ミャンマー軍部のクーデターでインド洋周辺の安保戦略環境が急変している。長く中国と密着してきた軍部が再び権力を掌握しただけに米国の苦心が深まった。
すぐに制裁カードを切る場合、ミャンマー軍部の中国癒着につながりかねないという懸念からだ。中国の宿願であるミャンマーを通じたインド洋進出がなされる場合、バイデン政権が推進するインド太平洋戦略と、日米豪印4カ国の枠組みである「クアッド」には悪材料になる。
ひとまず米国はミャンマー軍部のアウン・サン・スー・チー国家顧問追放を「クーデター」と公式に規定し圧迫に出た。同時に過去のオバマ政権時代にミャンマー民主化に関与した経験を基に軍部に向けアメとムチを駆使する考えだが、軍部がすぐに米国側に付くかは疑問だ。韓国軍事問題研究院によると、これまでミャンマーは米中が協力国確保競争に出ると米中双方から利益を取ってきたためだ。
◇軍部に秘密資金用意した中国
まず中国に関する限りミャンマー軍部の利権がかかわっている。ミャンマー経済を掌握している退役軍人らの国営企業であるミャンマー・エコノミック・ホールディングス(UMEHL)をはじめ軍部は宝石や木材など重要な事業に手を付けている。
中国資本は制裁で足を縛られた軍部のこうした利権事業を後見してきた。国際社会の要求にもかかわらず、中国当局は関連取引量もまともに公開していない。韓国外国語大学東南アジア研究所のチャン・ジュンヨン研究員は、「中国が軍部の秘密資金調達を保護したもの。軍部が基本的に中国に傾くのは戦略的な選択」と指摘した。続けて「事実、軍部の軍事活動は利権を作るための副業にすぎない」と話した。
英国際戦略問題研究所(IISS)の昨年の世界軍事力報告書「ミリタリー・バランス」によると、ミャンマー軍は40万6000人という大規模兵力を持っている。だが37万5000人の陸軍中心で、「クーデターに向けた国内用」という評価が支配的だ。
2051キロメートルに達する海岸線がインド洋と接しているのに海軍兵力は1万6000人水準だ。また、主力である中国製警備艦艇は老朽化が深刻で有名無実な状況だ。
こうした弱点を突いて中国はミャンマー軍部に各種軍事協力を提案してきた。中国がミャンマーの島にレーダー基地を秘密裏に建設する代わり情報共有を受けて米軍と協力するインド軍の動向を綿密に探っているとの疑惑まで出ているほどだ。
◇それでも根深い「反中感情」
ミャンマー軍部がひたすら中国側なのではない。中国はこれまでミャンマーの拠点港湾に人民解放軍海軍の駐留を望んできた。インド北東部をつなぐ物流拠点であるシットウェ港、雲南省までつながる原油・天然ガスパイプラインの起点であるチャウピュー港がターゲットで、中国の海洋輸送路確保に向けた「真珠のネックレス戦略」の一環だった。それだけ中国の経済・安全保障的利益がかかっているという意味だ。
だがミャンマーは外国軍の駐留を禁止した憲法を挙げてこれを拒否した。背景には根深いミャンマーの反中感情がある。
チャン研究員は「1990年代の軍事独裁時代に中国資本と人材が入り込み凶悪犯罪など社会問題を引き起こしてミャンマー国内の反中感情が広がった。カンボジア、ラオス、スリランカなど周辺国が中国資本による『負債の泥沼』にはまったのを目撃し警戒感がさらに大きくなった」と説明した。
これは中国に対する信頼度低下につながっている。一例として中国がミャンマーに新型コロナウイルスワクチンを無償提供する意思を明らかにしたが、ミャンマー政府はこれを事実上断った。代わりにインド製のアストラゼネカのワクチンを輸入して先月27日から接種を始めた。
何よりも国境地域の中国系少数民族反乱軍問題が軍部が中国を警戒する最も大きい理由だ。軍部は反乱軍の武装解除を強く望むが、解決がうまくできていない背景に中国の支援があるとみている。中国は仲裁を自任するが、ミャンマー軍部の考えは違う。両国間の「内政不干渉」の原則が揺らげば中国の影響がさらに強まりかねないという懸念からだ。
◇「反中感情」狙う米国
バイデン政権はこうした「反中感情」を狙っている。ミャンマー軍部が中国に頼りながらも中国に門戸を大きく開くことを恐れているだけに中国牽制のレバレッジとして米国が近付く戦略だ。
すでに2012年に当時のオバマ大統領がミャンマーを訪れ両国関係の改善を誇示した経験もある。もちろん今回はこれまで米国が取ってきたミャンマー民主化政策に逆行する軍部クーデターが起きただけにミャンマーに対し制裁をちらつかせようとするとの観測が多い。韓国軍事問題研究院のキム・ヨルス安全保障戦略室長は「人権大統領のイメージが強いバイデン氏が世界のリーダーシップを確保するためにはミャンマー問題で後退するのは難しいだろう。制裁を回避するのは難しそうだ」と予想した。
ただしオバマ政権時代に「アメとムチ」を同時に活用し軍部の民政委譲を引き出した経験がバイデン政権の政策に反映されるという観測も出ている。チャン研究員は「制裁に進む場合、軍部が国連安全保障理事会常任理事国である中国にさらに頼ることが明らかなのでバイデン政権も適切に水位調節をするだろう」と予想した。
米国のインド太平洋戦略とクアッドのパートナーであるインドの役割論も浮上する。ミャンマーとインドは歴史的に犬猿の仲だが、中国を警戒するミャンマーがインドを適切に活用しているという点からだ。インドが自国の状況も急なのに新型コロナウイルスワクチンを融通したのも対中牽制という解釈が出ている。
すぐに制裁カードを切る場合、ミャンマー軍部の中国癒着につながりかねないという懸念からだ。中国の宿願であるミャンマーを通じたインド洋進出がなされる場合、バイデン政権が推進するインド太平洋戦略と、日米豪印4カ国の枠組みである「クアッド」には悪材料になる。
ひとまず米国はミャンマー軍部のアウン・サン・スー・チー国家顧問追放を「クーデター」と公式に規定し圧迫に出た。同時に過去のオバマ政権時代にミャンマー民主化に関与した経験を基に軍部に向けアメとムチを駆使する考えだが、軍部がすぐに米国側に付くかは疑問だ。韓国軍事問題研究院によると、これまでミャンマーは米中が協力国確保競争に出ると米中双方から利益を取ってきたためだ。
◇軍部に秘密資金用意した中国
まず中国に関する限りミャンマー軍部の利権がかかわっている。ミャンマー経済を掌握している退役軍人らの国営企業であるミャンマー・エコノミック・ホールディングス(UMEHL)をはじめ軍部は宝石や木材など重要な事業に手を付けている。
中国資本は制裁で足を縛られた軍部のこうした利権事業を後見してきた。国際社会の要求にもかかわらず、中国当局は関連取引量もまともに公開していない。韓国外国語大学東南アジア研究所のチャン・ジュンヨン研究員は、「中国が軍部の秘密資金調達を保護したもの。軍部が基本的に中国に傾くのは戦略的な選択」と指摘した。続けて「事実、軍部の軍事活動は利権を作るための副業にすぎない」と話した。
英国際戦略問題研究所(IISS)の昨年の世界軍事力報告書「ミリタリー・バランス」によると、ミャンマー軍は40万6000人という大規模兵力を持っている。だが37万5000人の陸軍中心で、「クーデターに向けた国内用」という評価が支配的だ。
2051キロメートルに達する海岸線がインド洋と接しているのに海軍兵力は1万6000人水準だ。また、主力である中国製警備艦艇は老朽化が深刻で有名無実な状況だ。
こうした弱点を突いて中国はミャンマー軍部に各種軍事協力を提案してきた。中国がミャンマーの島にレーダー基地を秘密裏に建設する代わり情報共有を受けて米軍と協力するインド軍の動向を綿密に探っているとの疑惑まで出ているほどだ。
◇それでも根深い「反中感情」
ミャンマー軍部がひたすら中国側なのではない。中国はこれまでミャンマーの拠点港湾に人民解放軍海軍の駐留を望んできた。インド北東部をつなぐ物流拠点であるシットウェ港、雲南省までつながる原油・天然ガスパイプラインの起点であるチャウピュー港がターゲットで、中国の海洋輸送路確保に向けた「真珠のネックレス戦略」の一環だった。それだけ中国の経済・安全保障的利益がかかっているという意味だ。
だがミャンマーは外国軍の駐留を禁止した憲法を挙げてこれを拒否した。背景には根深いミャンマーの反中感情がある。
チャン研究員は「1990年代の軍事独裁時代に中国資本と人材が入り込み凶悪犯罪など社会問題を引き起こしてミャンマー国内の反中感情が広がった。カンボジア、ラオス、スリランカなど周辺国が中国資本による『負債の泥沼』にはまったのを目撃し警戒感がさらに大きくなった」と説明した。
これは中国に対する信頼度低下につながっている。一例として中国がミャンマーに新型コロナウイルスワクチンを無償提供する意思を明らかにしたが、ミャンマー政府はこれを事実上断った。代わりにインド製のアストラゼネカのワクチンを輸入して先月27日から接種を始めた。
何よりも国境地域の中国系少数民族反乱軍問題が軍部が中国を警戒する最も大きい理由だ。軍部は反乱軍の武装解除を強く望むが、解決がうまくできていない背景に中国の支援があるとみている。中国は仲裁を自任するが、ミャンマー軍部の考えは違う。両国間の「内政不干渉」の原則が揺らげば中国の影響がさらに強まりかねないという懸念からだ。
◇「反中感情」狙う米国
バイデン政権はこうした「反中感情」を狙っている。ミャンマー軍部が中国に頼りながらも中国に門戸を大きく開くことを恐れているだけに中国牽制のレバレッジとして米国が近付く戦略だ。
すでに2012年に当時のオバマ大統領がミャンマーを訪れ両国関係の改善を誇示した経験もある。もちろん今回はこれまで米国が取ってきたミャンマー民主化政策に逆行する軍部クーデターが起きただけにミャンマーに対し制裁をちらつかせようとするとの観測が多い。韓国軍事問題研究院のキム・ヨルス安全保障戦略室長は「人権大統領のイメージが強いバイデン氏が世界のリーダーシップを確保するためにはミャンマー問題で後退するのは難しいだろう。制裁を回避するのは難しそうだ」と予想した。
ただしオバマ政権時代に「アメとムチ」を同時に活用し軍部の民政委譲を引き出した経験がバイデン政権の政策に反映されるという観測も出ている。チャン研究員は「制裁に進む場合、軍部が国連安全保障理事会常任理事国である中国にさらに頼ることが明らかなのでバイデン政権も適切に水位調節をするだろう」と予想した。
米国のインド太平洋戦略とクアッドのパートナーであるインドの役割論も浮上する。ミャンマーとインドは歴史的に犬猿の仲だが、中国を警戒するミャンマーがインドを適切に活用しているという点からだ。インドが自国の状況も急なのに新型コロナウイルスワクチンを融通したのも対中牽制という解釈が出ている。
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