新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)オミクロン株が韓国全域に拡散して新規感染者が5万人に迫った9日午後、大田(テジョン)のある保健所迅速抗原検査所を訪れた市民が自己診断検査をしている。[写真 大田=キム・ソンテ記者]
感染者が急増してちゃんとした診断と治療が受けられるかどうか懸念する国民は多い。7日の「自律防疫」「セルフ治療」が骨子の防疫・医療体系改編はこのような不安に油を注いだ。防疫体系の大転換だが、事前に予告せずに発表したことから問題だ。これは直ちに現場の混線につながった。
対策の核心は現在16万人台の在宅治療対象者を60歳以上と無症状・軽症感染者に分けて差別管理することだ。無症状・軽症感染者は疫学調査も治療もセルフ、つまり自分でしなければならない。自己検査キット・酸素飽和度測定機など5つの管理物品の支給も中断される。自己検査キットをスーパーや薬局などで自分で購入しなくてはならないが、品切れ現象が起きて価格が大きく上がった。韓国政府は自己検査キット1000万人分を今週末まで放出するという言葉だけ繰り返さずに、精巧な対策を出さなければならない。
症状が悪化すれば地域の病院・医院や地方自治体の在宅管理支援相談センターで非対面診療を受けなければならない。ところが相談センターはまだ非対面診療に向けた準備が整っておらず支障が避けられない。相談センターを運営するためには、医療スタッフの選抜、装備設置、相談マニュアル製作などが必要だが、政府が事前議論や十分な準備期間を経ずにセンターを開くように一方的に通知したためだ。拙速行政で国民だけが被害を受ける。実際、感染者が病院・医院、相談センターの位置・連絡先の案内を受けようと保健所に一日に30本以上電話をかけたが不通だったという事例が報告された。地域の病院・医院診察料は通常5000ウォン(約483円)だが、境遇が差し迫っていて仕方なく7万ウォンを支払ったケースもあるという。言葉は「在宅治療」だが、実際は「在宅放置」ではないのか。
事実、オミクロン株が優勢株になれば感染者が急増するという警告は昨年12月初めの国内初上陸時から絶えなかった。それまで政府は何をしていたか。特にこれまで社会的距離確保をはじめ、営業制限や違反時の過怠金賦課、防疫パス導入など規制中心の防疫政策を展開してきた政府がPCR検査を60歳以上に限定する方式に転換したことに対しては「全体感染者数を減らして政府がコロナをうまく統制しているように見せかけようとしているのではないか」という疑惑の視線もあることを忘れてはならない。国民の健康と安全を責任を負うべき義務がある政府が一人一人にその責任を転嫁する「各自生き残り」方法の防疫政策は政府の存在理由について根本的な問いを投げる。
この記事を読んで…