先進国を英語で何というか。中学校の時だったか高校の時だったか、ある授業時間に先生がこのように尋ねた。国を示すカントリー(country)は簡単だがその前につく修飾語が少し難しい。一部の生徒たちの口からアドバンスト(advanced)、デベロップド(developed)などの単語が出てくる。先生が説明する。先進国は開発が完了したのでデベロップドカントリー、開発途上国または中進国は開発が進行中なのでデベロッピングを使う。韓国はデベロッピングカントリーだが、速く先進国にならなければならないだろう。
韓国が国連が認める先進国になったというニュースに記憶も薄れていた1980年代の授業時間に聞いたデベロップドが思い出された。
国連貿易開発会議(UNCTAD)は2日、スイスのジュネーブで開かれた第68回貿易開発理事会閉幕会議で、満場一致で韓国の先進国グループ入りを承認した。韓国はこれまで開発途上国グループにいたが、今回米国、フランス、日本などが含まれる先進国グループに変わった。開発途上国から先進国への変更は1964年のUNCTAD設立以来韓国が初めてという。
政府・与党は熱烈に歓迎する。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「国連加盟国の満場一致の合意で韓国が名実ともに先進国だという点を国際的に認められたものだ。とても誇らしいこと」と述べた。これに先立ち与党「共に民主党」も報道官声明を通じ「世界が韓国を名実ともに先進国と認めた」とした。
先進国は相対的な単語だ。包括する範囲も広い。普通は経済開発が進んでいる国を開発途上国・後進国と比較して言う言葉だ。1人当たり所得水準、産業構造、教育・文化水準、期待寿命などを総合的に考慮する。お金だけ多いからとなれるものではない。オイルマネーを誇る中東諸国を先進国と呼びはしない。私たちには先進国に対するつらい記憶もある。1996年に経済協力開発機構(OECD)加盟国となり先進国と肩を並べると自慢したが2年後に通貨危機による国際通貨基金(IMF)に救済金融を申し込む境遇になったりもした。
国連が認める先進国だというが、私たちは本当に先進国なのか。暮らしは依然として厳しい。社会には温もりよりも対立や憤怒の勢いが強い。国連傘下の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が国別の国内総生産、期待寿命、生活の質、社会的資源などを集計した2021世界幸福報告書を分析し韓国開発研究院(KDI)が5月に発表したものを見ると、韓国の国民幸福指数はOECD加盟37カ国のうち35位だ。フィンランドとデンマークが1位と2位で、韓国の下にはギリシャとトルコがあるだけだ。高齢者貧困率も高い。2018年基準43.3%でOECD平均の14.8%の3倍水準だ。米国の23.1%、日本の19.6%、ドイツの10.2%に比べて大幅に高い。ユニセフの子どもの幸福度指標を見ると、身体的健康と学業能力は上位圏だが精神的幸福度は最下位圏だ。
あえてそのような統計を借りなくても良い。「イセンマン」(今回の人生は終わった)、恋愛・結婚・出産をあきらめたという「3放」、3放を超え人間関係、持ち家購入、夢と希望もあきらめるという「N放」という言葉が自然に使われるのが韓国の現実だ。アカデミー作品賞を受賞し世界に名を知らせた映画『パラサイト』は韓国社会の不平等を指摘する。
韓国は社会資本が弱い社会だ。社会資本は信頼・社会ネットワーク・規範の3つの要素で構成されるが、韓国人の生活の質と幸福感が経済力や寿命に比べて低いのは、薄弱な社会資本が重要な理由に挙げられる。依存できる友達や親戚が少なく、寄付や慈善のような寛大さが不足し、不正腐敗が少なくないと認識することが幸福指数を大きく引き下げる。
韓国人の対人信頼は北欧、北米、オーストラリア、さらに中国より低い。韓国より対人信頼が低い国は南欧、南米、北アフリカの一部国だ(「社会資本に対する教育の役割と政策方向」、2017)。1990年代後半に米国の政治学者フランシス・フクヤマは韓国を中国とともに信頼が低い社会に挙げたが、いまも大きく変わらない。大韓商工会議所が2017年に出した「韓国の社会的資本蓄積実態と対応課題研究」を見ると、韓国の信頼・規範・社会ネットワークの3大社会的資本は国際社会で下位圏だ。大統領選挙候補は競争的に公正を語るが、それだけ韓国社会が公正でないという話だ。世界10位の経済規模のような定量的指標を中心に国連で先進国と認められたが、生活の質と幸福の側面ではまだまだだ。3放・N放の代わりに、夢と希望、成就を語る社会にならなければならない。その時が先進国だ。
ヨム・テジョン/経済エディター
韓国が国連が認める先進国になったというニュースに記憶も薄れていた1980年代の授業時間に聞いたデベロップドが思い出された。
国連貿易開発会議(UNCTAD)は2日、スイスのジュネーブで開かれた第68回貿易開発理事会閉幕会議で、満場一致で韓国の先進国グループ入りを承認した。韓国はこれまで開発途上国グループにいたが、今回米国、フランス、日本などが含まれる先進国グループに変わった。開発途上国から先進国への変更は1964年のUNCTAD設立以来韓国が初めてという。
政府・与党は熱烈に歓迎する。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「国連加盟国の満場一致の合意で韓国が名実ともに先進国だという点を国際的に認められたものだ。とても誇らしいこと」と述べた。これに先立ち与党「共に民主党」も報道官声明を通じ「世界が韓国を名実ともに先進国と認めた」とした。
先進国は相対的な単語だ。包括する範囲も広い。普通は経済開発が進んでいる国を開発途上国・後進国と比較して言う言葉だ。1人当たり所得水準、産業構造、教育・文化水準、期待寿命などを総合的に考慮する。お金だけ多いからとなれるものではない。オイルマネーを誇る中東諸国を先進国と呼びはしない。私たちには先進国に対するつらい記憶もある。1996年に経済協力開発機構(OECD)加盟国となり先進国と肩を並べると自慢したが2年後に通貨危機による国際通貨基金(IMF)に救済金融を申し込む境遇になったりもした。
国連が認める先進国だというが、私たちは本当に先進国なのか。暮らしは依然として厳しい。社会には温もりよりも対立や憤怒の勢いが強い。国連傘下の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が国別の国内総生産、期待寿命、生活の質、社会的資源などを集計した2021世界幸福報告書を分析し韓国開発研究院(KDI)が5月に発表したものを見ると、韓国の国民幸福指数はOECD加盟37カ国のうち35位だ。フィンランドとデンマークが1位と2位で、韓国の下にはギリシャとトルコがあるだけだ。高齢者貧困率も高い。2018年基準43.3%でOECD平均の14.8%の3倍水準だ。米国の23.1%、日本の19.6%、ドイツの10.2%に比べて大幅に高い。ユニセフの子どもの幸福度指標を見ると、身体的健康と学業能力は上位圏だが精神的幸福度は最下位圏だ。
あえてそのような統計を借りなくても良い。「イセンマン」(今回の人生は終わった)、恋愛・結婚・出産をあきらめたという「3放」、3放を超え人間関係、持ち家購入、夢と希望もあきらめるという「N放」という言葉が自然に使われるのが韓国の現実だ。アカデミー作品賞を受賞し世界に名を知らせた映画『パラサイト』は韓国社会の不平等を指摘する。
韓国は社会資本が弱い社会だ。社会資本は信頼・社会ネットワーク・規範の3つの要素で構成されるが、韓国人の生活の質と幸福感が経済力や寿命に比べて低いのは、薄弱な社会資本が重要な理由に挙げられる。依存できる友達や親戚が少なく、寄付や慈善のような寛大さが不足し、不正腐敗が少なくないと認識することが幸福指数を大きく引き下げる。
韓国人の対人信頼は北欧、北米、オーストラリア、さらに中国より低い。韓国より対人信頼が低い国は南欧、南米、北アフリカの一部国だ(「社会資本に対する教育の役割と政策方向」、2017)。1990年代後半に米国の政治学者フランシス・フクヤマは韓国を中国とともに信頼が低い社会に挙げたが、いまも大きく変わらない。大韓商工会議所が2017年に出した「韓国の社会的資本蓄積実態と対応課題研究」を見ると、韓国の信頼・規範・社会ネットワークの3大社会的資本は国際社会で下位圏だ。大統領選挙候補は競争的に公正を語るが、それだけ韓国社会が公正でないという話だ。世界10位の経済規模のような定量的指標を中心に国連で先進国と認められたが、生活の質と幸福の側面ではまだまだだ。3放・N放の代わりに、夢と希望、成就を語る社会にならなければならない。その時が先進国だ。
ヨム・テジョン/経済エディター
この記事を読んで…