◇ドン・キホーテとレームダック
スペインのラ・マンチャの田舎貴族ドン・キホーテは騎士道物語を大変好んだ。昼夜読みふけり、現実と物語を混同した。「世の中にどれほど多くの不正が横行していることか。一日でも遅れることは罪だ」。ドン・キホーテは遍歴の騎士になり、世の中を巡って冒険すると言った。
すべての現実が本で読んで想像した姿の通り様変わりしていた。宿屋は城、女中は王女、修道士は悪党の魔法使いに見えた。従者のサンチョが何度も風車だからと止めたが、ドン・キホーテは巨人だと言って飛びかかった。
ミュージカル『ラ・マンチャの男(Man of La Mancha)』は、「叶えることのできない夢を見て、結ばれることのできない愛をして、勝つことのできない敵と戦い、耐えることのできない苦痛に耐え、つかむことのできないあの空の星をつかもう」とドン・キホーテの理想主義に賛辞を送る。夢を見なければ新しい未来を作り出すことができない。政治家も、より良い未来を作るには、星を追いかけなければならない。しかし、度が過ぎれば国民が苦労する。
現実と幻想の錯覚、共感能力の欠如…。ドン・キホーテは一人で笑い者になるに留まった。しかし、政治家ならば、その被害はあまりにも多くの人に及ぶ。現実を知らなければ、正しい処方は出せない。金大中(キム・デジュン)元大統領が「政治家は絶対に国民の手を放してはならず、半歩先を行かなければならない」と述べたのも同じ理由だ。先導しなければならないが、先を行きすぎてはならない。
ドン・キホーテは風車に向かって突進した。彼の槍は粉々になり、彼の愛馬ロシナンテは大きな傷を負って倒れた。自分が対戦しなければならない敵が誰なのか、何に向かって槍を持って飛びかからなければならないのか、見誤った結果だ。
文在寅(ムン・ジェイン)政府はついに尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長の職務を停止させた。ことし1月3日の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の就任後、実に1年間、国全体を騒がせて収めた戦利品だ。国民の目には最大の国政課題が尹錫悦総長の追放のように映った。5年単任という短い任期で、4年目に至って収めた最大の成果だ。検察改革が尹錫悦総長の追放のようになった。捜査機関の民主党の手中に入れようとする意図のように見えた。そのため、検察改革と高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の世論ばかり悪くなった。
◇共感能力不足が問題だ
なぜレームダックになるのだろうか。支持率低下、政策の失敗、人事の失敗、選挙の敗北、親戚や側近の不正などが挙げられる。これらの原因を貫通することが政治指導者の「共感能力」だ。現実と異なる幻想の世界にはまり、このような原因を作り、墜落する支持率を見ても、手を打てない。
ドン・キホーテがおかしくなったのは、騎士道物語のせいだ。現実を騎士道物語の中の世界と混同した。本は知恵を育ててくれるが、本を数冊読んだことで世界を知っているとうぬぼれている人には打つ手がない。単純なほど勇敢だ。反対する者に容赦がない。中国の紅衛兵、アフガニスタンのタリバン、ナイジェリアのボコ・ハラム、カンボジアのキリング・フィールド…。いずれも子どもを前衛隊に立てた。そのため、単純論理で敵味方を一刀両断し、無慈悲な暴力と殺傷を犯した。
権力者が一つの論理に陥ると、実に危険だ。ドン・キホーテのような幻想ならば、より大変なことになる。マリー・アントワネットの言葉も現実と遊離したせいで出たものだ。現実と離れると民心が離反する。「不動産市場は非常に安定しているようだ」「チョンセ(保証金を預けて不動産を一定期間借りるシステム)・月払いの家賃は安定しているではないか」という言葉がそうだ。「雇用が明確な回復傾向を見せている」「奇跡のような善戦」と言って、国民の怒りを刺激する。
わずか1カ月前にも文大統領は、世界が「K-防疫」を学んで行こうとしていると自慢した。「トンネルの終わりが見える」と言った。とりわけ、自慢さえすれば大流行が繰り返した。ワクチンを入手をする前から北朝鮮に分けるという発言をした。防疫環境と独自開発能力の幻想で現実を無視したせいだ。外交環境の違いも深刻だ。ところが、今になって大統領とワクチンTFが互いにワクチンを確保できなかった責任を押し付け合う姿はあきれたものだ。
スペインのラ・マンチャの田舎貴族ドン・キホーテは騎士道物語を大変好んだ。昼夜読みふけり、現実と物語を混同した。「世の中にどれほど多くの不正が横行していることか。一日でも遅れることは罪だ」。ドン・キホーテは遍歴の騎士になり、世の中を巡って冒険すると言った。
すべての現実が本で読んで想像した姿の通り様変わりしていた。宿屋は城、女中は王女、修道士は悪党の魔法使いに見えた。従者のサンチョが何度も風車だからと止めたが、ドン・キホーテは巨人だと言って飛びかかった。
ミュージカル『ラ・マンチャの男(Man of La Mancha)』は、「叶えることのできない夢を見て、結ばれることのできない愛をして、勝つことのできない敵と戦い、耐えることのできない苦痛に耐え、つかむことのできないあの空の星をつかもう」とドン・キホーテの理想主義に賛辞を送る。夢を見なければ新しい未来を作り出すことができない。政治家も、より良い未来を作るには、星を追いかけなければならない。しかし、度が過ぎれば国民が苦労する。
現実と幻想の錯覚、共感能力の欠如…。ドン・キホーテは一人で笑い者になるに留まった。しかし、政治家ならば、その被害はあまりにも多くの人に及ぶ。現実を知らなければ、正しい処方は出せない。金大中(キム・デジュン)元大統領が「政治家は絶対に国民の手を放してはならず、半歩先を行かなければならない」と述べたのも同じ理由だ。先導しなければならないが、先を行きすぎてはならない。
ドン・キホーテは風車に向かって突進した。彼の槍は粉々になり、彼の愛馬ロシナンテは大きな傷を負って倒れた。自分が対戦しなければならない敵が誰なのか、何に向かって槍を持って飛びかからなければならないのか、見誤った結果だ。
文在寅(ムン・ジェイン)政府はついに尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長の職務を停止させた。ことし1月3日の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の就任後、実に1年間、国全体を騒がせて収めた戦利品だ。国民の目には最大の国政課題が尹錫悦総長の追放のように映った。5年単任という短い任期で、4年目に至って収めた最大の成果だ。検察改革が尹錫悦総長の追放のようになった。捜査機関の民主党の手中に入れようとする意図のように見えた。そのため、検察改革と高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の世論ばかり悪くなった。
◇共感能力不足が問題だ
なぜレームダックになるのだろうか。支持率低下、政策の失敗、人事の失敗、選挙の敗北、親戚や側近の不正などが挙げられる。これらの原因を貫通することが政治指導者の「共感能力」だ。現実と異なる幻想の世界にはまり、このような原因を作り、墜落する支持率を見ても、手を打てない。
ドン・キホーテがおかしくなったのは、騎士道物語のせいだ。現実を騎士道物語の中の世界と混同した。本は知恵を育ててくれるが、本を数冊読んだことで世界を知っているとうぬぼれている人には打つ手がない。単純なほど勇敢だ。反対する者に容赦がない。中国の紅衛兵、アフガニスタンのタリバン、ナイジェリアのボコ・ハラム、カンボジアのキリング・フィールド…。いずれも子どもを前衛隊に立てた。そのため、単純論理で敵味方を一刀両断し、無慈悲な暴力と殺傷を犯した。
権力者が一つの論理に陥ると、実に危険だ。ドン・キホーテのような幻想ならば、より大変なことになる。マリー・アントワネットの言葉も現実と遊離したせいで出たものだ。現実と離れると民心が離反する。「不動産市場は非常に安定しているようだ」「チョンセ(保証金を預けて不動産を一定期間借りるシステム)・月払いの家賃は安定しているではないか」という言葉がそうだ。「雇用が明確な回復傾向を見せている」「奇跡のような善戦」と言って、国民の怒りを刺激する。
わずか1カ月前にも文大統領は、世界が「K-防疫」を学んで行こうとしていると自慢した。「トンネルの終わりが見える」と言った。とりわけ、自慢さえすれば大流行が繰り返した。ワクチンを入手をする前から北朝鮮に分けるという発言をした。防疫環境と独自開発能力の幻想で現実を無視したせいだ。外交環境の違いも深刻だ。ところが、今になって大統領とワクチンTFが互いにワクチンを確保できなかった責任を押し付け合う姿はあきれたものだ。
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