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「車に乗っているのを忘れる」セリフの反転…ポン・ジュノ絶賛『ドライブ・マイ・カー』の中の「サーブ」とは

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

スウェーデン「サーブ(SAAB)」。

第2の『パラサイト 半地下の家族』として目を引いている日本映画がある。『ドライブ・マイ・カー』。同映画は昨年夏に日本で公開された。ところが今年米国アカデミー国際映画賞の予備候補に入ったという便りが昨年末に伝えられると関心が再び高まった。韓国でも映画ファンの口コミが集まり、先月23日から上映が始まった。

濱口竜介監督が村上春樹の小説集『女のいない男たち』に収録された短編を原作として、村上小説『シェエラザード』『木野』などからもモチーフを得て脚本を書き上げて撮影した作品だ。昨年7月カンヌ映画祭脚本賞に続いて12月米国ニューヨーク映画批評家協会賞・ボストン映画批評家協会賞で作品賞を受賞した。ポン・ジュノ監督は昨年10月、濱口監督との対談の席で「職業的な秘密を探り出したい」と言いながら映画を絶賛した。

映画の内容は一貫して穏やかだ。誰か見ても幸せな夫婦、家福と音(おと)。妻の音の浮気の現場を偶然目撃した家福は理由を聞けないまま突然妻の死を迎える。その2年後、広島の演劇祭に招かれてアントン・チェーホフの悲喜劇『ワーニャ伯父さん』の演出を引き受けることになった家福はここで専属運転手のみさきと出会う。


言葉もなく黙々と車を運転するみさきと死んだ妻が吹き込んだテープを聞き続ける家福。静かな車内で2人は徐々に心を開いていく。そして互いに過去の痛みから抜け出すことができないでいることを知る。その後、雪に覆われた北海道で内面の奥深くに横たわっている互いの悲しみを確認する。

「車に乗っているのを忘れるくらい」というセリフのように、静かな車内を主要舞台としているのがアイロニーだ。該当の車両は静かさよりは高性能の自動車(High Performance Vehicle)で一時時代を風靡したスウェーデン「サーブ(SAAB)」だったためだ。サーブは航空機会社から出発した自動車製作会社だ。第2次世界大戦直後、事業多角化次元で車両を作り始めた。

スウェーデン内の競争会社ボルボが「安全」を前面に出していたのとは逆に、サーブは「性能」を前面に出した。航空技術を土台にしたターボ(Turbo)エンジンが代表的だ。ターボチャージャーはエンジンに入る空気の量を圧縮して吸入する装置だ。ターボチャージャーを装着するとエンジンが相当な力を追加で得るためスポーツカーや大型車両によく使われている。

サーブは異なる航空機技術を自動車に取り入れた先駆けでもある。それがサンルーフだ。もともとサンルーフは戦闘機の操縦席から緊急脱出するために作られた。サーブは1960年代からサンルーフを車両に初めて装着した。映画に出てくる赤のサーブ900にもターボチャージャーとサンルーフどちらも装着されている。

高性能車両として名声をとどろかせたが、デザインと価格競争から押し出されて下り坂を歩むことになる。サーブは航空以外の自動車部門を1990年に米国GMに売却した。ブランド命脈を継いできたが2012年に結局不渡りを出す。2016年NEVSという電気自動車会社がブランド使用権や人材などを買収したが、これ以上「サーブ」というブランドでは生産していない。

蛇足を一つ。小説版に登場する車両の色は黄色だった。しかし撮影に入ると黄色の車が日本列島の緑色風景とはうまく溶け合っていないと濱口監督は感じた。急いで車両担当者に他の車を探すように指示し、最も目についた赤のサーブ900を選んだ。濱口監督は俳優の近くで演出したいと思い、トランクに隠れて演技を指導したという。



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