一言でミステリーだ。保健福祉部はなぜ傘下機関の国立中央医療院(NMC)をあたかも「新型コロナ治外法権」であるかのように触れもせず放置しているのか。コロナ重症者数が急増し、全国が病床不足で混乱しているが、中央感染病気病院というタイトルを掲げてすべてのコロナ患者の病床配分を総括するNMCは、病床を追加で出すどころか、のんきに皮膚の美容手術まで続けているという。計603病床のNMCは昨年10月、駐車場に新築した重症者病床30床の建物、年初に軽症者用として近隣の米工兵団敷地に用意した隔離病床65床、従来の陰圧病床16床のほかにはコロナ患者に病床を全く出していない。福祉部は搾取するかのように「ビッグ5」など民間病院に病床の提供を促しているが、どういうわけかNMCには一度も追加で病床を要求していない。むしろ病床不足事態を乗り越えるために感染病専門家らが繰り返し要求してきた「NMC全体疎開」に耳をふさいでいる。だから「ミステリー」という声が出る。
NMCをすべて空けて病床を確保すべきだという主張は実際、新しいことでもなく常識に近い。感染病は独立空間で治療するのが効率的であるため、病院をすべて空けて対応する必要がある場合、税金で運営される公共医療機関がその役割を担うのが当然だからだ。2015年のMERS事態当時には実際にそのようにした経験があるうえ、コロナ第3波が広がった昨年12月に文在寅(ムン・ジェイン)大統領の主催でコロナ対応体系点検会議をした当時、政府もそのような方針を明らかにした。当時の朴凌厚(パク・ヌンフ)福祉部長官は「NMCなど重症者の治療が可能な公共・民間医療機関をすべて空けてコロナ拠点担当病院に指定し、病床を確保する」と発表した。
ところが1年が経過した今まで政府はNMCを通じた病床確保などの措置は全く取らず、病床追加要求をする計画もないということが、最近の報道で明らかになった。NMCが負うべきことを、病床動員行政命令という強制措置を通じてむしろ民間に負わせている。チョン・ギヒョン国立中央医療院長が描いた絵の通りだ。チョン院長は第3波が広がった昨年12月、インタビューで病床不足を訴え、「政府が上級総合病院に動員令を宣言すべきだ」と主張した。いま振り返ると、国立である本人の病院は除いて民間に犠牲を強要したということだ。
これに先立ち福祉部の非常識対応を「ミステリー」と表現したが、実際、医療界ではNMCがこのように絶対的な力を行使する背景としてチョン院長に注目している。「大統領の側近」という妖術棒が作動したのではという疑いだ。疾病管理本部長を務めた鄭ギ碩(チョン・ギソク)翰林大聖心病院教授は「病床配置は全面的に中央事故収拾本部(福祉部)にあり、一線の病院は中央事故収拾本部が受け入れろと言えば受け入れ、送り出せと言えば送り出すだけだが、病床不足の中で中央事故収拾本部がNMCの病床をそのまま置いておくのは理解しがたい」とし「院長が大統領の側近(として知らされる人)でなければ今の状況は全く違ったはず」と述べた。
チョン院長は、文在寅大統領候補を支持した外郭組職出身の地方中小病院長だったため、抜てき当時から噂になった人物だ。コロナ時局が続く中、大統領側近としての存在感は就任当時よりも強まった。文大統領はコロナ患者が発生すると、昨年1月、本人のSNSで「国立中央医療院長に電話をして激励した」とコメントした。その後、コロナ点検を理由に昨年2回もNMCを訪問してチョン院長に会った。さらに今年10月にコロナワクチンの追加接種をする際、近くの保健所ではなくまたNMCを訪れてチョン院長に会った。
大統領だけでない。丁世均(チョン・セギュン)前首相に続き、金富謙(キム・ブギョム)首相も先月15日、NMCを訪問してチョン院長に会い、「昼夜を問わず首都圏の医療対応で核心的な役割をするNMCに感謝する」と激励のあいさつをした。モジュール型陰圧病床竣工式のような行事には福祉部次官が出席し、「感染病対応に中枢的な役割をするはず」と励ました。大統領や首相などが随時、NMCがコロナのコントロールタワーという本分にふさわしくすでに病床をすべて空けたり、これに準ずるレベルでコロナ診療の第一線を担当しているように熱心に偽りの広報をしたのと変わらない。
これほどになれば国民に対する防疫当局の詐欺に近い。深刻な病床問題もこのようであれば、政府が果たして他の防疫イシューをどう扱っているのか心配になるしかない。
アン・ヘリ/論説委員
NMCをすべて空けて病床を確保すべきだという主張は実際、新しいことでもなく常識に近い。感染病は独立空間で治療するのが効率的であるため、病院をすべて空けて対応する必要がある場合、税金で運営される公共医療機関がその役割を担うのが当然だからだ。2015年のMERS事態当時には実際にそのようにした経験があるうえ、コロナ第3波が広がった昨年12月に文在寅(ムン・ジェイン)大統領の主催でコロナ対応体系点検会議をした当時、政府もそのような方針を明らかにした。当時の朴凌厚(パク・ヌンフ)福祉部長官は「NMCなど重症者の治療が可能な公共・民間医療機関をすべて空けてコロナ拠点担当病院に指定し、病床を確保する」と発表した。
ところが1年が経過した今まで政府はNMCを通じた病床確保などの措置は全く取らず、病床追加要求をする計画もないということが、最近の報道で明らかになった。NMCが負うべきことを、病床動員行政命令という強制措置を通じてむしろ民間に負わせている。チョン・ギヒョン国立中央医療院長が描いた絵の通りだ。チョン院長は第3波が広がった昨年12月、インタビューで病床不足を訴え、「政府が上級総合病院に動員令を宣言すべきだ」と主張した。いま振り返ると、国立である本人の病院は除いて民間に犠牲を強要したということだ。
これに先立ち福祉部の非常識対応を「ミステリー」と表現したが、実際、医療界ではNMCがこのように絶対的な力を行使する背景としてチョン院長に注目している。「大統領の側近」という妖術棒が作動したのではという疑いだ。疾病管理本部長を務めた鄭ギ碩(チョン・ギソク)翰林大聖心病院教授は「病床配置は全面的に中央事故収拾本部(福祉部)にあり、一線の病院は中央事故収拾本部が受け入れろと言えば受け入れ、送り出せと言えば送り出すだけだが、病床不足の中で中央事故収拾本部がNMCの病床をそのまま置いておくのは理解しがたい」とし「院長が大統領の側近(として知らされる人)でなければ今の状況は全く違ったはず」と述べた。
チョン院長は、文在寅大統領候補を支持した外郭組職出身の地方中小病院長だったため、抜てき当時から噂になった人物だ。コロナ時局が続く中、大統領側近としての存在感は就任当時よりも強まった。文大統領はコロナ患者が発生すると、昨年1月、本人のSNSで「国立中央医療院長に電話をして激励した」とコメントした。その後、コロナ点検を理由に昨年2回もNMCを訪問してチョン院長に会った。さらに今年10月にコロナワクチンの追加接種をする際、近くの保健所ではなくまたNMCを訪れてチョン院長に会った。
大統領だけでない。丁世均(チョン・セギュン)前首相に続き、金富謙(キム・ブギョム)首相も先月15日、NMCを訪問してチョン院長に会い、「昼夜を問わず首都圏の医療対応で核心的な役割をするNMCに感謝する」と激励のあいさつをした。モジュール型陰圧病床竣工式のような行事には福祉部次官が出席し、「感染病対応に中枢的な役割をするはず」と励ました。大統領や首相などが随時、NMCがコロナのコントロールタワーという本分にふさわしくすでに病床をすべて空けたり、これに準ずるレベルでコロナ診療の第一線を担当しているように熱心に偽りの広報をしたのと変わらない。
これほどになれば国民に対する防疫当局の詐欺に近い。深刻な病床問題もこのようであれば、政府が果たして他の防疫イシューをどう扱っているのか心配になるしかない。
アン・ヘリ/論説委員
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