福祉政策が不平等を再生産する? なにげなく聞けば矛盾のような話だ。
私たちが考える福祉政策はいくら最低階層でも人間らしい衣食住を得られるよう社会で保障することが目標と考えるためだ。
だが30年以上にわたり福祉政策を研究してきたソウル科学技術大学のキム・ヨンスン教授は「韓国の福祉政策はますます『富める者は益々富み、貧する者は益々貧する』を制度的に強化している」と強調した。キム教授はソウル大学政治学科で「福祉国家再編の2つの道:英国とスウェーデンの経験」により博士号を取り、国際労働機関研究員と韓国保健社会研究院を経ながら福祉国家を研究した専門家だ。それならキム教授がこのような主張をする根拠は何だろうか。最近新刊『韓国福祉国家はどのように作られたか』を出したキム教授に、13日に電話でインタビューした。
――福祉政策が差別を強化する道具に使われる?
「福祉というものは低所得労働者にもっと必要だが、むしろこうした制度によく加入したのは職場もしっかりしている人たちだ。国民年金の加入率を考えてほしい。正規職は100%だが非正規職は50%に満たない。福祉は基本的に不平等を緩和するというが、むしろ福祉をしながら不平等が強化されている。西欧諸国と比較すると『韓国的特徴』といえる。例えば小さな企業に行けば社長も労働者も保険料を払いたくないので互いに合意して年金や失業保険などに加入しない。一方で韓国は労働運動が企業ごとに発達しており、賃金引き上げと雇用保障など企業内の分配闘争に集中した。その上で社会的再分配に対しては議論がおろそかにされた側面もある」。
――オランダは韓国より労働柔軟性が強く、非正規職の割合がもっと高いが。
「オランダのような国はいくら小さい事業所でアルバイトをしても国税庁に申告し、所得から一定部分を無条件で基礎年金として納付することになる。一種の税金のような概念だ。オランダに居住すれば強制加入しなければならず、年金のように一定額を受け取れる。所得が低く納付額が少なくても一定金額以上を受け取れる。福祉先進国はほとんどがこのように制度的に抜け出さないよう国がすべて最大限加入させる。韓国は最近ライダーとかプラットフォーム労働が多くなり、労働の柔軟化が極端という状況まできた。フードデリバリーサービスのように雇用主がだれなのかはっきりしない形態の労働が多くなったが、これらの人たちは過去の制度では引き入れる方法がない、全国民雇用保険制度のような方式を考慮しなければならない」。
――この本では韓国の福祉政策の特徴のひとつとして大統領によって主導されたことが挙げられた。
「主に大統領によって大統領選挙の時に企画され政策として執行されるケースが多かった。選挙の時にプレゼントするように福祉公約が作られ政策化されたため、現実との乖離が起きるケースがある。例えば2012年の大統領選挙で保育が話題として浮上すると当時大統領候補だった朴槿恵(パク・クネ)氏は0~2歳に無償保育をすると宣言した。福祉専門家も驚くほど破格だった。当初の意図は働く母親を支援しようというものだったが、差別なく支援すると言いながら会社勤めをしていてもしていなくてもみんな施設に預けられるようにした。そのため『預けなければ自分だけ損をする』という認識が広がり、専業主婦も子どもを施設に預け、施設でもそうした母親はすぐ引き取りにくるので終日預けるより好まれ、働く母親に対する『逆差別』が起きた。3歳児の母親らが『なぜ私たちを排除するのか』と抗議して3歳児も対象にしたが、スウェーデンのような国は育児休職が発達しており、働からずに子どもを預けるとお金を少し払う。預けられる時間も少ない。韓国は政治競争をしながら作ったため、真摯な悩みもなくばらまきに近い政策を使ったのだ」。
――全般的に福祉政策に対する利害関係者の参加や理解度が不足していたのではないか。
「西欧の場合、福祉政策はさまざまな社会勢力の対立と闘争と妥協の産物だ。福祉政策が議論された時期は製造業の好況期であり、労働者のパワーが強かった。彼らの強い支持を受けて議会に進出した左派政党は労働者の権益を代弁し、こうした過程を通じて全社会的に福祉政策の適用について議論し妥協する機会があった。ところが韓国は分断国家という限界から左派政党が出現しにくく、福祉政策は主に保守政党や中道政党から出た大統領の意志に基づいて作られた。そのため多様な利害関係者が参加して討論したり妥協して繊細に枠組み作るのが難しかった。時期的にも少し惜しかった。1999年に金大中(キム・デジュン)政権で国民生活保障基本法制定や国民年金改革など重要な骨格が用意されたが、この時はすでに製造業の全盛期が過ぎ、通貨危機と新自由主義導入など労働者勢力が萎縮した時だった。こうした問題が複合的に絡まって労働階級の権益に対する悩みが十分に扱われることができなかった」。
――韓国は福祉後進国なのか。
「1990年に3.1%だったGDP比の福祉支出は2019年には12.2%まで増えた。もちろん韓国の福祉水準は経済発展水準に比べて低いという指摘は依然として有効だが、世界史的に類例がないほど速く福祉政策が膨張した国だ。そして進歩・保守どんな政権になっても福祉拡大基調を遅らせたことはない。対立陣営の政策をひっくり返すこともなかった。こうした連続性は評価できると考える。
私たちが考える福祉政策はいくら最低階層でも人間らしい衣食住を得られるよう社会で保障することが目標と考えるためだ。
だが30年以上にわたり福祉政策を研究してきたソウル科学技術大学のキム・ヨンスン教授は「韓国の福祉政策はますます『富める者は益々富み、貧する者は益々貧する』を制度的に強化している」と強調した。キム教授はソウル大学政治学科で「福祉国家再編の2つの道:英国とスウェーデンの経験」により博士号を取り、国際労働機関研究員と韓国保健社会研究院を経ながら福祉国家を研究した専門家だ。それならキム教授がこのような主張をする根拠は何だろうか。最近新刊『韓国福祉国家はどのように作られたか』を出したキム教授に、13日に電話でインタビューした。
――福祉政策が差別を強化する道具に使われる?
「福祉というものは低所得労働者にもっと必要だが、むしろこうした制度によく加入したのは職場もしっかりしている人たちだ。国民年金の加入率を考えてほしい。正規職は100%だが非正規職は50%に満たない。福祉は基本的に不平等を緩和するというが、むしろ福祉をしながら不平等が強化されている。西欧諸国と比較すると『韓国的特徴』といえる。例えば小さな企業に行けば社長も労働者も保険料を払いたくないので互いに合意して年金や失業保険などに加入しない。一方で韓国は労働運動が企業ごとに発達しており、賃金引き上げと雇用保障など企業内の分配闘争に集中した。その上で社会的再分配に対しては議論がおろそかにされた側面もある」。
――オランダは韓国より労働柔軟性が強く、非正規職の割合がもっと高いが。
「オランダのような国はいくら小さい事業所でアルバイトをしても国税庁に申告し、所得から一定部分を無条件で基礎年金として納付することになる。一種の税金のような概念だ。オランダに居住すれば強制加入しなければならず、年金のように一定額を受け取れる。所得が低く納付額が少なくても一定金額以上を受け取れる。福祉先進国はほとんどがこのように制度的に抜け出さないよう国がすべて最大限加入させる。韓国は最近ライダーとかプラットフォーム労働が多くなり、労働の柔軟化が極端という状況まできた。フードデリバリーサービスのように雇用主がだれなのかはっきりしない形態の労働が多くなったが、これらの人たちは過去の制度では引き入れる方法がない、全国民雇用保険制度のような方式を考慮しなければならない」。
――この本では韓国の福祉政策の特徴のひとつとして大統領によって主導されたことが挙げられた。
「主に大統領によって大統領選挙の時に企画され政策として執行されるケースが多かった。選挙の時にプレゼントするように福祉公約が作られ政策化されたため、現実との乖離が起きるケースがある。例えば2012年の大統領選挙で保育が話題として浮上すると当時大統領候補だった朴槿恵(パク・クネ)氏は0~2歳に無償保育をすると宣言した。福祉専門家も驚くほど破格だった。当初の意図は働く母親を支援しようというものだったが、差別なく支援すると言いながら会社勤めをしていてもしていなくてもみんな施設に預けられるようにした。そのため『預けなければ自分だけ損をする』という認識が広がり、専業主婦も子どもを施設に預け、施設でもそうした母親はすぐ引き取りにくるので終日預けるより好まれ、働く母親に対する『逆差別』が起きた。3歳児の母親らが『なぜ私たちを排除するのか』と抗議して3歳児も対象にしたが、スウェーデンのような国は育児休職が発達しており、働からずに子どもを預けるとお金を少し払う。預けられる時間も少ない。韓国は政治競争をしながら作ったため、真摯な悩みもなくばらまきに近い政策を使ったのだ」。
――全般的に福祉政策に対する利害関係者の参加や理解度が不足していたのではないか。
「西欧の場合、福祉政策はさまざまな社会勢力の対立と闘争と妥協の産物だ。福祉政策が議論された時期は製造業の好況期であり、労働者のパワーが強かった。彼らの強い支持を受けて議会に進出した左派政党は労働者の権益を代弁し、こうした過程を通じて全社会的に福祉政策の適用について議論し妥協する機会があった。ところが韓国は分断国家という限界から左派政党が出現しにくく、福祉政策は主に保守政党や中道政党から出た大統領の意志に基づいて作られた。そのため多様な利害関係者が参加して討論したり妥協して繊細に枠組み作るのが難しかった。時期的にも少し惜しかった。1999年に金大中(キム・デジュン)政権で国民生活保障基本法制定や国民年金改革など重要な骨格が用意されたが、この時はすでに製造業の全盛期が過ぎ、通貨危機と新自由主義導入など労働者勢力が萎縮した時だった。こうした問題が複合的に絡まって労働階級の権益に対する悩みが十分に扱われることができなかった」。
――韓国は福祉後進国なのか。
「1990年に3.1%だったGDP比の福祉支出は2019年には12.2%まで増えた。もちろん韓国の福祉水準は経済発展水準に比べて低いという指摘は依然として有効だが、世界史的に類例がないほど速く福祉政策が膨張した国だ。そして進歩・保守どんな政権になっても福祉拡大基調を遅らせたことはない。対立陣営の政策をひっくり返すこともなかった。こうした連続性は評価できると考える。
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