1週間後の25日は、韓国大法院(最高裁)が日本戦犯企業に対して強制徴用被害者に1億ウォン(約1000万円)ずつの賠償を命じる判決(2018年10月30日)を出してからちょうど1000日となる。東京オリンピック(五輪)という慶事を機にも首脳会談に簡単に合意できない現在の悪化した韓日関係は事実上、強制徴用判決が出発点だった。
過去に縛られて一歩も動けなかった1000日の記録を振り返ってみよう。
◆徴用訴訟請求から18年目に「大型爆弾」
強制徴用被害者が日本戦犯企業を相手取り韓国国内の裁判所に損害賠償請求訴訟を起こしたのは2000年に遡る。1・2審は「1965年に締結された韓日協定で被害者個人の賠償請求権は消滅した」として棄却した。
しかし2012年に大法院は「徴用は国家が犯した反人道犯罪であり、韓日協定でも個人の賠償請求権が消滅したと見ることはできない」として破棄し、差し戻した。差し戻し審も最高裁の判断に基づき被害者の主張を認めると、今度は被告の戦犯企業が再上告し、事件はまた大法院に渡った。
その後、韓日関係に及ぼす影響を憂慮して朴槿恵(パク・クネ)政権が意図的に大法院の判決を遅延させたというのが、梁承泰(ヤン・スンテ)元大法院長が起訴されたいわゆる「裁判取引」事件だ。
そして2018年10月に大法院が原告勝訴判決を確定し、韓日関係には大型爆弾が落ちた。
◆混乱を招く裁判
しかし先月6日、ソウル中央地裁は原告・被告だけが異なる事実上同じ事件に対し、2018年の大法院とは異なる判断を出した。韓日請求権協定2条で両国政府および国民間の請求権問題が「完全、最終的に」解決したと規定したのを根拠に、被害者が日本企業を相手に損害賠償請求をすることはできないとして却下した。
こうした相反する判決は強制徴用事件だけでない。慰安婦被害者が日本政府を相手に提起した訴訟で、1月8日に裁判所は原告勝訴判決を出したが、4月21日には原告だけが違う同じ性格の事件で却下判決をした。
判決が衝突し、従来の判決が誤っていたので正したのか、逆に正しい判決に別の裁判所が反論したのかさえも判断しにくくなった。各裁判所の独立性を尊重するとはいえ、裁判所が自ら混乱を招いた事実は否定できず、希望と挫折の間を行き来して被害者の苦痛は深まった。
◆「裁判取引」で苦労した外交部、消極的な態度で一貫
裁判所の判決に基づく対応をとるべき政府も事実上、義務を放棄したという指摘だ。1000日間を振り返ってみると、日本に対しても、徴用および慰安婦被害者に対しても、状況を全く進展させることができなかった。
その間、日本は韓国に対する輸出規制の報復に乗り出し、韓国は日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了カードで正面から対抗した。米国の圧力でこれを猶予したが、以前には想像もできなかった敵対的な状況が繰り返された。
外交関係者の間では、裁判取引事件で苦労したことで外交部が消極的な態度で一貫した点に遺憾の声が出ている。朴槿恵政権当時、外交部は裁判所の要請を受けて判決が韓日関係に及ぼす影響に対する意見書を出したが、このため文在寅政権に入って長官・次官から局長、審議官など当局者が次々と検察や裁判所に呼び出されるという初めての事態が発生した。
外交筋は「その後、外交部は過去関連の裁判に対する意見の陳述はもちろん、被害者に会って説得することにも慎重になった」とし「少しでも積極的に動けば、裁判に影響を与えたり判決を揺さぶろうとすると疑われるおそれがあり、むしろ距離を置く姿を見せた」と伝えた。
◆裁判所に回申後、「意見でない」と否定
これは、4月21日に慰安婦被害者が日本政府を相手に起こした訴訟で裁判所が却下決定を出した後に外交部が見せた態度にも表れている。
当時、裁判所は「(日本政府に損害賠償責任を負わせるのは)外交部に対する事実照会の結果で表れたように、大韓民国の外交政策と国益に潜在的な影響を及ぼしかねない事案」と判決の根拠を挙げた。外交部が原告勝訴判決による外交的影響に対する立場を提示したと推測できるような内容だった。
ところが国会外交統一委員会所属の趙太庸(チョ・テヨン)国民の力議員室が外交部に裁判所に提出した意見について質問すると、外交部は「裁判所に意見を提示したり、意見書を提出したりしたことはない」と答えた。
このため趙議員室が質問を変えて、判決文に言及された部分の根拠となる内容を要請した。すると、ようやく外交部は「裁判所が(慰安婦合意に基づいて設立した)和解・癒やし財団の残余財産など関連事実に関する照会書を送付してきたので、これにより事実照会回申書を提出した」と答えた。
◆「外交直結事案を回避…無責任」
「意見書」でなく「事実照会回申書」を出したということだが、このように外交部は「意見」という言葉が出るだけで敏感に反応する姿だ。中央日報の追加の質問にも外交部当局者は「回申書に『意見』に該当する内容は全くなかった」と強調した。
しかしこのような外交部の釈明について「『ご飯を食べたのか』という質問に対し、『食べなかった』と答えておいて『パンは食べた』というような言葉遊び」という皮肉が外交関係者の間で出ている。
特に、外交関係と直結する事案で外交部が自分たちに飛び火するのを避けようとしていかなる立場も表さないのが無責任だという指摘も出ている。趙太庸議員室によると、外交部は自ら「多くの国家間の条約が外交部所管業務であるため、これに関連する有権解釈は慣例上外交部が担当する」と明らかにしている。
趙議員は「(韓日協定など)国際条約に対する有権解釈は外交部の業務領域だが、これに基づいてやるべきことを裁判への介入と見なされれば何もできなくなる」とし「外交部も勇気を持って取り組むべきだが、そのための環境をつくるために外交部長官、さらには行政府の首班である大統領が自分責任を果たさなければいけない」と指摘した。
実際、今まで続いた外交部の回避的な態度は、裁判所が外交関係を心配する異例の状況にまでつながった。中央地裁は先月、慰安婦被害者が日本政府を相手に起こした訴訟を却下し、韓日関係と韓米同盟に及ぼす悪影響を根拠に含めた。
過去に縛られて一歩も動けなかった1000日の記録を振り返ってみよう。
◆徴用訴訟請求から18年目に「大型爆弾」
強制徴用被害者が日本戦犯企業を相手取り韓国国内の裁判所に損害賠償請求訴訟を起こしたのは2000年に遡る。1・2審は「1965年に締結された韓日協定で被害者個人の賠償請求権は消滅した」として棄却した。
しかし2012年に大法院は「徴用は国家が犯した反人道犯罪であり、韓日協定でも個人の賠償請求権が消滅したと見ることはできない」として破棄し、差し戻した。差し戻し審も最高裁の判断に基づき被害者の主張を認めると、今度は被告の戦犯企業が再上告し、事件はまた大法院に渡った。
その後、韓日関係に及ぼす影響を憂慮して朴槿恵(パク・クネ)政権が意図的に大法院の判決を遅延させたというのが、梁承泰(ヤン・スンテ)元大法院長が起訴されたいわゆる「裁判取引」事件だ。
そして2018年10月に大法院が原告勝訴判決を確定し、韓日関係には大型爆弾が落ちた。
◆混乱を招く裁判
しかし先月6日、ソウル中央地裁は原告・被告だけが異なる事実上同じ事件に対し、2018年の大法院とは異なる判断を出した。韓日請求権協定2条で両国政府および国民間の請求権問題が「完全、最終的に」解決したと規定したのを根拠に、被害者が日本企業を相手に損害賠償請求をすることはできないとして却下した。
こうした相反する判決は強制徴用事件だけでない。慰安婦被害者が日本政府を相手に提起した訴訟で、1月8日に裁判所は原告勝訴判決を出したが、4月21日には原告だけが違う同じ性格の事件で却下判決をした。
判決が衝突し、従来の判決が誤っていたので正したのか、逆に正しい判決に別の裁判所が反論したのかさえも判断しにくくなった。各裁判所の独立性を尊重するとはいえ、裁判所が自ら混乱を招いた事実は否定できず、希望と挫折の間を行き来して被害者の苦痛は深まった。
◆「裁判取引」で苦労した外交部、消極的な態度で一貫
裁判所の判決に基づく対応をとるべき政府も事実上、義務を放棄したという指摘だ。1000日間を振り返ってみると、日本に対しても、徴用および慰安婦被害者に対しても、状況を全く進展させることができなかった。
その間、日本は韓国に対する輸出規制の報復に乗り出し、韓国は日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了カードで正面から対抗した。米国の圧力でこれを猶予したが、以前には想像もできなかった敵対的な状況が繰り返された。
外交関係者の間では、裁判取引事件で苦労したことで外交部が消極的な態度で一貫した点に遺憾の声が出ている。朴槿恵政権当時、外交部は裁判所の要請を受けて判決が韓日関係に及ぼす影響に対する意見書を出したが、このため文在寅政権に入って長官・次官から局長、審議官など当局者が次々と検察や裁判所に呼び出されるという初めての事態が発生した。
外交筋は「その後、外交部は過去関連の裁判に対する意見の陳述はもちろん、被害者に会って説得することにも慎重になった」とし「少しでも積極的に動けば、裁判に影響を与えたり判決を揺さぶろうとすると疑われるおそれがあり、むしろ距離を置く姿を見せた」と伝えた。
◆裁判所に回申後、「意見でない」と否定
これは、4月21日に慰安婦被害者が日本政府を相手に起こした訴訟で裁判所が却下決定を出した後に外交部が見せた態度にも表れている。
当時、裁判所は「(日本政府に損害賠償責任を負わせるのは)外交部に対する事実照会の結果で表れたように、大韓民国の外交政策と国益に潜在的な影響を及ぼしかねない事案」と判決の根拠を挙げた。外交部が原告勝訴判決による外交的影響に対する立場を提示したと推測できるような内容だった。
ところが国会外交統一委員会所属の趙太庸(チョ・テヨン)国民の力議員室が外交部に裁判所に提出した意見について質問すると、外交部は「裁判所に意見を提示したり、意見書を提出したりしたことはない」と答えた。
このため趙議員室が質問を変えて、判決文に言及された部分の根拠となる内容を要請した。すると、ようやく外交部は「裁判所が(慰安婦合意に基づいて設立した)和解・癒やし財団の残余財産など関連事実に関する照会書を送付してきたので、これにより事実照会回申書を提出した」と答えた。
◆「外交直結事案を回避…無責任」
「意見書」でなく「事実照会回申書」を出したということだが、このように外交部は「意見」という言葉が出るだけで敏感に反応する姿だ。中央日報の追加の質問にも外交部当局者は「回申書に『意見』に該当する内容は全くなかった」と強調した。
しかしこのような外交部の釈明について「『ご飯を食べたのか』という質問に対し、『食べなかった』と答えておいて『パンは食べた』というような言葉遊び」という皮肉が外交関係者の間で出ている。
特に、外交関係と直結する事案で外交部が自分たちに飛び火するのを避けようとしていかなる立場も表さないのが無責任だという指摘も出ている。趙太庸議員室によると、外交部は自ら「多くの国家間の条約が外交部所管業務であるため、これに関連する有権解釈は慣例上外交部が担当する」と明らかにしている。
趙議員は「(韓日協定など)国際条約に対する有権解釈は外交部の業務領域だが、これに基づいてやるべきことを裁判への介入と見なされれば何もできなくなる」とし「外交部も勇気を持って取り組むべきだが、そのための環境をつくるために外交部長官、さらには行政府の首班である大統領が自分責任を果たさなければいけない」と指摘した。
実際、今まで続いた外交部の回避的な態度は、裁判所が外交関係を心配する異例の状況にまでつながった。中央地裁は先月、慰安婦被害者が日本政府を相手に起こした訴訟を却下し、韓日関係と韓米同盟に及ぼす悪影響を根拠に含めた。
この記事を読んで…