アビー首相は２０１８年就任直後、慢性的な部族間の対立解消のために地域政党連合政府を解体し、単一政党である繁栄党体制の樹立を試みた。しかしＴＰＬＦが繁栄党への加入を拒否して自らの路線を選択すると、アビー首相は内閣のＴＰＬＦ長官を全員解任した。その後、エチオピア政府が新型コロナウイルス感染症（新型肺炎）の流行を理由に総選挙を延期する方針を示すと、これに対し反発したＴＰＬＦは昨年９月に独自選挙を行った。２カ月後、政府はＴＰＬＦが政府軍を攻撃したとしてティグレ地域への電気と食糧などを断って鎮圧作戦に出た。

漢陽大学欧州アフリカ研究所のキム・ソンス所長は「アビー首相が執権を始める当時は包容的な政策を展開したが、２０１８年サーレワーク・ゼウデ氏（７１）が最初の女性大統領になるなど急進的な変化に種族指導者の反発基調があった」と説明した。

問題は内戦によってエチオピア政府軍がティグレへ向かう国際救護物資の運搬を断って飢餓問題が深刻化していることだ。


ＡＰ通信によると、先月１６日、内戦により市中で食料を手に入れられなかったある若い母親は子供たちを食べさせることができない現実を悲観して自殺をした。現在、ティグレ地域の住民６００万人のうち４０万人以上が食糧安保段階分類（ＩＰＣ）で最も深刻なフェーズ５「飢餓」段階に直面している。

また民間人の虐殺や組織的な性暴行まで横行していて感情の溝はさらに深まっている。ティグレ州では今年２月から４月の間だけで１２８８件の性暴行事件が記録されている。このうち大部分はエチオピア政府軍によって起きたものだ。今年５月、ある修道女は英国日刊ガーディアンとのインタビューで「性暴行は８歳の子どもから７２歳の老人までが対象で、毎日起きている」とし「政府軍は公共の場所でも夫の目の前でも何とも思わない」と伝えた。

４月、ベルギーのゲント大学の現地研究チームは政府軍と反乱軍の戦闘が起きてから１５０回にわたって民間人１９００人が虐殺されたと発表した。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は２日、エチオピア内の敵対行為を直ちに中断するよう訴えた。国連は▼緊急支援調達のための人道主義的接近の許容▼事態解決のための国家次元の包括的対話▼平和と安定のための土台構築－－を要求している。米国政府もＴＰＬＦが首都に向かうべきではないというコメントを出すと同時に、現政権に対しても「内戦が持続する場合、エチオピアに対する関税恩恵を保留する」と明らかにした状況だ。

ただしフェルトマン特使は「両者は休戦交渉や会談に近そう（ａｎｙｗｈｅｒｅ　ｎｅａｒ）には全くみえない」と現地の雰囲気を伝えた。


「８歳から７２歳の老人まで性暴行」内戦１年、地獄と化したエチオピア（１）