出身の11人は指揮統制システム構築問題を提起した。しかし大将64人を含む陸・海・空軍および海兵隊の予備役将軍およそ1000人は、移転しても安保の空白は生じないという立場だ。どの言葉が正しいのだろうか。
◆内部施設が十分でない青瓦台のバンカー
筆者は国防部報道官を務めた5年間、北朝鮮の延坪島(ヨンピョンド)砲撃挑発(2010年11月)、木箱入り地雷事件、長距離ロケット発射、3回目の核実験(2016年2月)などを合同参謀本部のバンカーで対処した。毎年、冠岳山(クァナクサン)B1バンカーで1週間、夜通しの乙支(ウルチ)訓練にも参加し、青瓦台のバンカーをはじめ、軍のほとんどすべての指揮バンカーに行った。青瓦台のバンカーは堅固性に問題があり、内部施設も十分でない。陸軍軍団級のバンカーに及ばない。毎週の会議で青瓦台に行くたびに秘書棟(与民館)は北朝鮮のミサイル攻撃に脆弱な構造である点を目撃した。青瓦台本館は500メートルも離れていて、職員または国民との意思疎通が容易でない。
まず、青瓦台を龍山国防部庁舎に移転する過程で安保の空白が生じるという指摘はどれほど妥当なのだろうか。青瓦台が国防部庁舎に移り、国防部が合同参謀本部庁舎に入る過程で、危機管理と戦争指揮に支障が発生するのではという指摘だ。しかし国防部庁舎にはC4Iシステム(合同指揮統制体系)のうち国防通信網と国家地図通信網はすでに設置されている。交通と消防防災など災害災難網は受信装置さえ補完すればよいという。尹次期大統領の任期が始まる5月10日0時を基準に国防部庁舎に用意された大統領の新しい執務室のC4Iシステムは稼働し、その直前まで現在の青瓦台バンカーのC4Iシステムも維持される。大統領交代期間に危機管理の空白はほとんどないということだ。もちろんハッキングに対しては警戒段階を高めて対処する必要がある。
◆国家指揮統制に混乱ない
国防部が入る合同参謀本部庁舎とバンカーにはC4Iシステムがすでに整っている。基本的に作戦は合同参謀本部が遂行するが、バンカーは24時間稼働している。合同参謀本部の作戦に関与する一部の国防部職員は個人に支給された端末を合同参謀本部庁舎でコードさえ連結すればよい。冠岳山の地下にある政府B1バンカーで遂行する乙支訓練の時も、国防部の職員は認可されたノートブックを持っていく。移転は慌ただしくなるが、国家指揮統制と戦争指揮体系には大きな問題がないと考える。
龍山に移転すれば、この地域に大統領と国防部長官、合同参謀本部議長など軍統帥権者が集まり、北朝鮮の攻撃に危険だという指摘もある。北朝鮮が長射程砲やミサイルを発射すれば、軍統帥に関する核心を一度に失うということだ。軍事的に見るとこれは誇張されている。核兵器ならまだしも、通常ミサイル1発で国防部と合同参謀本部庁舎を同時に破壊するのは不可能だ。北朝鮮はその気になれば今すぐにでもミサイル2発、3発を青瓦台と国防部・合同参謀本部建物に撃つことができる。距離は問題でない。英ロンドンのダウニング街にある首相執務室と国防部はわずか200メートルの距離にあり、フランスも大統領が執務するエリゼ宮殿と国防省の距離が1キロだ。
◆北朝鮮弾道ミサイルの限界
北朝鮮の通常弾頭を搭載したミサイルが国防部や合同参謀本部庁舎に命中しても完全に破壊することはできない。しかも北朝鮮の弾道ミサイルは誤差が数十メートルにのぼり、建物の大統領執務室のような特定地点に命中させることはできない。北朝鮮長射程砲は誤差が250メートル以上で破壊力も大きくない。青瓦台が移転する国防部庁舎北側のコンクリート壁を貫けるかどうかという水準だ。これは北朝鮮の延坪島(ヨンピョンド)砲撃当時に確認されている。国防部と合同参謀本部のバンカーは、北朝鮮のいかなる通常兵器の攻撃を受けても安全だ。一方、半地下の青瓦台のバンカーは非常に脆弱で、北朝鮮のミサイルが直撃すれば崩壊するおそれもある。
軍統帥権者の効率的な遂行という次元で見ると、青瓦台よりも国防部庁舎がはるかに有利だ。国防部のバンカーは安全で、システムも整っている。有事の際、隣の合同参謀本部庁舎で大統領が軍指揮官の意見を聴くこともできる。合同参謀本部のバンカーでは作戦中の空軍戦闘機パイロットとの通話も可能だ。今でも北朝鮮がミサイル発射など挑発が生じれば、国防部長官は直ちに合同参謀本部庁舎に向かう。したがって青瓦台の龍山移転に安保の空白が生じるという言葉は納得しがたい。
国防部が合同参謀本部庁舎に入ることに対する不平はあるかもしれない。事務室が狭くなるからだ。しかし国防部と合同参謀本部は長い間、同じところにあった。両機関は1970年から2003年まで国防部の別館に、2003年から2012年までは現国防部庁舎にあった。2011年のアデン湾黎明作戦は国防部庁舎地下バンカーで合同参謀本部と共に見守った。
合同参謀本部は戦時作戦統制権の転換に備え、2012年に新庁舎をすぐ隣に建てて移転した。この庁舎は韓米連合司令部が入ることを考慮して国防部より大きく建てたが、連合司令部は平沢(ピョンテク)基地に移った。このため合同参謀本部は事務室を広く使用している。合同参謀本部の地下バンカーは国防部のバンカーの倍ほどの規模で、ほとんど地下3階規模の劇場構造だ。合同参謀本部議長の執務室は国防部長官室よりはるかに大きい。それだけ合同参謀本部の建物には余裕があるということだ。国防部領内には改築された別館があるが、国防部庁舎と規模が似ている。このほか国防部領内には付属建物がいくつかある。国防部と業務的に直接関係がない部隊と機関は、近隣地域の国防部所有の空いた建物や首都防衛司令部に移してもかまわない。
◆内部施設が十分でない青瓦台のバンカー
筆者は国防部報道官を務めた5年間、北朝鮮の延坪島(ヨンピョンド)砲撃挑発(2010年11月)、木箱入り地雷事件、長距離ロケット発射、3回目の核実験(2016年2月)などを合同参謀本部のバンカーで対処した。毎年、冠岳山(クァナクサン)B1バンカーで1週間、夜通しの乙支(ウルチ)訓練にも参加し、青瓦台のバンカーをはじめ、軍のほとんどすべての指揮バンカーに行った。青瓦台のバンカーは堅固性に問題があり、内部施設も十分でない。陸軍軍団級のバンカーに及ばない。毎週の会議で青瓦台に行くたびに秘書棟(与民館)は北朝鮮のミサイル攻撃に脆弱な構造である点を目撃した。青瓦台本館は500メートルも離れていて、職員または国民との意思疎通が容易でない。
まず、青瓦台を龍山国防部庁舎に移転する過程で安保の空白が生じるという指摘はどれほど妥当なのだろうか。青瓦台が国防部庁舎に移り、国防部が合同参謀本部庁舎に入る過程で、危機管理と戦争指揮に支障が発生するのではという指摘だ。しかし国防部庁舎にはC4Iシステム(合同指揮統制体系)のうち国防通信網と国家地図通信網はすでに設置されている。交通と消防防災など災害災難網は受信装置さえ補完すればよいという。尹次期大統領の任期が始まる5月10日0時を基準に国防部庁舎に用意された大統領の新しい執務室のC4Iシステムは稼働し、その直前まで現在の青瓦台バンカーのC4Iシステムも維持される。大統領交代期間に危機管理の空白はほとんどないということだ。もちろんハッキングに対しては警戒段階を高めて対処する必要がある。
◆国家指揮統制に混乱ない
国防部が入る合同参謀本部庁舎とバンカーにはC4Iシステムがすでに整っている。基本的に作戦は合同参謀本部が遂行するが、バンカーは24時間稼働している。合同参謀本部の作戦に関与する一部の国防部職員は個人に支給された端末を合同参謀本部庁舎でコードさえ連結すればよい。冠岳山の地下にある政府B1バンカーで遂行する乙支訓練の時も、国防部の職員は認可されたノートブックを持っていく。移転は慌ただしくなるが、国家指揮統制と戦争指揮体系には大きな問題がないと考える。
龍山に移転すれば、この地域に大統領と国防部長官、合同参謀本部議長など軍統帥権者が集まり、北朝鮮の攻撃に危険だという指摘もある。北朝鮮が長射程砲やミサイルを発射すれば、軍統帥に関する核心を一度に失うということだ。軍事的に見るとこれは誇張されている。核兵器ならまだしも、通常ミサイル1発で国防部と合同参謀本部庁舎を同時に破壊するのは不可能だ。北朝鮮はその気になれば今すぐにでもミサイル2発、3発を青瓦台と国防部・合同参謀本部建物に撃つことができる。距離は問題でない。英ロンドンのダウニング街にある首相執務室と国防部はわずか200メートルの距離にあり、フランスも大統領が執務するエリゼ宮殿と国防省の距離が1キロだ。
◆北朝鮮弾道ミサイルの限界
北朝鮮の通常弾頭を搭載したミサイルが国防部や合同参謀本部庁舎に命中しても完全に破壊することはできない。しかも北朝鮮の弾道ミサイルは誤差が数十メートルにのぼり、建物の大統領執務室のような特定地点に命中させることはできない。北朝鮮長射程砲は誤差が250メートル以上で破壊力も大きくない。青瓦台が移転する国防部庁舎北側のコンクリート壁を貫けるかどうかという水準だ。これは北朝鮮の延坪島(ヨンピョンド)砲撃当時に確認されている。国防部と合同参謀本部のバンカーは、北朝鮮のいかなる通常兵器の攻撃を受けても安全だ。一方、半地下の青瓦台のバンカーは非常に脆弱で、北朝鮮のミサイルが直撃すれば崩壊するおそれもある。
軍統帥権者の効率的な遂行という次元で見ると、青瓦台よりも国防部庁舎がはるかに有利だ。国防部のバンカーは安全で、システムも整っている。有事の際、隣の合同参謀本部庁舎で大統領が軍指揮官の意見を聴くこともできる。合同参謀本部のバンカーでは作戦中の空軍戦闘機パイロットとの通話も可能だ。今でも北朝鮮がミサイル発射など挑発が生じれば、国防部長官は直ちに合同参謀本部庁舎に向かう。したがって青瓦台の龍山移転に安保の空白が生じるという言葉は納得しがたい。
国防部が合同参謀本部庁舎に入ることに対する不平はあるかもしれない。事務室が狭くなるからだ。しかし国防部と合同参謀本部は長い間、同じところにあった。両機関は1970年から2003年まで国防部の別館に、2003年から2012年までは現国防部庁舎にあった。2011年のアデン湾黎明作戦は国防部庁舎地下バンカーで合同参謀本部と共に見守った。
合同参謀本部は戦時作戦統制権の転換に備え、2012年に新庁舎をすぐ隣に建てて移転した。この庁舎は韓米連合司令部が入ることを考慮して国防部より大きく建てたが、連合司令部は平沢(ピョンテク)基地に移った。このため合同参謀本部は事務室を広く使用している。合同参謀本部の地下バンカーは国防部のバンカーの倍ほどの規模で、ほとんど地下3階規模の劇場構造だ。合同参謀本部議長の執務室は国防部長官室よりはるかに大きい。それだけ合同参謀本部の建物には余裕があるということだ。国防部領内には改築された別館があるが、国防部庁舎と規模が似ている。このほか国防部領内には付属建物がいくつかある。国防部と業務的に直接関係がない部隊と機関は、近隣地域の国防部所有の空いた建物や首都防衛司令部に移してもかまわない。
この記事を読んで…