現在台湾問題と関連して最大の関心事は習近平主席が果たして武力解決に出るかという点だ。どんな場合に中国は銃を取ることになるか。これと関連し中国は胡錦涛政権時代の２００５年に「反国家分裂法」を通過させ３つのケースを明示した。台湾独立勢力が台湾を中国から切り離す事実を作ったり、台湾の中国からの分離をもたらしかねない重大な事変が発生したり、平和統一の可能性が完全に失われた場合だ。その後米国防総省は２０１８年に中共が台湾を武力侵攻する可能性のある７種類の状況を指摘した。台湾の正式独立宣言、台湾独立を指向する行動、台湾内部動乱、台湾の核兵器保有、台湾の無期限統一交渉延期、外部勢力の台湾問題介入、外国軍隊の台湾駐留――だ。

台湾初の女性副総統を務めた呂秀蓮氏は『台湾はなぜ中国に対抗するのか』という著書で、上記のさまざまな危険要素が同じタイミングで起きれば重大な危機が引き起こされる「パーフェクトストーム」がやってくるかもしれないとみる。戦争が起きるということだ。結果はどうなるだろうか。戦いはやってみなければわからないという言葉があるが、概ね中国の優勢が占われる。蔡英文政権前の馬英九総統時代に国家安全会議秘書長だった安保専門家の蘇起氏は、中共は「戦争を始めると同時に戦争を終わらせられる水準（首戦即終戦）」で、わずか１日で台湾を制圧できると明らかにし大きな議論を呼んだりもした。それなら中国が台湾侵攻に出る場合、米国は信じられるほどの友人ということ証明できるだろうか。

呂氏はこれと関連し国際的な３人の著名人の言葉を引用する。まずシンガポール首相を務めたリー・クワンユーの言葉。「米国が台湾を永遠に中国の脅威から抜け出させるのは不可能なのに、あたかもそのようにするだろうと信じさせるのはとても残忍なのではないか」。次は米国在台湾協会（ＡＩＴ）会長を務めた米国の有名学者リチャード・ブッシュ氏の言及。　「台湾が米国を１００％信じるならばそれは何の条件もなく白紙小切手を受け取れるものと信じているようなものだ」。最後にトランプ前米大統領の外交安保補佐官だったジョン・ボルトン氏。「トランプはペン先を示し、これが台湾ならば机は中国だと話した」。台湾はネズミの角（取るに足らないもの）ほどだという意味。いずれも米国を信頼するのは難しいということを語る。


それならば中国は米国を気にせず台湾に武力を加えられるという話になる。米国はこれをどのように防ぐべきなのか。これと関連して昨年２月にデニス・ブレア元米太平洋艦隊司令官がヒントを出した。彼は米議会が開催した公聴会で「中共にわれわれがどのように出るのかわからなくすべき。その上で彼らの前に近づく打撃がどれだけ大きいのか、果たして彼らがそれに耐えられるのかを懸念させなければならない」と話した。中国が台湾を叩けば米国が出てくることもあるという疑いを中国に吹き込まなければならないということだ。これが現在「ミス」とされているバイデン大統領の「台湾防衛」発言の背景とみられる。疑いが大きいほど習近平主席は自制するためだ。


【コラム】中国が台湾侵攻したら米国は？（１）