コロナ禍の中で久しぶりに海外出張に行ってきた。米国で大韓民国企業の製品を見て韓国人として改めて誇りを感じた。BTSに代表される韓流文化の存在感もすごかった。同時に、科学技術ではなぜ世界を先導することができないのか残念な気がした。科学者として自省しながら、果たして何が必要なのかじっくり考えてみた。
韓流スターになるためには、数年間骨身を削るような忍耐の時間を過ごさなければならない。アイドルになるための競争の中で多数は途中で脱落してしまう。ところで、なぜか韓国の科学技術関連研究は成功率が100%に近い。「始めさえすれば」成功が事実上保障されるシステムに甘んじるから世界を先導することができないのではないか。
韓国のまぶしい経済発展は「速い追撃者(Fast-Follower)」戦略の成功のおかげだ。追撃対象を選定して一糸乱れない体制で他人より速かに模倣して追いつく戦略だ。このような戦略により、政府は投資対象の技術を毎年選定し戦略をたてて研究開発(R&D)予算を配る。まるで正解を分かる問題を解くように、成功率が高くなるしかない。
しかし、徐々に韓国が一番前に出始めてから模倣の対象が消え始めた。ひょっとして存在するといっても韓国を競争者として認識する国は韓国が簡単に模倣するようにこれ以上放っておかない。今は「速い追撃者」から「先導者(First-Mover)」に生まれ変わる時になった。このようなパラダイムの転換を指摘したのが久しいが、これといった変化を実現できないのは馴染みのあるものとの別れが簡単でないためだ。
今や第4次産業革命のデジタル大転換が世界的な産業環境を急速に変えている。このような時代的な流れは先導者と追撃者を分けることはなく皆にとって見慣れない変化だ。しかし、全体の危機は準備された者にパラダイムを変える機会を与えるだろう。
韓国政府の文化芸術政策基調はインフラを作るだけで干渉はしないことだ。ドラマ『イカゲーム』のようなコンテンツ制作に政府がいちいち干渉したとすれば、地球村が熱狂したKドラマの誕生は不可能だっただろう。科学技術も同じ流れで考えるべきだ。政府が研究目標を定めて進行過程をいちいち点検するシステムでは世界を先導する創意的な結果が出難い。
単一機関で世界最多のノーベル賞受賞者(22人)を輩出したドイツのマックス・プランク協会(Max Planck)には運営原則がある。「政府は研究費を支援する一方で干渉はしない」ということだ。この原則が忠実に実現されているマックス・プランクに向かって世界科学者は独立性と自律性を兼ね備えた創意的研究の産室だと口をそろえる。
9日、大統領選挙で新しい大統領が選出される。次期政府に与えられる大きな役割の中の一つは科学技術の覇権競争で生き残る戦略作りと実行だ。無限の創意性を発揮できる支援システム革新に戦略の核心を置くべきだ。
そうしてかつてとは完全に違い、自律と挑戦精神に基づいたパラダイムを構築する必要がある。今まで科学技術支援政策の話題はR&D予算の規模だった。だが、今後、予算投入の効果と創意的結果という二兎を追うためには、運用システムにも大々的な変化が必要だ。
先導者として世の中にないことを作るというのは予測不可の領域に入ることだ。時間がどれくらいかかるか、成功できるかさえ分からない。しかし、研究者の時間が官僚の時間と違うことを尊重するだけでも革新の出発線に立つことができる。
転換点に立った大韓民国の新しい指導者は科学技術に対するはっきりとした哲学と未来ビジョンを備えなければならない。革新はまともな一つの原則だけでも実現することができる。研究者が革新の種を思う存分撒くことができる制度を設計するのが新政府で科学技術政策の中心になってほしい。
※外部筆陣の寄稿は本紙の編集方向と違う場合があります。
イ・ウイル/韓国科学技術団体総連合会会長・ソウル大学名誉教授
韓流スターになるためには、数年間骨身を削るような忍耐の時間を過ごさなければならない。アイドルになるための競争の中で多数は途中で脱落してしまう。ところで、なぜか韓国の科学技術関連研究は成功率が100%に近い。「始めさえすれば」成功が事実上保障されるシステムに甘んじるから世界を先導することができないのではないか。
韓国のまぶしい経済発展は「速い追撃者(Fast-Follower)」戦略の成功のおかげだ。追撃対象を選定して一糸乱れない体制で他人より速かに模倣して追いつく戦略だ。このような戦略により、政府は投資対象の技術を毎年選定し戦略をたてて研究開発(R&D)予算を配る。まるで正解を分かる問題を解くように、成功率が高くなるしかない。
しかし、徐々に韓国が一番前に出始めてから模倣の対象が消え始めた。ひょっとして存在するといっても韓国を競争者として認識する国は韓国が簡単に模倣するようにこれ以上放っておかない。今は「速い追撃者」から「先導者(First-Mover)」に生まれ変わる時になった。このようなパラダイムの転換を指摘したのが久しいが、これといった変化を実現できないのは馴染みのあるものとの別れが簡単でないためだ。
今や第4次産業革命のデジタル大転換が世界的な産業環境を急速に変えている。このような時代的な流れは先導者と追撃者を分けることはなく皆にとって見慣れない変化だ。しかし、全体の危機は準備された者にパラダイムを変える機会を与えるだろう。
韓国政府の文化芸術政策基調はインフラを作るだけで干渉はしないことだ。ドラマ『イカゲーム』のようなコンテンツ制作に政府がいちいち干渉したとすれば、地球村が熱狂したKドラマの誕生は不可能だっただろう。科学技術も同じ流れで考えるべきだ。政府が研究目標を定めて進行過程をいちいち点検するシステムでは世界を先導する創意的な結果が出難い。
単一機関で世界最多のノーベル賞受賞者(22人)を輩出したドイツのマックス・プランク協会(Max Planck)には運営原則がある。「政府は研究費を支援する一方で干渉はしない」ということだ。この原則が忠実に実現されているマックス・プランクに向かって世界科学者は独立性と自律性を兼ね備えた創意的研究の産室だと口をそろえる。
9日、大統領選挙で新しい大統領が選出される。次期政府に与えられる大きな役割の中の一つは科学技術の覇権競争で生き残る戦略作りと実行だ。無限の創意性を発揮できる支援システム革新に戦略の核心を置くべきだ。
そうしてかつてとは完全に違い、自律と挑戦精神に基づいたパラダイムを構築する必要がある。今まで科学技術支援政策の話題はR&D予算の規模だった。だが、今後、予算投入の効果と創意的結果という二兎を追うためには、運用システムにも大々的な変化が必要だ。
先導者として世の中にないことを作るというのは予測不可の領域に入ることだ。時間がどれくらいかかるか、成功できるかさえ分からない。しかし、研究者の時間が官僚の時間と違うことを尊重するだけでも革新の出発線に立つことができる。
転換点に立った大韓民国の新しい指導者は科学技術に対するはっきりとした哲学と未来ビジョンを備えなければならない。革新はまともな一つの原則だけでも実現することができる。研究者が革新の種を思う存分撒くことができる制度を設計するのが新政府で科学技術政策の中心になってほしい。
※外部筆陣の寄稿は本紙の編集方向と違う場合があります。
イ・ウイル/韓国科学技術団体総連合会会長・ソウル大学名誉教授
この記事を読んで…