大韓民国は「社長」の国だ。良く言えば社長だが、悪く言えばその日その日の暮らしも大変な零細自営業者が大部分だ。経済協力開発機構(OECD)によると、韓国の自営業者の比率は24.6%(2019年基準)に達する。就業者4人に1人が自営業者ということだ。米国(6.1%)や日本(10%)はもちろん、OECDの平均(16.8%)をはるかに上回る。
商売が順調な人もいなくはないが、廃業寸前の崖っぷちに立たされた人々も多い。最近ではソウル明洞(ミョンドン)・東大門(トンデムン)・梨泰院(イテウォン)などの中心商圏にも空き店舗が続出するほど深刻な状況だ。毎年80万人以上の個人事業者が国税庁に廃業届を出す。廃業までしなくても、毎日ため息だけ吐きながらなんとか持ちこたえているという人も少なくないだろう。韓国銀行は最近の報告書で「雇用員のいる自営業者に集中した雇用衝撃は通貨危機当時とほぼ同じ様子」と指摘した。スタッフを雇って商売をしている自営業者の困難が1990年代後半の国際通貨基金(IMF)の救済金融を受けた時期とほぼ同じ水準ということだ。
文在寅(ムン・ジェイン)政府の所得主導成長は自営業者には恐ろしい悪夢だった。週52時間勤務制は夕方の商売が中心だった一部業種に「夕方に客のない生活」をもたらした。最低賃金の急激な引き上げは自営業者だけでなくアルバイトスタッフにも衝撃だった。相当数の自営業者は人件費の負担によってスタッフを解雇したり、週休手当てのない週15時間未満のアルバイトに切り替えた。フランチャイズ加盟店の中には人を使う代わりに自動化機器を導入したところも多かった。1980年代に学生運動の先頭に立った刺身料理店の主人ハム・ウンギョン氏は「所得主導成長を語った人々は全員詐欺師」と話したことは自営業者の大多数の気持ちを代弁した、胸のすくような発言だった。
現政権が発足した2017年、1時間あたり6470ウォン(約635円)だった最低賃金は今年8720ウォンに跳ね上がった。過去4年間の最低賃金引上率は35%だ。それでも昨年(2.9%)と今年(1.5%)は最低賃金引上率が少し緩やかになり、自営業者がようやく少し息をつくことができた。もっと大きな問題は来年の最低賃金だ。24日に公開された労働界と経営界の最低賃金要求案は天地の差ほど大きいように思われる。
労働界は現政権任期最後の年である今回こそ1時間あたり1万ウォンを超えるようにしようという意気込みだ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)の雰囲気も普通ではない。文大統領は最近、国際労働機関(ILO)総会で「韓国政府は長時間労働時間を改善し、最低賃金を果敢に引き上げ、所得主導成長を含む包容的成長を追求した」と自慢した。しばらく水面下で静かだった所得主導成長というみじめな失敗作が蘇ってくるのではないか心配だ。現政権で最低賃金引上を主導した洪長杓(ホン・ジャンピョ)元経済首席は先日国策研究機関である韓国開発研究院(KDI)院長に就任した。洪氏は青瓦台在職時期、「最低賃金のせいで雇用が大幅に減少したという主張は小説」と主張した。まだこのように主張するのか、万一そうなら統計庁の雇用統計についてはどのように説明するのか聞きたい。
張夏成(チャン・ハソン)元政策室長は2018年8月、国会でこのように発言した。「賃金を支払わなければならない雇用員がいる自営業者はむしろ増えた。いま自営業者が極めて厳しい部分は雇用員がいない、すなわち規模が小さい自営業者の問題だ」。実状は全く違う状況だった。過去4年間、雇用員のいる自営業者は28万人以上減った。同じ期間、雇用員いない自営業者は15万人増えた。最低賃金引き上げで経営が厳しくなった自営業者の相当数がスタッフの首を切り「一人社長」になるか、いっそのこと商売をやめたということだ。この間に同じところで長時間働く職は減り、「細切れバイト」だけ大幅が増えた。過去4年間、17時間以下の就業者数が88万人も増加した背景だ。一時的に雇用員のいる自営業者が増えた時期もあることはあった。これは政府の雇用安定資金による錯視効果だったというのがチェ・スンジェ元小商工人連合会長の説明だ。
現政府に自営業者を配慮する気持ちが少しでも残っているなら、来年の最低賃金引上率は最小化するべきだ。同時に補完策用意を急がなければならない。地域や業種・年齢によって最低賃金を差別化するのだ。米国・日本など主要国でも最低賃金差別化を施行中だ。常識的にソウルの1万ウォンと地方の小都市の1万ウォンは違わざるをえない。万一、首都圏にある企業が最低賃金が安いところに移転するならば、地域経済活性化にも役立つことができる。どうか自営業者に助けの手を差し伸べることができる最後の機会を逃さないでほしい。
チュ・ジョンワン/経済エディター
商売が順調な人もいなくはないが、廃業寸前の崖っぷちに立たされた人々も多い。最近ではソウル明洞(ミョンドン)・東大門(トンデムン)・梨泰院(イテウォン)などの中心商圏にも空き店舗が続出するほど深刻な状況だ。毎年80万人以上の個人事業者が国税庁に廃業届を出す。廃業までしなくても、毎日ため息だけ吐きながらなんとか持ちこたえているという人も少なくないだろう。韓国銀行は最近の報告書で「雇用員のいる自営業者に集中した雇用衝撃は通貨危機当時とほぼ同じ様子」と指摘した。スタッフを雇って商売をしている自営業者の困難が1990年代後半の国際通貨基金(IMF)の救済金融を受けた時期とほぼ同じ水準ということだ。
文在寅(ムン・ジェイン)政府の所得主導成長は自営業者には恐ろしい悪夢だった。週52時間勤務制は夕方の商売が中心だった一部業種に「夕方に客のない生活」をもたらした。最低賃金の急激な引き上げは自営業者だけでなくアルバイトスタッフにも衝撃だった。相当数の自営業者は人件費の負担によってスタッフを解雇したり、週休手当てのない週15時間未満のアルバイトに切り替えた。フランチャイズ加盟店の中には人を使う代わりに自動化機器を導入したところも多かった。1980年代に学生運動の先頭に立った刺身料理店の主人ハム・ウンギョン氏は「所得主導成長を語った人々は全員詐欺師」と話したことは自営業者の大多数の気持ちを代弁した、胸のすくような発言だった。
現政権が発足した2017年、1時間あたり6470ウォン(約635円)だった最低賃金は今年8720ウォンに跳ね上がった。過去4年間の最低賃金引上率は35%だ。それでも昨年(2.9%)と今年(1.5%)は最低賃金引上率が少し緩やかになり、自営業者がようやく少し息をつくことができた。もっと大きな問題は来年の最低賃金だ。24日に公開された労働界と経営界の最低賃金要求案は天地の差ほど大きいように思われる。
労働界は現政権任期最後の年である今回こそ1時間あたり1万ウォンを超えるようにしようという意気込みだ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)の雰囲気も普通ではない。文大統領は最近、国際労働機関(ILO)総会で「韓国政府は長時間労働時間を改善し、最低賃金を果敢に引き上げ、所得主導成長を含む包容的成長を追求した」と自慢した。しばらく水面下で静かだった所得主導成長というみじめな失敗作が蘇ってくるのではないか心配だ。現政権で最低賃金引上を主導した洪長杓(ホン・ジャンピョ)元経済首席は先日国策研究機関である韓国開発研究院(KDI)院長に就任した。洪氏は青瓦台在職時期、「最低賃金のせいで雇用が大幅に減少したという主張は小説」と主張した。まだこのように主張するのか、万一そうなら統計庁の雇用統計についてはどのように説明するのか聞きたい。
張夏成(チャン・ハソン)元政策室長は2018年8月、国会でこのように発言した。「賃金を支払わなければならない雇用員がいる自営業者はむしろ増えた。いま自営業者が極めて厳しい部分は雇用員がいない、すなわち規模が小さい自営業者の問題だ」。実状は全く違う状況だった。過去4年間、雇用員のいる自営業者は28万人以上減った。同じ期間、雇用員いない自営業者は15万人増えた。最低賃金引き上げで経営が厳しくなった自営業者の相当数がスタッフの首を切り「一人社長」になるか、いっそのこと商売をやめたということだ。この間に同じところで長時間働く職は減り、「細切れバイト」だけ大幅が増えた。過去4年間、17時間以下の就業者数が88万人も増加した背景だ。一時的に雇用員のいる自営業者が増えた時期もあることはあった。これは政府の雇用安定資金による錯視効果だったというのがチェ・スンジェ元小商工人連合会長の説明だ。
現政府に自営業者を配慮する気持ちが少しでも残っているなら、来年の最低賃金引上率は最小化するべきだ。同時に補完策用意を急がなければならない。地域や業種・年齢によって最低賃金を差別化するのだ。米国・日本など主要国でも最低賃金差別化を施行中だ。常識的にソウルの1万ウォンと地方の小都市の1万ウォンは違わざるをえない。万一、首都圏にある企業が最低賃金が安いところに移転するならば、地域経済活性化にも役立つことができる。どうか自営業者に助けの手を差し伸べることができる最後の機会を逃さないでほしい。
チュ・ジョンワン/経済エディター
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