第2話で打ち切られたSBSのドラマ『朝鮮駆魔師』をめぐり、歴史学界や放送学界から「過度な愛国主義」「作家の想像力制限」など批判の声が登場している。匿名のある文化コンテンツ関連大学教授は「深刻だと感じている。ただ世論の反発が恐ろしく黙っている雰囲気」と伝えた。
こうした中、カトリック大学国史学科のキ・ギョンリャン教授は28日に自身のブログを通じ「『朝鮮駆魔師』を歴史わい曲と見るのは難しい。今回の事件は今後の創作活動萎縮など韓国社会に大きな傷として残るだろう」と主張した。キ教授は『万人万色歴史工作団』『欲望越しの韓国古代史』などの本を通じ大衆と学界の間隙を狭める試みをしてきた学者だ。
彼はなぜ世論に反する主張を公開的にしたのだろうか。30日に彼と会い話を聞いてみた。以下は一問一答。
――なぜ歴史わい曲ではないと考えるのか
「『朝鮮駆魔師』に全く問題がないわけではない。ドラマの背景を朝鮮初期としたが小道具などのディテールをファンタジーというジャンルの裏に隠れて大雑把に感じだけ出るようにしてごまかした。だが『朝鮮駆魔師』が失敗したさまざまな要素は決定的なものではない。例えば国境地域で中国の食べ物が出てきたのは制作スタッフの釈明が理解できる。義州(ウィジュ)は韓半島(朝鮮半島)と遼東をつなぐ交通と貿易の拠点だった。外国人の往来が多い国境周辺地域に外国の食べ物が出てくるのはおかしくない。チャジャンミョンも近代になり中国人の港湾労働者が集まった仁川(インチョン)で生まれた。遊び仲間のせりふも身分差別に対する憤怒のために崔瑩(チェヨン)ら高麗支配層全体を嫌うというものだが、ここに『崔瑩冒涜』というものさしを突きつけるのはあきれる。世宗(セジョン)に対しても「大胆にもわれらの世宗大王を?」としながら偉大で神聖な姿以外にいかなる再構成や再解釈を容認しないということは理解できない」
――実在した人物をめぐり実際にしていない言動を入れたのが問題という指摘がある。
「米国でリンカーンは偉大な指導者としてあがめられる。だが彼が実は吸血鬼ハンターで、斧で吸血鬼を捕まえて回り、さらに最後には自身が吸血鬼になるという設定の小説と映画も作られた。自由民主主義社会でこうしたものを『歴史わい曲』と批判するならば滑稽なことだ。以前にドラマ『風の絵師』では申潤福(シン・ユンボク)を女性と設定した。実際の歴史とは違う、話にならない歪曲だ。しかし当時これを打ち切らせただろうか? 映画『天軍』では武科に落ちた李舜臣(イ・スンシン)が放蕩な暮らしをしたが後に覚醒し英雄的人物になった。創作物でこの程度のキャラクター設定もできなければその方がさらに問題だ」
――歴史専攻者として『朝鮮駆魔師』が既存の歴史ドラマと変わらないということなのか?
「『朝鮮駆魔師』に突きつけたものさしを使えば韓国で生き残れる歴史ドラマはない。『朱蒙』の時代的背景は紀元前なのに火薬武器が出てきた。『太王四神記』は朱雀と青竜などが出るが実在した人物である広開土大王が登場した。実在した人物を使って創作しないでくれというならばこれも問題にしなければならない。そのほかにも『善徳女王』『宮廷女官チャングムの誓い』など多くの歴史ドラマも同様だ。私が見るに『朝鮮駆魔師』はフィクションだという点を明確にしており、以前にやっていた通りにやったのに次元が異なる袋叩きを受けている」
――『朝鮮駆魔師』で爆発した理由は何と考えるか?
「中国に対して積もり積もったものなどだ。キムチと韓服が中国のものといってみたり、高句麗が中国の歴史といってみたり、韓国の歴史と文化を奪っていくという印象を与えた。また、ハリウッドでも見られる現象だが、中国資本がコンテンツに投入され間接広告など中国の影響力が間欠的に現れコンテンツの質を落とさせるケースが多い。そうした点から人々が歴史ドラマで期待する良いモデルは『キングダム』と考える。ゾンビに対する演技も良かったが、多く話題になったのが朝鮮の笠など服飾だ。海外でも多様で美しいといわれ韓国人も喜んだ。韓国が作ったコンテンツに韓国の良さや美しさを盛り込んで自慢したい欲求がある。『朝鮮駆魔師』でもそういうことを期待して見たのに、中国の食べ物を食べ中国式小道具が出てきたのだ。韓国の食べ物と文化を宣伝すべきなのにこうしたものが出てくるので論理的ではないが「中国が関与し韓国のコンテンツをぶち壊した」というフレームが作られ、すべてのものが気に入らなくなったのだ」
――中国に対する危機感のようなものを理解しなければならないという声もある。
「考証をしっかりすればよいが間違っていたら批判すれば良い。研究者が別のコンテンツを作って反論する方法もある。しかし実力行使を通じて存在すらできなくさせてしまい青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)に請願をする。自身が持っている倫理的当為と嗜好に合わないと判断したコンテンツに対し愛国主義に基づいて非難することをどのようにみるべきだろうか。制作者と俳優を威嚇してぞろぞろ反省文を書かせ、作家の前作ドラマに出演した俳優にまで火の粉がふりかかり広告が取り消される危機に置かれる。こうした姿は私たちが批判する中国の一部の態度と大きく変わらない。彼らも愛国すると言いながら、危機感からそのような行動をする」
――他の研究者も同じ考えか?
「少し前に歴史を専攻する若い研究者同士のグループチャットでこの問題について話を交わした。今回の事態に対し心配する声が大きかった。このままならば今後歴史ドラマは実在した人物や時代は扱いにくいだろう。おそらく『キングダム』のように仮想世界以外では作りにくくなるが、韓国コンテンツとしては途轍もない損失だ。私たちが作れるコンテンツの可能性を排除して自ら足に鎖をはめる格好だ。歴史研究者として『歴史』が創作活動を窒息させる道具として活用されるのを見守るのは苦しいことだ」。
こうした中、カトリック大学国史学科のキ・ギョンリャン教授は28日に自身のブログを通じ「『朝鮮駆魔師』を歴史わい曲と見るのは難しい。今回の事件は今後の創作活動萎縮など韓国社会に大きな傷として残るだろう」と主張した。キ教授は『万人万色歴史工作団』『欲望越しの韓国古代史』などの本を通じ大衆と学界の間隙を狭める試みをしてきた学者だ。
彼はなぜ世論に反する主張を公開的にしたのだろうか。30日に彼と会い話を聞いてみた。以下は一問一答。
――なぜ歴史わい曲ではないと考えるのか
「『朝鮮駆魔師』に全く問題がないわけではない。ドラマの背景を朝鮮初期としたが小道具などのディテールをファンタジーというジャンルの裏に隠れて大雑把に感じだけ出るようにしてごまかした。だが『朝鮮駆魔師』が失敗したさまざまな要素は決定的なものではない。例えば国境地域で中国の食べ物が出てきたのは制作スタッフの釈明が理解できる。義州(ウィジュ)は韓半島(朝鮮半島)と遼東をつなぐ交通と貿易の拠点だった。外国人の往来が多い国境周辺地域に外国の食べ物が出てくるのはおかしくない。チャジャンミョンも近代になり中国人の港湾労働者が集まった仁川(インチョン)で生まれた。遊び仲間のせりふも身分差別に対する憤怒のために崔瑩(チェヨン)ら高麗支配層全体を嫌うというものだが、ここに『崔瑩冒涜』というものさしを突きつけるのはあきれる。世宗(セジョン)に対しても「大胆にもわれらの世宗大王を?」としながら偉大で神聖な姿以外にいかなる再構成や再解釈を容認しないということは理解できない」
――実在した人物をめぐり実際にしていない言動を入れたのが問題という指摘がある。
「米国でリンカーンは偉大な指導者としてあがめられる。だが彼が実は吸血鬼ハンターで、斧で吸血鬼を捕まえて回り、さらに最後には自身が吸血鬼になるという設定の小説と映画も作られた。自由民主主義社会でこうしたものを『歴史わい曲』と批判するならば滑稽なことだ。以前にドラマ『風の絵師』では申潤福(シン・ユンボク)を女性と設定した。実際の歴史とは違う、話にならない歪曲だ。しかし当時これを打ち切らせただろうか? 映画『天軍』では武科に落ちた李舜臣(イ・スンシン)が放蕩な暮らしをしたが後に覚醒し英雄的人物になった。創作物でこの程度のキャラクター設定もできなければその方がさらに問題だ」
――歴史専攻者として『朝鮮駆魔師』が既存の歴史ドラマと変わらないということなのか?
「『朝鮮駆魔師』に突きつけたものさしを使えば韓国で生き残れる歴史ドラマはない。『朱蒙』の時代的背景は紀元前なのに火薬武器が出てきた。『太王四神記』は朱雀と青竜などが出るが実在した人物である広開土大王が登場した。実在した人物を使って創作しないでくれというならばこれも問題にしなければならない。そのほかにも『善徳女王』『宮廷女官チャングムの誓い』など多くの歴史ドラマも同様だ。私が見るに『朝鮮駆魔師』はフィクションだという点を明確にしており、以前にやっていた通りにやったのに次元が異なる袋叩きを受けている」
――『朝鮮駆魔師』で爆発した理由は何と考えるか?
「中国に対して積もり積もったものなどだ。キムチと韓服が中国のものといってみたり、高句麗が中国の歴史といってみたり、韓国の歴史と文化を奪っていくという印象を与えた。また、ハリウッドでも見られる現象だが、中国資本がコンテンツに投入され間接広告など中国の影響力が間欠的に現れコンテンツの質を落とさせるケースが多い。そうした点から人々が歴史ドラマで期待する良いモデルは『キングダム』と考える。ゾンビに対する演技も良かったが、多く話題になったのが朝鮮の笠など服飾だ。海外でも多様で美しいといわれ韓国人も喜んだ。韓国が作ったコンテンツに韓国の良さや美しさを盛り込んで自慢したい欲求がある。『朝鮮駆魔師』でもそういうことを期待して見たのに、中国の食べ物を食べ中国式小道具が出てきたのだ。韓国の食べ物と文化を宣伝すべきなのにこうしたものが出てくるので論理的ではないが「中国が関与し韓国のコンテンツをぶち壊した」というフレームが作られ、すべてのものが気に入らなくなったのだ」
――中国に対する危機感のようなものを理解しなければならないという声もある。
「考証をしっかりすればよいが間違っていたら批判すれば良い。研究者が別のコンテンツを作って反論する方法もある。しかし実力行使を通じて存在すらできなくさせてしまい青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)に請願をする。自身が持っている倫理的当為と嗜好に合わないと判断したコンテンツに対し愛国主義に基づいて非難することをどのようにみるべきだろうか。制作者と俳優を威嚇してぞろぞろ反省文を書かせ、作家の前作ドラマに出演した俳優にまで火の粉がふりかかり広告が取り消される危機に置かれる。こうした姿は私たちが批判する中国の一部の態度と大きく変わらない。彼らも愛国すると言いながら、危機感からそのような行動をする」
――他の研究者も同じ考えか?
「少し前に歴史を専攻する若い研究者同士のグループチャットでこの問題について話を交わした。今回の事態に対し心配する声が大きかった。このままならば今後歴史ドラマは実在した人物や時代は扱いにくいだろう。おそらく『キングダム』のように仮想世界以外では作りにくくなるが、韓国コンテンツとしては途轍もない損失だ。私たちが作れるコンテンツの可能性を排除して自ら足に鎖をはめる格好だ。歴史研究者として『歴史』が創作活動を窒息させる道具として活用されるのを見守るのは苦しいことだ」。
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