政府が赤字財政を続けて負債が積み重なれば、どんなことが生じるだろうか。今、国が負債でパーティーをすれば、いつかは誰かが返済しなければならないのではないか。ところで、本当に韓国の政府負債は未来の返済能力、すなわち「財政の持続可能性」を心配しなければならない水準なのか。
現政府で財政が急激に悪化し、政府負債を懸念する声が高まった。IMF(国際通貨基金)統計基準で韓国の政府負債が国内総生産(GDP)に占める割合が2018年の40%から2021年には51%に急上昇し、2026年には67%に達するものと予想される。過去数年間、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)により政府負債が急増し、選挙を控えて政府支出を増やす公約が増えている。財政赤字と政府負債が予想より急速に増える可能性がある状況だ。大統領選挙候補らは、票を得るために基本所得、士兵の給与引き上げ、高齢者の基礎年金引き上げなど相当な財源が必要な公約を掲げている。
政府負債が増えていても、まだ返済能力を心配するほどではない。ほとんどの先進国が新型コロナを経て、韓国より財政支出をはるかに増やし、政府負債のGDP比率が高まった。先進国35カ国の政府負債のGDP比率は2021年は平均83%だった。韓国はまだ、相対的に低い水準だ。政府が発行した国公債に支給する利子率も低い。
経済が苦しいときは、負債の増加を甘受してでも、政府が積極的に財政を運用した方が良い。コロナで長期にわたり苦しんでいる国民に積極的な支援をしなければならない。政府は国民の基礎生活を支援し、脆弱階層に対する福祉支出も拡大しなければならない。韓国経済は低出産・高齢化で労働力が減少し、生産性は停滞して成長率が低くなる見通しだ。生産能力を拡大し、成長率を高めるべき政府の役割が重要だ。社会インフラを拡充し、新産業を支援しなければならない。民間に過度な負担を与える税金を減らし、勤労意欲と投資・技術革新誘因を高めるのも政府の財政的役割だ。
政府が財政支出を増やして赤字財政になっても経済成長率が高まると、政府負債のGDP比率がむしろ低くなり、負債返済能力を高めることができる。GDP成長率が国公債の利子率より高い場合、政府負債のGDP比率は財政赤字が大きくなりすぎない限り低くなる。
財政政策で成長率を高めるためには、人気を得るためのポピュリズム的で非生産的な支出は警戒しなければならない。予算を立てて執行する過程を厳密にし、財政が効率的に運用されるようにしなければならない。ローレンス・サマーズ元米国財務長官は1月、米国経済学会討論会で財政が国家に役立つ善の役割を積極的にしなければならないが、「悪魔はディテールにある」と述べた。政府がインフラ拡充、気候変動対応のような社会的に有用な事業と技術革新を支援するが、事業が効果的に遂行されるようにして財源の無駄と物価上昇に注意しなければならないということだ。
5月に発足する新政府が積極的に財政を運用しても、任期中に政府負債がすぐには危険な水準に増加しないだろう。しかし、現状でも負債の増加速度が速く、中長期の持続可能性に問題が発生する可能性がある。国会予算政策処は『2020長期財政展望報告書』で2040年に政府負債がGDPの100%を超えると推計した。2039年から国民年金基金の収支が赤字になり、政府負債が徐々に雪だるまのように膨れ上がる。2060年には財政収支赤字がGDPの10%を超え、政府負債のGDP比率が159%に達すると予測した。未来に深刻な経済危機や安保危機が発生し、大規模な財政が必要な状況が来れば、政府負債が爆発的に増える可能性がある。国内外の投資家が政府の負債返済能力を懸念し、国公債の購入を控えるようになれば利子率が上がり、債務負担が大きくなる。日本のように中央銀行が国債を買い続けることはできるが、通貨量の増加につながり、インフレや資産バブルを誘発する危険がある。米国、日本、ユーロ国家とは異なり、韓国は国際通貨を持っておらず、外国為替・金融市場が外貨の流出入に弱い。ウォンが暴落し、為替危機を経験するおそれもある。IMFのアジア・太平洋担当局長は最近、中央日報とのインタビューで「国家負債比率が短期間に急増しても韓国が大丈夫かどうかは国際金融市場が判断するだろう」と警告した。
財政の中長期持続可能性を高める改革が必要だ。今の世代が借金を続けたら、未来の世代は積み重なった負債を返済するためにより多くの税金を負担したり、より少ない年金を受給したり、物価上昇を経験しなければならない。今から税制改革、年金改革、財政支出の効率を高める中長期対策を設けて実行していかなければならない。税収を拡充し、年金給与と年金保険料率を調整し、大規模財政支出の経済的妥当性を厳密に検証しなければならない。
新型コロナの克服過程で見たように、財政の役割は危機において特に重要だ。新政府は効率的に予算を組んで執行し、経済発展に寄与しながら中長期財政健全性を維持しなければならない。指導者の意志と政府、国会、学界・研究所の専門家の力を集め、隙のない財政管理に取り組まなければならない。
李鍾和(イ・ジョンファ)/高麗(コリョ)大学経済学科教授
現政府で財政が急激に悪化し、政府負債を懸念する声が高まった。IMF(国際通貨基金)統計基準で韓国の政府負債が国内総生産(GDP)に占める割合が2018年の40%から2021年には51%に急上昇し、2026年には67%に達するものと予想される。過去数年間、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)により政府負債が急増し、選挙を控えて政府支出を増やす公約が増えている。財政赤字と政府負債が予想より急速に増える可能性がある状況だ。大統領選挙候補らは、票を得るために基本所得、士兵の給与引き上げ、高齢者の基礎年金引き上げなど相当な財源が必要な公約を掲げている。
政府負債が増えていても、まだ返済能力を心配するほどではない。ほとんどの先進国が新型コロナを経て、韓国より財政支出をはるかに増やし、政府負債のGDP比率が高まった。先進国35カ国の政府負債のGDP比率は2021年は平均83%だった。韓国はまだ、相対的に低い水準だ。政府が発行した国公債に支給する利子率も低い。
経済が苦しいときは、負債の増加を甘受してでも、政府が積極的に財政を運用した方が良い。コロナで長期にわたり苦しんでいる国民に積極的な支援をしなければならない。政府は国民の基礎生活を支援し、脆弱階層に対する福祉支出も拡大しなければならない。韓国経済は低出産・高齢化で労働力が減少し、生産性は停滞して成長率が低くなる見通しだ。生産能力を拡大し、成長率を高めるべき政府の役割が重要だ。社会インフラを拡充し、新産業を支援しなければならない。民間に過度な負担を与える税金を減らし、勤労意欲と投資・技術革新誘因を高めるのも政府の財政的役割だ。
政府が財政支出を増やして赤字財政になっても経済成長率が高まると、政府負債のGDP比率がむしろ低くなり、負債返済能力を高めることができる。GDP成長率が国公債の利子率より高い場合、政府負債のGDP比率は財政赤字が大きくなりすぎない限り低くなる。
財政政策で成長率を高めるためには、人気を得るためのポピュリズム的で非生産的な支出は警戒しなければならない。予算を立てて執行する過程を厳密にし、財政が効率的に運用されるようにしなければならない。ローレンス・サマーズ元米国財務長官は1月、米国経済学会討論会で財政が国家に役立つ善の役割を積極的にしなければならないが、「悪魔はディテールにある」と述べた。政府がインフラ拡充、気候変動対応のような社会的に有用な事業と技術革新を支援するが、事業が効果的に遂行されるようにして財源の無駄と物価上昇に注意しなければならないということだ。
5月に発足する新政府が積極的に財政を運用しても、任期中に政府負債がすぐには危険な水準に増加しないだろう。しかし、現状でも負債の増加速度が速く、中長期の持続可能性に問題が発生する可能性がある。国会予算政策処は『2020長期財政展望報告書』で2040年に政府負債がGDPの100%を超えると推計した。2039年から国民年金基金の収支が赤字になり、政府負債が徐々に雪だるまのように膨れ上がる。2060年には財政収支赤字がGDPの10%を超え、政府負債のGDP比率が159%に達すると予測した。未来に深刻な経済危機や安保危機が発生し、大規模な財政が必要な状況が来れば、政府負債が爆発的に増える可能性がある。国内外の投資家が政府の負債返済能力を懸念し、国公債の購入を控えるようになれば利子率が上がり、債務負担が大きくなる。日本のように中央銀行が国債を買い続けることはできるが、通貨量の増加につながり、インフレや資産バブルを誘発する危険がある。米国、日本、ユーロ国家とは異なり、韓国は国際通貨を持っておらず、外国為替・金融市場が外貨の流出入に弱い。ウォンが暴落し、為替危機を経験するおそれもある。IMFのアジア・太平洋担当局長は最近、中央日報とのインタビューで「国家負債比率が短期間に急増しても韓国が大丈夫かどうかは国際金融市場が判断するだろう」と警告した。
財政の中長期持続可能性を高める改革が必要だ。今の世代が借金を続けたら、未来の世代は積み重なった負債を返済するためにより多くの税金を負担したり、より少ない年金を受給したり、物価上昇を経験しなければならない。今から税制改革、年金改革、財政支出の効率を高める中長期対策を設けて実行していかなければならない。税収を拡充し、年金給与と年金保険料率を調整し、大規模財政支出の経済的妥当性を厳密に検証しなければならない。
新型コロナの克服過程で見たように、財政の役割は危機において特に重要だ。新政府は効率的に予算を組んで執行し、経済発展に寄与しながら中長期財政健全性を維持しなければならない。指導者の意志と政府、国会、学界・研究所の専門家の力を集め、隙のない財政管理に取り組まなければならない。
李鍾和(イ・ジョンファ)/高麗(コリョ)大学経済学科教授
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