◆新冷戦構図に向かう可能性も
しかし今回の事態の今後の流れはいくつかの変数によって左右するだろう。1つ目、プーチン大統領の独特の歴史観と世界観、そして合理的な意思決定の有無だ。プーチン大統領は現在、北朝鮮の「瀬戸際戦術」を再現しているようだ。2つ目、キーウ死守を含むウクライナの抵抗が持続するか、ロシアの要求条件を受け入れるかがカギになる。
3つ目、西側のウクライナ軍事支援の強度が戦争の勝敗を左右する。米国とNATOはまだ軍事的介入に一線を画している。しかし偶発的な状況が発生すればNATOが直接参戦するかどうかが重要な変数となる。4つ目、中国の立場と役割だ。中国が積極的に仲裁したり、ロシア経済制裁に参加するかも重要だ。中国とロシアが密着すれば、新冷戦構図に向かう可能性がある。
では、大韓民国はどんな対応をすべきなのか。幸い、韓国政府レベルでも国連のロシア勧告案と経済制裁に参加した。ウクライナに緊急資金を支援し、首脳間でも電話会談をした。民間レベルでもウクライナ支援活動に積極的に動いている。6日にはキリスト教レベルで国連難民機構(UNHCR)および世界食糧計画(WFP)と共同で、ウクライナ支援キャンペーン行事を開いたが、約6000人が参加した。サムスン電子など韓国企業が後援し、一般国民の募金参加などで、ウクライナ人には大きな慰労と感動になっている。ウクライナ問題は我々の問題であり、我々は支援を続けなければいけない。
ウクライナ事態は我々を覚醒させ、省察させている。その間、我々は同盟や友邦を軽く見ていた。理念・陣営葛藤も激しかった。外部の挑戦を直視するよりも国内問題に没頭した。北朝鮮の核問題や終戦宣言などに対する期待や中国・ロシアの権威主義に対する善意の期待など、安全保障に対するモラルハザードが広がった。特に自由民主主義と市場経済、人類普遍的価値に対するアイデンティティの側面であいまいではなかったか省察する必要がある。
ウクライナを支援する理由はほかにもある。未来に対する安全保障の保険レベルだ。ウクライナと似た安保危機は韓半島(朝鮮半島)でもいつ発生するか分からない。いま我々が享受する平和は完全な平和でなく非常に不完全な平和だ。特に核兵器を保有する北朝鮮や共産主義の中国、権威主義のロシアが存在する韓半島は決して平和な地域ではない。
自由民主主義国家としての責任もある。今回のウクライナ戦争の勝敗は自由民主主義をロシア・中国・北朝鮮などに拡大するか、それとも権威主義がユーラシア全域に広がるかを左右する重大な岐路だ。もちろん適切にバランスをとる必要はある。ロシアを過度に孤立させたりロシア国民を敵対視したりするのは望ましくない。ロシアが成熟した自由民主主義国家に転換し、経済発展を通してドイツのような強国に生まれ変わり、中国の変化を促進し、中国の崛起を牽制するプラスの均衡者の役割をするのは望ましい。
9日の大統領選挙で勝利した尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の新政権が5月10日に発足すれば、ユーラシア外交の重要性を考慮し、大きくて創意的な戦略を組まなければならないだろう。1つ目、自由民主主義と人類普遍的価値に基づく価値外交を堅持することだ。2つ目、ユーラシアを相手に外交戦略を新しく樹立し、これを推進するために超党派的な外交を推進しなければいけない。
◆冷酷な国際現実を直視すべき
3つ目、韓米同盟の強化、韓日関係の回復は基本であり、ミドルパワーネットワークを強化することだ。ミドルパワーネットワークを強化し、強大国中心の地政学秩序が不安定にならないよう牽制と均衡者の役割をする必要がある。4つ目、安保の脅威要素を遮断する予防外交と危機管理を強化することだ。5つ目、国際政治の冷酷さ、残忍さ、我々が直面した安保の現実を直視し、小貪大失を避けなければいけない。
大韓民国ほどグローバル依存度が高い国もない。最もグローバル依存度が高い国だが、逆説的にグローバル力量およびグローバル指数は非常に低い。筆者はウクライナ大使在任中、兼任国であるモルドバを何度も訪問した。歴史学者のモルドバ自由大学の総長は韓国を15世紀の大航海時代を開いたポルトガルに例えた。ポルトガルは人口も多くなく領土も大きくないが、グローバル戦略を推進して世界的な強国になった。我々の未来はグローバルにかかっている。我々もポルトガル・スペイン・英国・フランスのようなグローバルパワーになることができる。
ウクライナ事態をきっかけに我々がミドルパワーパートナーと共に国連の持続可能な開発目標(SDGs)を構成する5Ps(peace、prosperity、planet、people、partnership)を先導すれば、ユーラシアの歴史を新しく築く世紀的な役割を果たすことができるだろう。大韓民国の平和と繁栄、韓半島の平和統一、北東アジアとユーラシアの平和と繁栄にも寄与できるはずだ。大韓民国が蓄積してきた力量を総動員すれば、地政学危機が歴史発展と文明発展に寄与する最高の機会にすることができると信じる。
イ・ヤング/元駐ウクライナ韓国大使
【コラム】ウクライナ戦争と韓国の対応(1)
しかし今回の事態の今後の流れはいくつかの変数によって左右するだろう。1つ目、プーチン大統領の独特の歴史観と世界観、そして合理的な意思決定の有無だ。プーチン大統領は現在、北朝鮮の「瀬戸際戦術」を再現しているようだ。2つ目、キーウ死守を含むウクライナの抵抗が持続するか、ロシアの要求条件を受け入れるかがカギになる。
3つ目、西側のウクライナ軍事支援の強度が戦争の勝敗を左右する。米国とNATOはまだ軍事的介入に一線を画している。しかし偶発的な状況が発生すればNATOが直接参戦するかどうかが重要な変数となる。4つ目、中国の立場と役割だ。中国が積極的に仲裁したり、ロシア経済制裁に参加するかも重要だ。中国とロシアが密着すれば、新冷戦構図に向かう可能性がある。
では、大韓民国はどんな対応をすべきなのか。幸い、韓国政府レベルでも国連のロシア勧告案と経済制裁に参加した。ウクライナに緊急資金を支援し、首脳間でも電話会談をした。民間レベルでもウクライナ支援活動に積極的に動いている。6日にはキリスト教レベルで国連難民機構(UNHCR)および世界食糧計画(WFP)と共同で、ウクライナ支援キャンペーン行事を開いたが、約6000人が参加した。サムスン電子など韓国企業が後援し、一般国民の募金参加などで、ウクライナ人には大きな慰労と感動になっている。ウクライナ問題は我々の問題であり、我々は支援を続けなければいけない。
ウクライナ事態は我々を覚醒させ、省察させている。その間、我々は同盟や友邦を軽く見ていた。理念・陣営葛藤も激しかった。外部の挑戦を直視するよりも国内問題に没頭した。北朝鮮の核問題や終戦宣言などに対する期待や中国・ロシアの権威主義に対する善意の期待など、安全保障に対するモラルハザードが広がった。特に自由民主主義と市場経済、人類普遍的価値に対するアイデンティティの側面であいまいではなかったか省察する必要がある。
ウクライナを支援する理由はほかにもある。未来に対する安全保障の保険レベルだ。ウクライナと似た安保危機は韓半島(朝鮮半島)でもいつ発生するか分からない。いま我々が享受する平和は完全な平和でなく非常に不完全な平和だ。特に核兵器を保有する北朝鮮や共産主義の中国、権威主義のロシアが存在する韓半島は決して平和な地域ではない。
自由民主主義国家としての責任もある。今回のウクライナ戦争の勝敗は自由民主主義をロシア・中国・北朝鮮などに拡大するか、それとも権威主義がユーラシア全域に広がるかを左右する重大な岐路だ。もちろん適切にバランスをとる必要はある。ロシアを過度に孤立させたりロシア国民を敵対視したりするのは望ましくない。ロシアが成熟した自由民主主義国家に転換し、経済発展を通してドイツのような強国に生まれ変わり、中国の変化を促進し、中国の崛起を牽制するプラスの均衡者の役割をするのは望ましい。
9日の大統領選挙で勝利した尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の新政権が5月10日に発足すれば、ユーラシア外交の重要性を考慮し、大きくて創意的な戦略を組まなければならないだろう。1つ目、自由民主主義と人類普遍的価値に基づく価値外交を堅持することだ。2つ目、ユーラシアを相手に外交戦略を新しく樹立し、これを推進するために超党派的な外交を推進しなければいけない。
◆冷酷な国際現実を直視すべき
3つ目、韓米同盟の強化、韓日関係の回復は基本であり、ミドルパワーネットワークを強化することだ。ミドルパワーネットワークを強化し、強大国中心の地政学秩序が不安定にならないよう牽制と均衡者の役割をする必要がある。4つ目、安保の脅威要素を遮断する予防外交と危機管理を強化することだ。5つ目、国際政治の冷酷さ、残忍さ、我々が直面した安保の現実を直視し、小貪大失を避けなければいけない。
大韓民国ほどグローバル依存度が高い国もない。最もグローバル依存度が高い国だが、逆説的にグローバル力量およびグローバル指数は非常に低い。筆者はウクライナ大使在任中、兼任国であるモルドバを何度も訪問した。歴史学者のモルドバ自由大学の総長は韓国を15世紀の大航海時代を開いたポルトガルに例えた。ポルトガルは人口も多くなく領土も大きくないが、グローバル戦略を推進して世界的な強国になった。我々の未来はグローバルにかかっている。我々もポルトガル・スペイン・英国・フランスのようなグローバルパワーになることができる。
ウクライナ事態をきっかけに我々がミドルパワーパートナーと共に国連の持続可能な開発目標(SDGs)を構成する5Ps(peace、prosperity、planet、people、partnership)を先導すれば、ユーラシアの歴史を新しく築く世紀的な役割を果たすことができるだろう。大韓民国の平和と繁栄、韓半島の平和統一、北東アジアとユーラシアの平和と繁栄にも寄与できるはずだ。大韓民国が蓄積してきた力量を総動員すれば、地政学危機が歴史発展と文明発展に寄与する最高の機会にすることができると信じる。
イ・ヤング/元駐ウクライナ韓国大使
【コラム】ウクライナ戦争と韓国の対応(1)
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