新年初日、北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長はすべての住民に「親筆年賀状」を送った。昨年に続いて今年も「新年の辞」を省略し、第８回党大会の結果報告がその代わりとなる。北朝鮮内部が極度の危機状況であるだけに、最高尊厳の責任よりも党的な責任であることを見せようとする統治行為だ。

金正恩委員長は２０１９年２月の「ハノイノーディール」の影響で、同年１２月に開催した第７期第５回全員会議で「米国が朝米対話を不純な目的に悪用することは許さない。今まで我々の人民が受けた苦痛と抑制された発展の代償をすべて受け取るための『衝撃的な実際行動』に移る」と宣言した。しかし昨年は新型コロナのパンデミックと経済危機のため米国に向けて衝撃的な実際行動を見せる余力がなかった。その代わりに南側に向けて、関係のない南北共同連絡事務所を爆破することで衝撃的な実際行動を見せた。

北朝鮮は２０１６年の第７回党大会以来５年ぶりとなる第８回党大会を予告した。１月に北朝鮮と米国の重大政治日程が重なる現象は極めて異例だ。機転を利かせた北朝鮮が党大会を米国の新政権発足直前で合わせたのだろう。金正恩委員長は交渉力を高めるために毎回、米国大統領が就任する年に核・ミサイル挑発をしてきた。バイデン次期大統領に投じる北朝鮮の最初のメッセージが注目される理由だ。


トランプ大統領とは違うバイデン氏の対北朝鮮政策も世界の注目を集める。２０２１年の韓半島（朝鮮半島）の運命を左右する北朝鮮の衝撃的な実際行動に影響を与える３つの観戦ポイントを見てみよう。

１つ目、北朝鮮の衝撃的な実際行動は変わらない常数という点だ。核兵器を握った北朝鮮は内部の危機や外部の制裁と圧力の中でも核を放棄せず正面突破するということだ。特にトランプ大統領が北朝鮮を正常国家、核保有国として黙認したため、核カードは常数になった。北朝鮮はすでに米国に対する衝撃的な実際行動シナリオを準備したとみるのが合理的だ。

西欧式の合理的な思考の枠で北朝鮮をみれば予測は難しい。結局、金正恩委員長の衝撃的な実際行動は不変の常数であり、バイデン氏の対北朝鮮政策は北朝鮮の行動に影響を与える原因変数にすぎない。金正恩委員長はバイデン氏にも高まった地位に相応する対価を要求するだろう。

２つ目、コロナは北朝鮮の衝撃的な行動を抑止する米朝間の共通変数という点だ。金正恩委員長はコロナを体制の維持において深刻な脅威と見なしている。現在は米国の核兵器よりもコロナがさらに脅威だ。それで衝撃的な実際行動も遅らせてきた。バイデン氏には世界最大のコロナ被害国になった米国を治癒するという優先課題がある。米国の立場でもまだ北朝鮮の核よりコロナが実存する脅威だ。コロナ克服のために米朝ともに戦列を整備する時間が必要だ。

３つ目、バイデン氏の対北朝鮮政策変数だ。バイデン氏は、オバマ政権１、２期目の戦略的忍耐が北朝鮮の核武装抑止に失敗したという事実から実現可能な対北朝鮮政策を樹立する必要がある。バイデン氏は北朝鮮に核を保有すれば生存できないという点を悟らせるよう、ボトムアップ式とトップダウン式を組み合わせたハイブリッド交渉戦略で融通性を発揮しなければいけない。

ムチと同時に、金正恩委員長が官僚と住民を説得できる名分のニンジンも必要だ。北朝鮮の核問題は短期的な問題でないため、中間目標設定も重要となる。多国間および二国間外交の長短所を考慮した精巧な対北朝鮮政策が求められる時だ。仮にバイデン氏が北朝鮮にワクチンを含む人道的協力を提案し、北朝鮮がこれを受け入れれば、韓半島には危機のない新年になり得る。

新年早々、米朝の駆け引きが始まった。北朝鮮は核のない韓国に対してどう出てくるのか。韓国側に向けたもう一つの衝撃的な実際行動に徹底的に備えながら韓半島の平和を論じる２０２１年を希望する。

キム・ファンロク／元国防情報本部長／北朝鮮学博士

◆外部者執筆のコラムは中央日報の編集方針と異なる場合があります。