言葉は立派だが、なぜか胸が痛む。韓米首脳会談の議題の一つ「ワクチン協力」のことだ。米国に対してワクチン生産ハブ構築、ワクチンスワップを提案するという。正直になろう。高難易度ワクチン開発経験もない韓国が米国と協力を云々するのは「精神勝利」に近い。もちろん韓国の医薬品委託生産(CMO)能力は優秀だ。半導体のように生産能力自体が競争力にならないわけではない。しかしワクチン後進国の韓国が米国と同等なパートナーのように包装するのはきまり悪い。ワクチン遅滞国になってしまった韓国が米国に手を出すのが今回の会談の本質だ。
半導体やバッテリーがなかったとすれば、どうなっていたのだろうか。バイデン大統領と向き合って座る文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、飢えた家族のために兄にコメを借りに行くフンブのように自尊心が傷ついているはずだ。「半導体を与えてワクチンを受けよう」という交換の形になるため、少しは体面を保つことができた。バイデン政権の国際戦略重点がインド太平洋に移り、米国が考える韓国の地政学的な価値は変わった。韓国の価値を高めるのは半導体やバッテリーなど「コアテック」だ。サムスンがホワイトハウス半導体会議に招請されず、LGとSKのバッテリー紛争を米国が放置すれば、我々には悪夢になっていた。
任期中ずっと反企業政策基調を続けてきた文在寅政権で、企業が政府の体面を保つという現実はアイロニーだ。大統領の海外訪問があるたびに財界人が同行したが、今回のように具体的な国家的「ディール」のために企業を前に出すケースはなかった。政府は「曲がった木でも使い道がある」ということわざを思い出しながら胸をなで下ろしているのかもしれない。
考えてみると、半導体-ワクチンの交換フレームは問題がある。半導体は21世紀の石油と呼ばれるほど重要な戦略物資になったが、あくまでも民間企業の領域だ。半導体投資は企業としては死活がかかった問題だ。国の支援が半導体産業で大きな役割をするのは事実だが、数十兆ウォンもの投資を国家が強要することはできない。一方、ワクチンは国家の責任だ。国民の生命がかかる問題であるからだ。史上最悪と非難を受けるトランプ前大統領だったが、「超高速作戦」という名で実行したワクチン開発プロジェクトは認めるべきだろう。米政府が民間製薬会社にワクチン開発および事前買取の名目で14兆ウォン以上の資金を支援したのは、パンデミックに対する国家の責任を見せた決断だった。
我々はどうだったのか。国民の苦痛に依存したK防疫を信じて「ワクチンは急ぎでない」と声を高めた。無駄になることを恐れてワクチン事前買取をためらった。これを批判する声は政府に対する難癖として罵倒した。その結果、K防疫の自尊心はワクチン遅滞国という名で傷ついた。これを挽回しようと迅速な国々が掌握したワクチン確保戦場に遅れて飛び込みながら、企業を前に出している。官僚主義と陣営論理に埋めれてさまよう国家の責任を民間に押しつける格好だ。
文大統領が米国行きの飛行機に乗った日、モデルナと委託生産契約を締結するためサムスンバイオロジクス代表も米国に行った。大統領が話す「ワクチン生産ハブ」構築の第一歩だ。その翌日、同社の前代表はサムスン物産合併の裁判を受けるためソウル中央地裁の法廷に出頭した。この2つの場面から韓国企業が直面する二律背反の現実を読むのは行き過ぎた感受性だろうか。
ある与党議員は李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長赦免論に関し「李副会長はワクチンにおいて魔法の杖ではない」と述べた。「この機会に富裕層は罰を受けないという認識を崩すことがサムスンと大韓民国全体を見ても必要だ」とも語った。李在鎔副会長の赦免が司法基準の公平性を崩すという声を理解できないわけではない。なら企業を外交のテコに活用する現実はどう見るべきなのか。企業を担保に「公正」と「実利」のどちらが政治に有利かを計っているのなら、それは偽善だとしうしかない。
イ・ヒョンサン/中央日報コラムニスト
半導体やバッテリーがなかったとすれば、どうなっていたのだろうか。バイデン大統領と向き合って座る文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、飢えた家族のために兄にコメを借りに行くフンブのように自尊心が傷ついているはずだ。「半導体を与えてワクチンを受けよう」という交換の形になるため、少しは体面を保つことができた。バイデン政権の国際戦略重点がインド太平洋に移り、米国が考える韓国の地政学的な価値は変わった。韓国の価値を高めるのは半導体やバッテリーなど「コアテック」だ。サムスンがホワイトハウス半導体会議に招請されず、LGとSKのバッテリー紛争を米国が放置すれば、我々には悪夢になっていた。
任期中ずっと反企業政策基調を続けてきた文在寅政権で、企業が政府の体面を保つという現実はアイロニーだ。大統領の海外訪問があるたびに財界人が同行したが、今回のように具体的な国家的「ディール」のために企業を前に出すケースはなかった。政府は「曲がった木でも使い道がある」ということわざを思い出しながら胸をなで下ろしているのかもしれない。
考えてみると、半導体-ワクチンの交換フレームは問題がある。半導体は21世紀の石油と呼ばれるほど重要な戦略物資になったが、あくまでも民間企業の領域だ。半導体投資は企業としては死活がかかった問題だ。国の支援が半導体産業で大きな役割をするのは事実だが、数十兆ウォンもの投資を国家が強要することはできない。一方、ワクチンは国家の責任だ。国民の生命がかかる問題であるからだ。史上最悪と非難を受けるトランプ前大統領だったが、「超高速作戦」という名で実行したワクチン開発プロジェクトは認めるべきだろう。米政府が民間製薬会社にワクチン開発および事前買取の名目で14兆ウォン以上の資金を支援したのは、パンデミックに対する国家の責任を見せた決断だった。
我々はどうだったのか。国民の苦痛に依存したK防疫を信じて「ワクチンは急ぎでない」と声を高めた。無駄になることを恐れてワクチン事前買取をためらった。これを批判する声は政府に対する難癖として罵倒した。その結果、K防疫の自尊心はワクチン遅滞国という名で傷ついた。これを挽回しようと迅速な国々が掌握したワクチン確保戦場に遅れて飛び込みながら、企業を前に出している。官僚主義と陣営論理に埋めれてさまよう国家の責任を民間に押しつける格好だ。
文大統領が米国行きの飛行機に乗った日、モデルナと委託生産契約を締結するためサムスンバイオロジクス代表も米国に行った。大統領が話す「ワクチン生産ハブ」構築の第一歩だ。その翌日、同社の前代表はサムスン物産合併の裁判を受けるためソウル中央地裁の法廷に出頭した。この2つの場面から韓国企業が直面する二律背反の現実を読むのは行き過ぎた感受性だろうか。
ある与党議員は李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長赦免論に関し「李副会長はワクチンにおいて魔法の杖ではない」と述べた。「この機会に富裕層は罰を受けないという認識を崩すことがサムスンと大韓民国全体を見ても必要だ」とも語った。李在鎔副会長の赦免が司法基準の公平性を崩すという声を理解できないわけではない。なら企業を外交のテコに活用する現実はどう見るべきなのか。企業を担保に「公正」と「実利」のどちらが政治に有利かを計っているのなら、それは偽善だとしうしかない。
イ・ヒョンサン/中央日報コラムニスト
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