我々はよく「固定観念の奴隷」になったりする。クアッド(日米豪印)加入をめぐる賛否論争でもこうした問題が表れる。現在「クアッドは中国を防ぐための安全保障協力体で、韓国が加入すれば中国の経済報復を受けることになる」という命題が真実のようになっている。
にもかかわらず、加入賛成派はクアッドに入らなければ韓国は米国の2流同盟国に墜落すると警告する。そして「血盟である米国側に立ってこそ北朝鮮と中国の脅威を防ぐことができる」という論理を展開する。反対論者は米中間に挟まれた韓国が一方の肩を持つのは危険だと考える。2016年の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備をめぐる中国側の経済報復の被害が大きかったのは事実だ。それで「戦略的あいまい性」という名でクアッド加入を明らかにしないでおこうと主張する。事実上、参加を拒否するということだ。
では、こうした二分法的な思考は正しいのだろうか。まずクアッドが中国牽制用の安保共同体という認識から見てみよう。バイデン政権の発足以降、クアッドの性格ほど大きく変わったものはない。トランプ政権当時は、クアッドを中国の浮上を防ぐための安保共同体に育てるというのが目標だった。しかし今は変わった。
国家安全保障会議(NSC)のエドガード・ケーガン上級部長(東アジア・オセアニア担当)は7日に開かれたセミナーでこう断言した。「クアッドはアジア版NATOでも安保同盟でもない」と。さらに彼は「ワクチン、気候変動、サイバー安保など公共財的イシューをめぐり協力する連帯」と強調した。米国の構想がこうであれば、韓国が中国のために加入しない理由はない。
さらに注目されるのはクアッドの一つの軸であるインドの立場だ。発表者として参加したインド専門家によると、インドはクアッドが決して集団安保体制に発展することの望まず、いかなる合同軍事訓練にも反対するということだ。さらにインド政府はクアッドの決定が中国に対する独自の外交政策より優先されることはない点を明確にしている。すなわち、インド-中国の関係は自ら調整するということだ。このような場合にクアッドが中国牽制用の安保体制に発展する可能性はほとんどない。
クアッドに加入すれば中国の過酷な報復があるという論理も問いただす必要がある。クアッド創設メンバーのインド・日本はそのままにして韓国だけを攻撃するというのは、中国の立場でも矛盾がある。もちろん、開き直って韓国だけを攻撃する可能性はある。この場合、我々はファーウェイ(華為技術)事業禁止およびコロナ原因調査の主張などで昨年5月から中国の経済報復を受けたオーストラリアの事例を見ればよい。オーストラリアは対中輸出の比率が全体の20%を超えていた国だ。しかし1年間の中国の経済報復にもかかわらず、市場多角化政策などで全体の輸出は2.2%の減少にとどまった。
一方、台湾の場合、昨年の蔡英文総統の「一国両制」拒否発言などで中国と軍事的葛藤まで生じたが、対中輸出額は2019年の918億ドルから昨年は1024億ドルと、むしろ11.5%も増えた。南シナ海で深刻な領有権紛争をしたベトナムも対中貿易が減るどころか増加傾向にある。中国との葛藤が必ずしも経済報復につながるわけではないということだ。
なら、韓国に報復した中国がなぜ台湾やベトナムには特に攻撃をしなかったのか。これは各国に対する認識の違いのためというのが専門家らの見解だ。その間、台湾・ベトナムは中国の圧力に屈しなかった。一方、文在寅(ムン・ジェイン)政権はTHAAD配備で中国の圧力が激しくなると、2017年に康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が「3不」政策を発表した。このため韓国は抑えれば抑えられる国という認識が中国人の脳裏に刻まれるしかない。最近脚光を浴びた「構成主義」理論は、各国に対する認識によって国際政治が進められることを示している。いつまでTHAAD配備、クアッド加入のような主権的事案まで中国の表情を眺めて決めるのだろうか。韓国は扱いやすい国という認識が変わらない限り、中国の干渉から永遠に自由にはなれない。
ナム・ジョンホ/中央日報コラムニスト
にもかかわらず、加入賛成派はクアッドに入らなければ韓国は米国の2流同盟国に墜落すると警告する。そして「血盟である米国側に立ってこそ北朝鮮と中国の脅威を防ぐことができる」という論理を展開する。反対論者は米中間に挟まれた韓国が一方の肩を持つのは危険だと考える。2016年の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備をめぐる中国側の経済報復の被害が大きかったのは事実だ。それで「戦略的あいまい性」という名でクアッド加入を明らかにしないでおこうと主張する。事実上、参加を拒否するということだ。
では、こうした二分法的な思考は正しいのだろうか。まずクアッドが中国牽制用の安保共同体という認識から見てみよう。バイデン政権の発足以降、クアッドの性格ほど大きく変わったものはない。トランプ政権当時は、クアッドを中国の浮上を防ぐための安保共同体に育てるというのが目標だった。しかし今は変わった。
国家安全保障会議(NSC)のエドガード・ケーガン上級部長(東アジア・オセアニア担当)は7日に開かれたセミナーでこう断言した。「クアッドはアジア版NATOでも安保同盟でもない」と。さらに彼は「ワクチン、気候変動、サイバー安保など公共財的イシューをめぐり協力する連帯」と強調した。米国の構想がこうであれば、韓国が中国のために加入しない理由はない。
さらに注目されるのはクアッドの一つの軸であるインドの立場だ。発表者として参加したインド専門家によると、インドはクアッドが決して集団安保体制に発展することの望まず、いかなる合同軍事訓練にも反対するということだ。さらにインド政府はクアッドの決定が中国に対する独自の外交政策より優先されることはない点を明確にしている。すなわち、インド-中国の関係は自ら調整するということだ。このような場合にクアッドが中国牽制用の安保体制に発展する可能性はほとんどない。
クアッドに加入すれば中国の過酷な報復があるという論理も問いただす必要がある。クアッド創設メンバーのインド・日本はそのままにして韓国だけを攻撃するというのは、中国の立場でも矛盾がある。もちろん、開き直って韓国だけを攻撃する可能性はある。この場合、我々はファーウェイ(華為技術)事業禁止およびコロナ原因調査の主張などで昨年5月から中国の経済報復を受けたオーストラリアの事例を見ればよい。オーストラリアは対中輸出の比率が全体の20%を超えていた国だ。しかし1年間の中国の経済報復にもかかわらず、市場多角化政策などで全体の輸出は2.2%の減少にとどまった。
一方、台湾の場合、昨年の蔡英文総統の「一国両制」拒否発言などで中国と軍事的葛藤まで生じたが、対中輸出額は2019年の918億ドルから昨年は1024億ドルと、むしろ11.5%も増えた。南シナ海で深刻な領有権紛争をしたベトナムも対中貿易が減るどころか増加傾向にある。中国との葛藤が必ずしも経済報復につながるわけではないということだ。
なら、韓国に報復した中国がなぜ台湾やベトナムには特に攻撃をしなかったのか。これは各国に対する認識の違いのためというのが専門家らの見解だ。その間、台湾・ベトナムは中国の圧力に屈しなかった。一方、文在寅(ムン・ジェイン)政権はTHAAD配備で中国の圧力が激しくなると、2017年に康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が「3不」政策を発表した。このため韓国は抑えれば抑えられる国という認識が中国人の脳裏に刻まれるしかない。最近脚光を浴びた「構成主義」理論は、各国に対する認識によって国際政治が進められることを示している。いつまでTHAAD配備、クアッド加入のような主権的事案まで中国の表情を眺めて決めるのだろうか。韓国は扱いやすい国という認識が変わらない限り、中国の干渉から永遠に自由にはなれない。
ナム・ジョンホ/中央日報コラムニスト
この記事を読んで…