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【コラム】文大統領のレームダックが始まるのか

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は一度決心すれば考えを簡単には曲げない。周囲の人たちによると、その考えを変える魔法が一つだけあるという。「そうすれば政権の再創出が難しくなりそうです」という表現だ。14年前の「親盧廃族」トラウマに触れるのだ。昨日、文大統領は「LH(韓国土地住宅公社)事態で誠実に暮らしている国民に大きな虚脱感と失望を与えた」と陳謝した。民主弁護士会・参与連帯の暴露から2週間後、そして9回目の公式言及で初めて出てきた謝罪だ。誰かが「LHの謝罪なしにソウル・釜山(プサン)市長選挙は厳しい」と建議したのではないだろうか。

LH事態はチョ・グク事態と比較すると全く違う状況だ。以前なら進歩側の「ごまかし」と陣営対決で簡単に制圧していたはずだ。卞彰欽(ビョン・チャンフム)国土部長官がラジオ番組に出て「保守政権当時も不動産投機があったが、我々だけが悔しい思いをさせられる」と「被害者コスプレ」をすれば、キム・オジュン氏が「何かにおう」という陰謀説で相槌を打ったはずだ。柳時敏(ユ・シミン)氏も同じだ。彼は東洋大コンピューター証拠の隠滅について「むしろ検察がいたずらできないようにした証拠保全」と発言したことがある。今回も同じ論理で「財閥のような民間の不動産投機より、むしろ公企業LH職員の投機がはるかによい」と言い張っていたかもしれない。

青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)と民主党にとってLH事態は非常に厄介だ。同じ側の民主弁護士会と参与連帯が暴露したため反撃するのが容易でない。さらに「不動産投機との戦争では決して負けない」(2020年の新年の辞)、「不動産一つは自信がある。狂ったような家賃もわが政権ではない」(2019年11月の国民との対話)と発言した文大統領の大口が逆風にさらされている。


このため左派陣営の柳時敏氏、キム・オジュン氏のような選手が口を閉じて黙っている。さらに文大統領の熱烈支持者もコロナのためか活発でない。今回のLH事態でレームダックの不吉な兆候がちらつくのもこのためだ。以前ならろうそくを持って光化門(クァンファムン)に集まり「私が卞彰欽だ」「私たちがLHだ」と叫んでいたに違いない。今はむしろ正反対だ。ネット上では「コロナ事態でなければ週末ごとにろうそく集会と弾劾があるはず。コロナに救われたと思え。あ、ところでコロナワクチンはまともに導入されたのか」と嘲弄する保守側のコメントが大量に書き込まれている。

青瓦台と民主党は来月の補欠選挙を控え、不動産問題の怒りを収拾するのに忙しい。世論調査をみると、釜山の加徳島(カドクド)新空港は大統領の胸だけが躍っているようだ。ソウルでの公共中心の住宅供給案も力を発揮できずにいる。安哲秀(アン・チョルス)候補、呉世勲(オ・セフン)候補が一本化する場合、与党候補は10ポイント以上の差をつけられる。与党はホ・ギョンヨン式の「無鉄砲」公約がうらやましいかもしれない。例えば釜山に大胆に「1+1の新空港2つ」をプレゼントし、ソウルには「全ソウル市民をLH職員化する」というような破格的公約の誘惑のことだ。

親文派も深刻性を感じたのか、最後の防御ラインを文大統領と梁山(ヤンサン)の私邸に後退させた。盧英敏(ノ・ヨンミン)元秘書室長は「保守野党が『烽下村=華麗な豪邸』フレームを文大統領にかぶせる」と反発した。尹建永(ユン・ゴンヨン)民主党議員も「(李明博元大統領の私邸の)江南(カンナム)1坪と田舎の梁山1坪が同じなのか」と反撃した。しかしあまりにも守勢に追い込まれ、主君を守るのも難しい雰囲気だ。

文大統領が梁山私邸批判に「偏狭で恥ずかしいこと」と述べたのは過敏反応とみられる。国民の立場では李明博(イ・ミョンバク)元大統領、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の江南の私邸の面積や価格などを問いただしているのではない。不動産政策の失敗ですべての社会を苦痛と怒りの中に導いておきながら、自分だけは安らかに梁山の私邸に戻ろうとする印象自体が受け入れがたいのだ。今からでも「農地形質変更など不適切な部分があったのなら正す」と言うのが礼儀ではないだろうか。

退任を1年後に控えた文大統領が目を向けるべき人物がいる。スウェーデンのタゲ・エルランデル元首相だ。イ・ジョンギュ駐スウェーデン大使が先日、SNSにこのような内容を載せた。

「彼は運動圏出身だったが、首相を23年間を務めながら各界各層の人たちと会い、対話と妥協をした。第11回選挙で勝利したが、権力のトップから退いた。1969年に得票率50%以上で圧勝すると『今は新しい人物が必要だ』と言って自ら降りた。彼は首相官邸で公式執務だけをし、賃貸住宅で暮らした。実際、首相から退くと住む家がなかったのだ。これを知った国民が閑静な田舎の村に別荘を建てた。55年間共に過ごした夫人アイナも質素だった。夫は首相だったが、高校の化学の教師を続けた。彼女は夫が退任した後、一束のボールペンを持って総務担当長官を訪ねて渡した。ボールペンには『スウェーデン政府』のマークが刻まれていた。彼女は『夫が首相の時に使ったボールペンだが、もう政府に返すのがよい』と語った」。

文大統領は2019年6月、スウェーデンを国賓訪問した。なら、スウェーデン国民が最も尊敬するというエルランデルの話に接しているはずだ。我々はあまりにも多くの元大統領が弾劾や監獄を経験する悲劇を見てきた。もう我々も一度くらいはエルランデルのように立派な後ろ姿の退任大統領を見てみたいと言えば、それはぜいたくなのだろうか。

イ・チョルホ/中央日報コラムニスト



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