◇宇宙は人類共同の遺産なのか
国連宇宙条約は第2条には「月とその他天体を含んだ宇宙空間は国家の専有対象にならない」と、1979年の月協定第11条には「月の天然資源は人類共同の遺産であり、国や個人の財産にならない」と規定している。だが月協定はこれまでフランス、インド、グアテマラ、ルーマニアの4カ国が署名しただけで、米国など多くの国は加盟していない。
トランプ大統領は2020年に「宇宙資源回収と活用に向けた国際支援促進」という大統領令を通じ、「米国は宇宙を人類共同の遺産と考えない」との立場を明確にした。「米国人は宇宙空間での商業的探査・復旧・資源使用に関与する権利を持たなければならない」とも明示した。また、国際的支援を得るために「国務長官は宇宙資源と関連した共同声明、2国間および多国間協定を外国と交渉」するよう命じている。
米国は月の軌道上に「ゲートウェイ」という名前の宇宙ステーションを設置し、これを活用して月面に随時往復でき、月に有人宇宙基地を建設し、さらには有人火星探査を遂行するアルテミス計画を推進中だ。米国はアルテミス事業の参加を望む国には約定に署名することを要求しているが、ここには宇宙資源活用に対する基本原則が含まれている。国連の宇宙原則を超え宇宙資源探査と商業的活用という米国の立場を強化するための段階的措置として受け取られている。
国家宇宙政策といえば該当国が宇宙分野で進んでいく長期的方向性や方針を内外に明確に知らせるものだ。しかし、韓国では宇宙開発の国家的政策が何か、そして未来に向けたビジョンが何なのかがよく見えない。米国の場合、大統領宇宙政策指針、大統領令などを通じて宇宙活動の包括的指針を盛り込んだ政府(大統領)の宇宙政策宣言があり、これに続いて実行計画が従っている。韓国には宇宙開発振興基本計画はあるが、実際の拘束力ある計画は基本計画というよりは個別事業だけだ。ひとつの長期ビジョンを設定し、そのビジョンを実行するための体系的な国家長期ロードマップが必要だ。
韓国には「宇宙政策」の名前で発表されるどんな政府公式文書もない。韓国が米国のような経済大国ではないため韓国が耐えられないほどの巨大プロジェクトである必要はない。しかし宇宙開発を通じて指向する哲学と追求しようとする価値が何かは明確にする必要がある。さらに人口1000万人にすぎず韓国から宇宙技術を学んだアラブ首長国連邦でも2014年に宇宙庁を新設し、2017年には「国家宇宙戦略2030」をまとめた。建国50周年となった2020年7月には希望という意味の火星探査船「アマル」を打ち上げた。これらは全て石油資源枯渇後に備えている。
◇新政権の大胆なビジョン必要
宇宙開発は単純に経済的手段だけではない。国の基礎体力である科学技術の発展、未来に向かった夢と希望、国力と国格の誇示、国家安保に向けた戦略的な備え、未来新産業と宇宙資源に対する基盤構築などさまざま重要な要素を考慮しなければならない。米国の歴代大統領はこうした宇宙開発の重要性を絶えず強調しており、その結果米国は莫大な経済的な富と世界指導国としての位置を謳歌している。
宇宙開発は国の総体的な能力を見せるものだ。科学技術、産業、軍事安全保障、政治外交などを体系的に連結・調整しなければならない分野だ。70カ国以上で宇宙を専門に担当する政府組織(宇宙庁)を設置し国家的総力を挙げている理由だ。韓国は宇宙庁どころか宇宙開発を明示的に担当する政府組織はわずかに科学技術部の「宇宙技術課」ひとつにすぎない。「韓国にも宇宙政策はあるのか」という米国務省の公務員の質問がややとんでもなく見えながらも一方で理解できる理由だ。
新政権では今後光復100年である2045年に備える大胆なビジョンを立てなければならない。次期大統領は宇宙を総括する専従組織を速やかに設立し、韓国の未来100年を準備しなければならない。韓国の国内総生産(GDP)はいまや世界10位、ソ連を継承して宇宙探査を継続しているロシアは韓国に次ぐ11位だ。
ファン・ジンヨン/韓国国家航空宇宙研究院責任研究員
【コラム】宇宙を放置するのか、宇宙政策ひとつない韓国(1)
国連宇宙条約は第2条には「月とその他天体を含んだ宇宙空間は国家の専有対象にならない」と、1979年の月協定第11条には「月の天然資源は人類共同の遺産であり、国や個人の財産にならない」と規定している。だが月協定はこれまでフランス、インド、グアテマラ、ルーマニアの4カ国が署名しただけで、米国など多くの国は加盟していない。
トランプ大統領は2020年に「宇宙資源回収と活用に向けた国際支援促進」という大統領令を通じ、「米国は宇宙を人類共同の遺産と考えない」との立場を明確にした。「米国人は宇宙空間での商業的探査・復旧・資源使用に関与する権利を持たなければならない」とも明示した。また、国際的支援を得るために「国務長官は宇宙資源と関連した共同声明、2国間および多国間協定を外国と交渉」するよう命じている。
米国は月の軌道上に「ゲートウェイ」という名前の宇宙ステーションを設置し、これを活用して月面に随時往復でき、月に有人宇宙基地を建設し、さらには有人火星探査を遂行するアルテミス計画を推進中だ。米国はアルテミス事業の参加を望む国には約定に署名することを要求しているが、ここには宇宙資源活用に対する基本原則が含まれている。国連の宇宙原則を超え宇宙資源探査と商業的活用という米国の立場を強化するための段階的措置として受け取られている。
国家宇宙政策といえば該当国が宇宙分野で進んでいく長期的方向性や方針を内外に明確に知らせるものだ。しかし、韓国では宇宙開発の国家的政策が何か、そして未来に向けたビジョンが何なのかがよく見えない。米国の場合、大統領宇宙政策指針、大統領令などを通じて宇宙活動の包括的指針を盛り込んだ政府(大統領)の宇宙政策宣言があり、これに続いて実行計画が従っている。韓国には宇宙開発振興基本計画はあるが、実際の拘束力ある計画は基本計画というよりは個別事業だけだ。ひとつの長期ビジョンを設定し、そのビジョンを実行するための体系的な国家長期ロードマップが必要だ。
韓国には「宇宙政策」の名前で発表されるどんな政府公式文書もない。韓国が米国のような経済大国ではないため韓国が耐えられないほどの巨大プロジェクトである必要はない。しかし宇宙開発を通じて指向する哲学と追求しようとする価値が何かは明確にする必要がある。さらに人口1000万人にすぎず韓国から宇宙技術を学んだアラブ首長国連邦でも2014年に宇宙庁を新設し、2017年には「国家宇宙戦略2030」をまとめた。建国50周年となった2020年7月には希望という意味の火星探査船「アマル」を打ち上げた。これらは全て石油資源枯渇後に備えている。
◇新政権の大胆なビジョン必要
宇宙開発は単純に経済的手段だけではない。国の基礎体力である科学技術の発展、未来に向かった夢と希望、国力と国格の誇示、国家安保に向けた戦略的な備え、未来新産業と宇宙資源に対する基盤構築などさまざま重要な要素を考慮しなければならない。米国の歴代大統領はこうした宇宙開発の重要性を絶えず強調しており、その結果米国は莫大な経済的な富と世界指導国としての位置を謳歌している。
宇宙開発は国の総体的な能力を見せるものだ。科学技術、産業、軍事安全保障、政治外交などを体系的に連結・調整しなければならない分野だ。70カ国以上で宇宙を専門に担当する政府組織(宇宙庁)を設置し国家的総力を挙げている理由だ。韓国は宇宙庁どころか宇宙開発を明示的に担当する政府組織はわずかに科学技術部の「宇宙技術課」ひとつにすぎない。「韓国にも宇宙政策はあるのか」という米国務省の公務員の質問がややとんでもなく見えながらも一方で理解できる理由だ。
新政権では今後光復100年である2045年に備える大胆なビジョンを立てなければならない。次期大統領は宇宙を総括する専従組織を速やかに設立し、韓国の未来100年を準備しなければならない。韓国の国内総生産(GDP)はいまや世界10位、ソ連を継承して宇宙探査を継続しているロシアは韓国に次ぐ11位だ。
ファン・ジンヨン/韓国国家航空宇宙研究院責任研究員
【コラム】宇宙を放置するのか、宇宙政策ひとつない韓国(1)
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