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【時視各角】文大統領の言葉が虚しく聞こえる理由

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
『ローマ人の物語』の著書・塩野七生はカイザルを「私益を公益と巧妙に結びつける能力の所有者」と評価した。たとえばこうだ。カイザルは大隊長や百人隊長から金を借りて兵士にボーナスとして与える。総司令官の善心に感激した兵士が忠誠を誓うのは当然だ。指揮官はどうか。お金が戻ってこない事態にならないようやはり熱心に戦う。最近なら間違いなく涜職行為だが、当時にそのような基準があるだろうか。それなりに一石二鳥の妙手だ。

2000年余り過ぎた今、韓国社会は逆に公益を私益に結びつける能力がすごい。選挙を控えてさまざまな名目で税金をばらまく行為などが代表的な例だ。先日、選挙中立の義務がある大統領が加徳島(カドクド)沖で「胸が踊る」と語ったのもその例になるだろう。カイザルとは違う。公益・私益を結びつける方向も逆であり、技量も一つ下だ。あまりにも内心が見え透いているため「巧妙」とは言いがたい。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が韓国土地住宅公社(LH)投機疑惑に対して連日、悲壮なメッセージを投げかけている。「容認できない不正行為」「抜本的根絶」など語彙も強い。専売特許のような「公正」という言葉も動員した。しかしどこか虚しい。水に油が浮くように上辺だけという感じだ。理由は簡単だ。公益と私益の境界があいまいどころか、完全に混ぜてしまった与党と側近の行為に対しては、一度もまともに問いただしたことがないからだ。指先の膿も一度も出せず、あたかも他人事を話すように国策公企業を叱責しても国民に受け入れられるだろうか。金泳三(キム・ヨンサム)元大統領は問題が発生すればひとまず長官から切った。政治的ショーマンシップという批判もあったが、今の国民の怒りはそのような生贄でも望んでいるのかもしれない。


大統領は先日までLHの責任者だった卞彰欽(ビョン・チャンフム)国土部長官に「問題を非常に感受性があるように受け止めなければいけない」と指示した。いったい何を言いたいのか。「国土部が加徳島空港に反対するように映って申し訳ない」と述べたように「LHに不正があるように映って申し訳ない」で済ませようということなのか。「(スクリーンドア事故にあった)その子さえ気をつけていれば何もなかったかもしれない」という発言の主人公にどんな感受性を期待できるのか。

今回の事態を見て特に引っかかる点がある。匿名性に任せた一部のLH職員の反応だ。「これは我々の会社だけの特典であり福祉なのに、これが問題になればこの会社に来るだろうか」。服従と日常で悪が平凡になるように、選民意識と慣行の中で倫理感覚がまひした。芋づるよりも複雑になって出てくる投機疑惑がその証拠だ。「与党の政治家が我々に情報を要求して投機したのも見たが、なぜ我々だけを吊るし上げるのか」という反応もあった。現政権の不動産政策設計者は明らかに「不動産は終わった」と言ったが、これはどういうことなのか。

清渓(チョンゲ)財団、K財団、ミル財団。公益を口実にした私益だと非難された前政権の遺跡だ。文在寅政権はこうした遺産を克服するという態度で出発した。期待が裏切りに変わるまで長い時間はかからなかった。あらゆる既得権で「家族愛」を実践した長官一家、息子の軍休暇特恵問題が浮上した後任の長官、正義という名で慰安婦被害者を利用した市民運動家、開発情報を利用した観光地投資を文化遺産保護だと言い張った与党議員。大統領がそのような側近に対して「心の借金」があると告白した瞬間、公正という言葉は汚染して輝きを失った。

急騰した住宅価格、消えた職場に戸惑う人たちは、国家が自分の生活の責任を負えないことをすでに悟った。政府に能力がなかったためだと考えたが、繰り返される失策を見ていると今ではその意志さえも疑わしくなった。追い込まれた人たちは四字真言を覚える。各・自・図・生(=各自が生きる道を探す)。この道では公益-私益の境界に目を向ける余裕がない。大きくなった政府で機会も増えた。機会はチャンスだ。

イ・ヒョンサン/中央日報コラムニスト



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