ドナルド・トランプ米国大統領
イレーン・チャオ運輸長官は7日(現地時間)、前日起こった議会内暴力を理由に辞任を発表した。チャオ長官は書面で「非常に衝撃的で、完全に回避可能だった出来事」とし、同問題が「看過できないほど、深い遺憾を感じる」と発表した。チャオ長官は議会占拠事件後に辞意を表明したトランプ政権閣僚では最高位にあたる。
中国系のチャオ長官は、議会内の共和党の第一人者、ミッチ・マコネル上院院内代表の夫人だ。マコネル代表は、過去4年間トランプ大統領に同調してきたが、議会のバイデン候補の勝利確定を前に立場を変えた。共和党の一部議員がバイデン候補の勝利確定を阻止しようとする動きを見せると、反対の立場を明らかにした。
マット・ポッティンガーホワイトハウス国家安保副補佐官も、議会占拠事件を理由に辞意を表明したと公営放送NPRなどが報じた。ポッティンガー副補佐官は国家安全保障会議(NSC)アジア担当上級補佐官としてトランプ政権に合流し、北朝鮮の核と韓半島(朝鮮半島)問題を担い、2019年にNSCのナンバー2に昇進した。
昨年、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)が米国に上陸したとき、中心的参謀の中で真っ先に深刻さを見抜き、中国と欧州からの米国入国を禁止し、ホワイトハウスに新型コロナタスクフォース(TF)を設置するなど対応を主導した。
ホワイトハウスの報道官を務めたメラニー・トランプ夫人の秘書室長を務めてきたステファニー・グリシャム氏、ホワイトハウス秘書室長を務めたミック・マルバニー北アイルランド特使も辞任を表明した。ライアン・タリーNSC欧州・ロシア担当シニアディレクター、サラ・マシューズ副報道官も辞任したとフォックスニュースが伝えた。
一部の長官は、辞意は表明していないものの、暴力事件を強く糾弾した。クリストファー・ミラー国防長官代行は、声明で議会の暴力事件を「憲法の原則と民主主義に反する行為」と強く非難し、「20日、ジョー・バイデン次期大統領に平和的に権力移譲を行う」と明らかにした。
チャド・ウルフ国土安全保障省長官代行は暴力を「悲劇的で不快感な出来事」と批判しつつ、トランプ大統領も糾弾に賛同すべきだと促した。数時間後、トランプ大統領はウルフ氏の長官指名を撤回した。
史上初の議会占拠事件で、トランプ大統領の大統領選挙に対する不服が度を超えているという認識が広がり、辞任する官僚はさらに増えるものと見られる。しかし、トランプ政権任期終了をわずか13日を残して辞任することは、国家安全保障に空白をもたらすだけでなく、滞りない政権移譲を妨げるという指摘も出ている。
ロバート・オブライエン国家安全保障補佐官をはじめとするホワイトハウス参謀が辞任を検討していることが分かり、マイク・リー上院議員をはじめとする共和党議員が慰留しているとワシントンポスト(WP)が伝えた。CNNは、マイク・ポンペオ国務長官とジョン・ラトクリフ国家情報局長などにも辞任してはいけないと説得する電話が相次いでいると伝えた。
トランプ政権閣僚の辞任や大統領選挙不服に対する批判が遅すぎるという指摘も出ている。トランプ氏の大統領選挙圧勝主張を黙認したり不服に同調していたのに、今になって大統領と決別するのが適切なのかということだ。
むしろ、バイデン次期政権への引き継ぎを妨害するという批判だ。これを認識したように、チャオ長官は書面で後任のピート・ブティジェッジ長官指名者の業務引継ぎを助けると述べた。チャオ長官はトランプ政権の任期終了を9日後に控えた11日、辞任する。
トランプ大統領が支持者議会乱入を扇動したという批判が広がり、大統領に責任を問うべきだという主張が浮上している。憲法修正25条の規定により大統領の職務を停止するか、13日しか残っていないとはいえ、議会が弾劾すべきだという主張だ。
ナンシー・ペロシ下院議長はこの日、「副大統領と内閣にトランプ大統領の職務を停止することを促す」と述べた。副大統領と内閣がこれを拒否した場合、議会を招集して大統領を弾劾すると発表した。
チャック・シューマー上院民主党院内代表も「大統領はこれ以上、1日たりとも在任してはならない」とし、マイク・ペンス副大統領と内閣が憲法修正25条を発動してトランプ大統領を公職から退かせるべきだと述べた。
憲法修正25条は大統領の職務遂行不可能と承継問題を規定した条項だ。大統領がその職の権限と義務を実行することができないと判断した場合、副大統領が職務を代行するようになっている。
副大統領と内閣の過半数が大統領は職務遂行に適していないと宣言し、議会に書簡を送れば、副大統領が大統領権限代行を務める。大統領が同意しない場合、上・下院でそれぞれ3分の2以上が賛成した場合、職務が停止される。
民主党議員らを中心とした議論に共和党も加勢した。共和党所属のアダム・キンジンガー議員(イリノイ州)は、「昨日、大統領は国民と議会を保護すべき義務を放棄しただけでなく、私たちが目撃した反乱を煽って火をつけた」とし「悪夢を終わらせるために憲法修正25条を発動すべき時」と述べた。
キンジンガー議員はフォックスニュースに出演し、「残った数週間だけでも国民が安全に過ごせるように正気の船長が必要」と述べ、トランプ大統領は職務遂行に適していないと主張した。
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