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「マッコリを知るにつれ韓国に酔う」伝統酒に魅了された日本酒伝導師

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

全州(チョンジュ)マッコリ工場を訪問した在韓日本大使館公報文化院長の中條一夫氏。ネクタイを持ち上げて見せているが、酒を醸造する材料の米と、酒瓶が描かれているからだった。酒文化の探訪ということで、わざわざこのネクタイを選んだとのことだ。チョン・スジン記者

麹を見ながら「これを見てください」と手を差し出した中條氏。チョン・スジン記者

中條氏が自ら作ったドンドン酒を点検している。チョン・スジン記者

在韓日本大使館公報文化院の中條一夫院長の酒に対する愛は格別だ。日本の酒と焼酎に関するソムリエの資格まで持っているということからもその本気度が伺える。外交は、相手の心をつかむ技術であり芸術で、その最高の道具の一つが酒と食文化だと堅く信じている。だからといって彼が大酒飲みという意味ではない。夕食の席では盃を交わしてそれほど経たないうちに顔がほんのりと赤に染まる。その一方で、相手に少しでも日本酒の味や粋を伝えようと努めるのが彼の特徴だ。そのような中條氏が最近耽溺しているものがあるが、それが韓国伝統酒、中でもマッコリだ。

今月3日には多忙な日程の合間に都合をつけて、1泊2日で全羅北道全州(チョルラブクド・チョンジュ)に一人で出張まで行ってきた。最近、ソウルの某韓国伝統酒商店で出会った「マッコリパウダー」という商品に心を奪われたためだ。商品パッケージの後ろに記されていた工場の電話番号にとにかく連絡を入れ、見学日程を決めた。昨年ソウルに赴任してから初めてとなる中條氏の韓国伝統酒探険に同行した。

「突然電話が来てどれほど驚いたことか。どこかの文化院長とだけ聞いていたものの、日本文化を代表する外交官が直接ここまで訪ねてくるとは思いもよりませんでした」。全州徳津区(トクチング)でマッコリ工場兼研究所を運営するチュ・ミンソン代表の言葉だ。チュ代表に韓国マッコリ特有の蒸米と麹、発酵過程を尋ねる中條氏は、一言も聞き逃すまいとメモをしたり映像を撮影したりして情熱をみせた。


「糖化」や人工甘味料「アスパルテーム」など専門用語のオンパレードだったが、すでにソムリエの資格を持つ中條氏にとっては問題ではなかった。発酵に重点を置いたこの工場のマッコリを日本式どぶろくの濁り酒と比較したり、麹と米の配合によって香味はどのように変化するのかなど、専門家顔負けの質問洗礼が続いた。

中條氏は「マッコリ製造の伝統にさまざまなバリエーションをつけようとしているところが印象的」としながら「韓国も日本も伝統文化にはどれも長短所があるものだが、長所を最大化しようとする努力が感じられる」と話した。続いて全州マッコリ通りを訪れ、カジュクナムルのお焼き(チャンチンの若芽を混ぜ込んだチヂミの一種)やネギキムチ、エイ三合(エイの発酵刺身・ゆで豚肉・キムチを一緒に食べる料理)などに肴にマッコリをあれこれと味わった。あらかじめ準備してきた日本酒も1本取り出し、即興で韓日酒文化交流の場が用意されたりもした。

中條氏は最初から酒に一見識があったわけではない。中條氏は福岡県出身で東京大学を卒業後、外交官試験を合格して正統エリート外交官コースを踏んだ模範生だ。その後ベルギーに赴任し、酒を活用した外交に開眼した。

中條氏は「日本酒と食文化を広めたいが、相手構わず『日本のものがいいからとにかく酒を飲んで寿司を食べて』とは言えなかった」とし「欧州のワインと日本の酒を飲み比べながら勉強し、接点を探すことになった」と話した。その途中でソムリエの資格まで取得することになったという。中條氏は「韓国でもマッコリはもちろん、慶州(キョンジュ)法酒などさまざまな伝統酒に対して勉強していく」としながら、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)状況が落ち着き次第、訪問する予定の麹工場や伝統酒名家のリストを教えてくれた。

今回の全州行きでは自らドンドン酒を醸造する体験もした。全州韓屋村(ハノクマウル)の伝統酒博物館でだ。人気ボーイズグループのBTS(防弾少年団)もドンドン酒醸造体験をした場所だ。米粒が壊れないように注意深く手の平で優しく押しながら、麹と均一に混ざるように約30分作業しながらも、中條氏はその間ずっと真剣な眼差しだった。米を軽く発酵させて麹と混ぜ、力強い香りを出す「チャクジュブボン」などの難しい専門用語の説明が続いた。韓国語は流ちょうなほうだが、時には正確な説明を再要請する中條氏が韓国伝統酒博士になるのは時間の問題のようだった。全州特有の酒かすはもちろん、ナシやショウガを入れた全州梨薑酒(イガンジュ)なども同じように少しずつ吟味した。ソムリエがワインを試飲する時のように杯に鼻を近づけて香りを楽しんだ後、酒を口に含んで舌の上で転がしながら酒のテクスチャーを感じた後、喉を通過させる。

博物館関係者は「韓国全体の酒消費量のうち伝統酒は0.4%程度にとどまるのが現実だが、むしろ日本人のほうが韓国伝統酒に関心を持っている姿が印象的」としながら「最近、日本政府が日本酒を国連教育科学文化機関(ユネスコ)文化遺産に登録するという目標を立てたことも、私たち韓国伝統酒関係者にはうらやましい」と話した。実際、日本は日本酒のグローバル化を本格化させている。菅義偉首相が先月28日、国会に出席して「日本酒、焼酎などの文化資源についてユネスコ無形文化遺産への登録を目指す」と言及しながらだ。

その取材中、中條氏は博物館の土産物コーナーで販売している麹商品のパッケージの後ろに書かれた工場電話番号を調べながら「ここにも行きたい」と言いながらメモを取っているところだった。中條氏は「韓国伝統酒を知れば知るほど韓国文化の魅力にさまざまに酔うことになる」とし「今後も韓国伝統酒と日本酒で外交のまた別の道を切り開きたい」と話した。



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