韓国の外交において当面の最大難題の一つが、同盟国の米国と隣接国の中国の間での立場であることはよく知られている。しかし韓国社会がこの懸案にそれほど真剣に対応していないというのも、奇異であるが厳然たる現実だ。歴代政権はすべて米中間であいまいな態度をとりながら事案別で便宜的な対処をしてきた。
このため米国と中国は共に韓国を引き込もうとした。韓国は米国が引けば米国側に、中国が引けば中国側に行き来した。米国は同盟の韓国の態度に不満を募らせてきた一方、中国は韓国を引き込むことができるという期待を高めた。韓国は米中の牽引力に振り回された。
最近は米中対立が圧倒的な外交環境となり、こうした対処が招く弊害はさらに拡大している。韓国は米中間で座標と方向を設定し、政策に一貫性と予測可能性を付与し、米中の期待値を調整することが重要になった。
◆これまでは米中間で反射的対応
4年前のろうそく集会の民心が国全体の変化を注文し、これを背景に文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生した当時、筆者は米中間での原則のない反射的対応式の旧態外交が終わることを期待した。原則がある一貫した新しい外交を渇望した。
しかし4年が経過しても新しい外交は見られなかった。韓国は依然としてあいまいで回避的な態度を踏襲している。バイデン政権に入って中国への対応策の一環として韓米外交・国防2プラス2会議を開催した当時までも、韓国は極めて回避的だった。2プラス2共同発表文に中国関連の言及は全くなかった。
その韓国の態度に一大変化が観察されたのが韓米首脳会談だった。韓国は共同声明で初めて台湾海峡に言及したほか、南シナ海、規則基盤の国際秩序、民主、人権、法の支配から同盟強化、ミサイル指針撤廃、コロナ震源地調査にいたるまで中国の気に障る立場に同調した。歴代どの政権よりも大幅に米国の注文を受け入れた。数十年間あいまいだった韓国が一日にして立場を変えたのだ。
ところが奇異な韓国的現実は、こうした大変な出来事が何でもなかったかのように過ぎていくことだ。保守陣営は単純に韓米関係にプラスになると考えて歓迎し、進歩陣営は納得できなくても自分側がしたことなので好評する。これでよいのだろうか。この程度の路線旋回なら、その含意と波紋に関する議論がなければいけない。そうしてこそ教訓となり、外交が発展する。いくつかの必須質問でこの作業をしてみようと思う。
◆韓国政府、共同声明の北朝鮮関連成果を広報
最初の質問は、政府がなぜ米中間で路線を急変針したのか、これは意図した政策転換なのかということだ。首脳会談の前後の政府の動きをみると、路線旋回が政策方向を新しく確立した結果である可能性は低い。わずか1カ月半前の韓米2プラス2会議では極めて慎重な態度を見せていた政府だ。首脳会談後にも政府は路線旋回には言及を避けようとした。そして台湾海峡をはじめとする中国関連の言及は通常的に出てくる原則的な表現にすぎないとし、意味を縮小した。その代わり政府は共同声明に反映された北朝鮮関連文言を成果として集中的に広報した。
共同声明をみると、韓国は同盟および中国問題に関する米国の注文を受け入れ、北朝鮮問題に関する韓国の注文を反映したという点が分かる。したがって路線旋回として映ることになった理由は、北朝鮮関連の文言と同盟および中国関連の文言のやり取りである可能性が濃厚だ。共同声明の展開方式は終始、米国式の理論が整然としている。米国の草案に韓国の北朝鮮関連注文を挿入したという印象だ。
ここで2つ目の質問を提起できる。韓米が交わした事案の間に等価性はあるのか。韓国が北朝鮮に関連して確保したのは、板門店(パンムンジョム)宣言とシンガポール声明の土台の上で北朝鮮と交渉するという言及、韓半島(朝鮮半島)非核化という表現、米国の北朝鮮との対話意志だ。ソン・キム氏を米国務省北朝鮮政策特別代表に任命したのとミサイル指針を撤廃したのも成果だ。
やり取りしたものを比較してみると、韓国が譲った同盟の地域的グローバル役割強化と中国関連の新しい立場表明は政策的な含意を持つものであり、今後の我々の動きを拘束するだろう。一方、韓国が引き出した北朝鮮関連の文言は名目上の含意しか持たず、等価性はあまりない。もちろん等価性がなくても受けたものにそれなりの効用があれば正当化できる。
◆北朝鮮は南北対話に応じる可能性低い
なら、3つ目の質問を提起できる。韓国が得た部分の実質価値はどの程度か。政府が熱心に引き出した北朝鮮関連の表現は南北対話、米朝対話の再開のためのものだ。したがって実質価値は北朝鮮が対話に応じるかにかかっている。しかし対話を拒否してきた北朝鮮が首脳会談を前向きに見る可能性は低い。
共同声明に表明された米国の対北朝鮮対話意志は原則的だ。これも制裁履行、北朝鮮抑止、北朝鮮人権、ミサイル指針撤廃など北朝鮮が嫌がる内容と共に提示された。さらに米国は北朝鮮を対話に誘引するインセンティブを駆使する考えもない。ボールは北朝鮮側にあるので北朝鮮が交渉に出てくるべきという立場だ。
板門店宣言とシンガポール声明を確認した点も北朝鮮には大きな贈り物にはならない。これを否認すれば北朝鮮が刺激を受けるが、これを確認したとしても変わる必要がないためだ。ソン・キム氏の任命も北朝鮮には大きな意味がない。その職位は以前からあった。当時も交渉に進展があったわけではない。韓国は南北関係の進展を促進し、米朝対話と好循環を成し遂げようとするが、当事国の北朝鮮が南北対話に応じる可能性も低い。
期待効果がこの程度なら、4つ目の質問は中国の反発の強度が果たしてどの程度かだ。中国外務省の報道官は「台湾海峡は内政問題、韓米の言及不用、火遊びするな」というメッセージを出した。中国の王毅外相は韓国のG7会議出席の直前、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官に「米国のインド太平洋戦略は集団対決を扇動し、平和・安定に役に立たないので反対する。是非曲直を把握し、正しい立場を堅持し、政治的な共感帯を守り、偏向のある言葉に乗せられてはいけない」と述べた。強度のある反発だ。
【コラム】国運かかる米中対応路線、突然変えてよいのか=韓国(2)
このため米国と中国は共に韓国を引き込もうとした。韓国は米国が引けば米国側に、中国が引けば中国側に行き来した。米国は同盟の韓国の態度に不満を募らせてきた一方、中国は韓国を引き込むことができるという期待を高めた。韓国は米中の牽引力に振り回された。
最近は米中対立が圧倒的な外交環境となり、こうした対処が招く弊害はさらに拡大している。韓国は米中間で座標と方向を設定し、政策に一貫性と予測可能性を付与し、米中の期待値を調整することが重要になった。
◆これまでは米中間で反射的対応
4年前のろうそく集会の民心が国全体の変化を注文し、これを背景に文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生した当時、筆者は米中間での原則のない反射的対応式の旧態外交が終わることを期待した。原則がある一貫した新しい外交を渇望した。
しかし4年が経過しても新しい外交は見られなかった。韓国は依然としてあいまいで回避的な態度を踏襲している。バイデン政権に入って中国への対応策の一環として韓米外交・国防2プラス2会議を開催した当時までも、韓国は極めて回避的だった。2プラス2共同発表文に中国関連の言及は全くなかった。
その韓国の態度に一大変化が観察されたのが韓米首脳会談だった。韓国は共同声明で初めて台湾海峡に言及したほか、南シナ海、規則基盤の国際秩序、民主、人権、法の支配から同盟強化、ミサイル指針撤廃、コロナ震源地調査にいたるまで中国の気に障る立場に同調した。歴代どの政権よりも大幅に米国の注文を受け入れた。数十年間あいまいだった韓国が一日にして立場を変えたのだ。
ところが奇異な韓国的現実は、こうした大変な出来事が何でもなかったかのように過ぎていくことだ。保守陣営は単純に韓米関係にプラスになると考えて歓迎し、進歩陣営は納得できなくても自分側がしたことなので好評する。これでよいのだろうか。この程度の路線旋回なら、その含意と波紋に関する議論がなければいけない。そうしてこそ教訓となり、外交が発展する。いくつかの必須質問でこの作業をしてみようと思う。
◆韓国政府、共同声明の北朝鮮関連成果を広報
最初の質問は、政府がなぜ米中間で路線を急変針したのか、これは意図した政策転換なのかということだ。首脳会談の前後の政府の動きをみると、路線旋回が政策方向を新しく確立した結果である可能性は低い。わずか1カ月半前の韓米2プラス2会議では極めて慎重な態度を見せていた政府だ。首脳会談後にも政府は路線旋回には言及を避けようとした。そして台湾海峡をはじめとする中国関連の言及は通常的に出てくる原則的な表現にすぎないとし、意味を縮小した。その代わり政府は共同声明に反映された北朝鮮関連文言を成果として集中的に広報した。
共同声明をみると、韓国は同盟および中国問題に関する米国の注文を受け入れ、北朝鮮問題に関する韓国の注文を反映したという点が分かる。したがって路線旋回として映ることになった理由は、北朝鮮関連の文言と同盟および中国関連の文言のやり取りである可能性が濃厚だ。共同声明の展開方式は終始、米国式の理論が整然としている。米国の草案に韓国の北朝鮮関連注文を挿入したという印象だ。
ここで2つ目の質問を提起できる。韓米が交わした事案の間に等価性はあるのか。韓国が北朝鮮に関連して確保したのは、板門店(パンムンジョム)宣言とシンガポール声明の土台の上で北朝鮮と交渉するという言及、韓半島(朝鮮半島)非核化という表現、米国の北朝鮮との対話意志だ。ソン・キム氏を米国務省北朝鮮政策特別代表に任命したのとミサイル指針を撤廃したのも成果だ。
やり取りしたものを比較してみると、韓国が譲った同盟の地域的グローバル役割強化と中国関連の新しい立場表明は政策的な含意を持つものであり、今後の我々の動きを拘束するだろう。一方、韓国が引き出した北朝鮮関連の文言は名目上の含意しか持たず、等価性はあまりない。もちろん等価性がなくても受けたものにそれなりの効用があれば正当化できる。
◆北朝鮮は南北対話に応じる可能性低い
なら、3つ目の質問を提起できる。韓国が得た部分の実質価値はどの程度か。政府が熱心に引き出した北朝鮮関連の表現は南北対話、米朝対話の再開のためのものだ。したがって実質価値は北朝鮮が対話に応じるかにかかっている。しかし対話を拒否してきた北朝鮮が首脳会談を前向きに見る可能性は低い。
共同声明に表明された米国の対北朝鮮対話意志は原則的だ。これも制裁履行、北朝鮮抑止、北朝鮮人権、ミサイル指針撤廃など北朝鮮が嫌がる内容と共に提示された。さらに米国は北朝鮮を対話に誘引するインセンティブを駆使する考えもない。ボールは北朝鮮側にあるので北朝鮮が交渉に出てくるべきという立場だ。
板門店宣言とシンガポール声明を確認した点も北朝鮮には大きな贈り物にはならない。これを否認すれば北朝鮮が刺激を受けるが、これを確認したとしても変わる必要がないためだ。ソン・キム氏の任命も北朝鮮には大きな意味がない。その職位は以前からあった。当時も交渉に進展があったわけではない。韓国は南北関係の進展を促進し、米朝対話と好循環を成し遂げようとするが、当事国の北朝鮮が南北対話に応じる可能性も低い。
期待効果がこの程度なら、4つ目の質問は中国の反発の強度が果たしてどの程度かだ。中国外務省の報道官は「台湾海峡は内政問題、韓米の言及不用、火遊びするな」というメッセージを出した。中国の王毅外相は韓国のG7会議出席の直前、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官に「米国のインド太平洋戦略は集団対決を扇動し、平和・安定に役に立たないので反対する。是非曲直を把握し、正しい立場を堅持し、政治的な共感帯を守り、偏向のある言葉に乗せられてはいけない」と述べた。強度のある反発だ。
【コラム】国運かかる米中対応路線、突然変えてよいのか=韓国(2)
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