10~11月に韓国にいる間にオフラインで講演したことがある。最近は新型コロナウイルスにより講演は主にオンラインだけでするが久しぶりに対面でやると人々の表情がよく見えてやはりコミュニケーションがうまくいく感じだった。参加者の表情を見てわかったが、最近日本で途轍もない第4次韓流ブームが起きているのをまだよく知らないようだった。ぼんやりとした表情で「なぜですか」と尋ねる人もいた。このように認識の格差が大きいのは新型コロナウイルスのため人的交流が少なくなったからか。いまは文化だけ見れば日本が韓国に片思いしているようだ。さらにその愛がどれだけ熱いのかよく伝えられずにいる。
◇芸能誌、パク・ジニョンのビジネスの魅力分析
日本ではその年の流行や人々の関心度が分かる指標として「ユーキャン新語・流行語対象」というものがある。今年は「3密」が対象に選ばれた。3密とは厚生労働省が新型コロナウイルスの防疫を目的に、密閉・密集・密接を避けようと国民に訴えるために作った言葉だ。小池百合子東京都知事が積極的にこの言葉を使って広がった。
「愛の不時着」や「NiziU(ニジュー)」も対象候補に入った。第4次韓流ブームを象徴するドラマとアイドルグループの名前だ。「愛の不時着」は3密に次ぎ2位に選ばれた。NiziUは今年誕生したガールズグループだが日本ではオーディション番組を通じて人気を得た。プレデビュー曲『Make you happy』のプロモーションビデオがユーチューブに公開されてから5カ月で1億8000万再生を記録したほどすごかった。12月2日に正式デビューし、31日のNHK紅白歌合戦に出演することも確定している。紅白歌合戦は視聴率が高い年末の音楽番組で、これまでK-POPアイドルでは東方神起、KARA、少女時代、TWICEなどが出演した。
NiziUはメンバー9人全員が日本人だがK-POP風アイドルだ。JYPエンターテインメントとソニーミュージックの「Nizi Project」で輩出された。このプロジェクトは日本テレビで4~6月に放送され、ユーチューブにも公開され多くの人が視聴した。
私は2018年にIZ*ONEを誕生させたオーディション番組「PRODUCE48」にはまっていた。この番組には日本のアイドルAKB48グループのメンバーらと韓国の練習生が参加した。AKB48グループのメンバーはすでにデビューしてプロとして活動するアイドルだったが、デビュー前の韓国人練習生より歌やダンスの実力が劣るケースが多かった。ところが韓国人トレーナーのトレーニングを受けて明確に成長していく姿を見て日本でアイドルがまともにトレーニングを受けられずにいるという事実を知ることになった。
日本で人気が多いK-POPアイドルのうちガールズグループTWICEとIZ*ONEはオーディション番組を通じてデビューし、メンバーに日本人がいるという共通点がある。オーディション番組を見て自分もできるという夢を見る日本の若者が多くなったようだ。いまでは日本のアイドルよりK-POPアイドルになりたい10代が多いようだ。NiziUのプロモビデオを見ると、メイクやヘアスタイル、ファッションなどのスタイルがK-POPアイドルのように見えるだけでなく、日本語の歌詞なのに韓国人が日本語で歌うような発音やアクセントに聞こえる。映画『金子文子と朴烈』に金子文子役で出演したチェ・ヒソが韓国語のセリフを日本人が話す発音とアクセントでしたため多くの観客が日本人女優と思ったということを思い出した。
おもしろいのは「Nizi Project」が若い人だけに人気があったのではなく、中年男性の間でも話題になったという点だ。彼らの関心はアイドル志望生よりはプロデューサーのパク・ジニョンに対することだった。彼が志望生に投げかける助言や評価がそれぞれの個性を尊重し勇気を与える言葉だったためだ。こうして世代を超えて心に響いたという。日本では「JY Park」と呼ばれ尊敬の対象になった。
書店やレコード店に行けばNiziUやパク・ジニョンがどれだけ人気があるかを感じられる。特にNiziUが正式デビューした12月初めにNiziUのメンバーが表紙になったファッション誌が多く見られた。政治など一般ニュースを扱う週刊誌「アエラ」の表紙もNiziUだった。「グローバルガールズグループ」と紹介された。J-POPなのかK-POPなのかと考えていたが、このように分類することにしたようだ。アエラによるとメンバーは約1年間に韓国で共同生活をしながらデビューの準備をしてきたという。やはり韓国で過ごしてこそK-POP風になるのだろうか?
「週刊文春エンタ!」は6ページにわたりパク・ジニョンの魅力を分析した。例えばパク・ジニョンが志望生に助言する時にまず長所を話した後に短所を話す方式を効果的だと評価した。会社では上司が部下にその反対の順で話すことが多いが、そうすると心を閉ざすのでコミュニケーションがうまくできないということだ。パク・ジニョンの方式をビジネス技術として学ぼうという趣旨だ。
韓国の人たちは日本にまだレコード店があると言えば驚くかもしれない。もちろん昔ほどではないが、それでも結構ある。レコード店にもNiziUだけでなくパク・ジニョンのアルバムが目立つように陳列されていた。日本で初めてのアルバムが2020年10月7日に発売されたというので「Nizi Project」の影響であるのは間違いない。アルバムジャケットにJY Parkの別冊語録が付いていると書かれている。私の夫はもともと韓流に特に関心がなかったが、JY Parkがどんな話をしたのかはSNSを通じて話題になり知っており、感銘を受けたという。むしろNiziUに対しては新しく出てきたK-POPアイドル程度とだけ知っており、全員日本人とは知らなかったという。
日本にいれば「NiziUは韓国でも人気があるのか」という質問をしばしば受ける。私が10~11月に韓国で過ごして感じたところでは知らない人が多かった。IZ*ONEが誕生した「PRODUCE48」のようにオーディション番組が韓国のテレビで放映されなかったことが大きな原因のようだ。いくらJYPエンターテインメントのプロジェクトであっても全員日本人なら放映は難しかっただろう。
これほどまで両国間の認識が違うと感じたのは今回が初めてだ。これは新型コロナウイルスにより人的交流が少なくなったためだけではないかもしれない。最近私は知らなかった事実を知ることになった。2019年7月の日本政府の輸出規制に関することだ。私は率直に強制徴用や慰安婦問題など過去史に関する問題より韓国側の反応が大きかったのが意外だった。それまで韓日関係が悪いといってもあれほど多く日本を訪れていた韓国の人たちが突然旅行を中断するのを見て理解がよくできなかった。輸出規制対象が半導体関連だったということが韓国の人々の感情を大きく逆なでしたと聞いた。半導体は韓国の主要産業であるためだ。韓国に5年半住んだ私が最近までこの事実を知らなかったが、ほとんどの日本人が理解できないのはもしかしたら当然かもしれない。
◇両国とも互いに敏感な部分は触れるべきでない。
2012年に当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領が独島(ドクト、日本名・竹島)を訪問ししばらく熱かった第2次韓流ブームが突然冷めてしまったことがあった。その時も事実日本の人たちはほとんど独島に関心がなかったが、そのタイミングで李大統領が天皇に謝罪を要求したことが日本の人々の感情を逆なでしたのだ。互いに敏感なところを触れてはならない部分があるのにこれをよく理解できていないようだ。
日本に対する感情が悪化した状態でコロナが広がったことが認識格差の主原因のようだ。輸出規制以降に日本の韓流ファンは何の変化もなかったが、韓国アイドルや俳優は日本での公演やファンミーティングをすることを韓国側に知らせないようにする傾向を見せた。いまもそのような状態が続いているかもしれない。日本で人気があるということを韓国の人たちが否定的に受け止めるかも知れないという懸念のため韓国側に伝えないのだ。日本国内の韓流ブームを韓国側がよりうまく活用できるという思いに遠くからもどかしい気持ちで見守っている。
成川彩/元朝日新聞記者
◇芸能誌、パク・ジニョンのビジネスの魅力分析
日本ではその年の流行や人々の関心度が分かる指標として「ユーキャン新語・流行語対象」というものがある。今年は「3密」が対象に選ばれた。3密とは厚生労働省が新型コロナウイルスの防疫を目的に、密閉・密集・密接を避けようと国民に訴えるために作った言葉だ。小池百合子東京都知事が積極的にこの言葉を使って広がった。
「愛の不時着」や「NiziU(ニジュー)」も対象候補に入った。第4次韓流ブームを象徴するドラマとアイドルグループの名前だ。「愛の不時着」は3密に次ぎ2位に選ばれた。NiziUは今年誕生したガールズグループだが日本ではオーディション番組を通じて人気を得た。プレデビュー曲『Make you happy』のプロモーションビデオがユーチューブに公開されてから5カ月で1億8000万再生を記録したほどすごかった。12月2日に正式デビューし、31日のNHK紅白歌合戦に出演することも確定している。紅白歌合戦は視聴率が高い年末の音楽番組で、これまでK-POPアイドルでは東方神起、KARA、少女時代、TWICEなどが出演した。
NiziUはメンバー9人全員が日本人だがK-POP風アイドルだ。JYPエンターテインメントとソニーミュージックの「Nizi Project」で輩出された。このプロジェクトは日本テレビで4~6月に放送され、ユーチューブにも公開され多くの人が視聴した。
私は2018年にIZ*ONEを誕生させたオーディション番組「PRODUCE48」にはまっていた。この番組には日本のアイドルAKB48グループのメンバーらと韓国の練習生が参加した。AKB48グループのメンバーはすでにデビューしてプロとして活動するアイドルだったが、デビュー前の韓国人練習生より歌やダンスの実力が劣るケースが多かった。ところが韓国人トレーナーのトレーニングを受けて明確に成長していく姿を見て日本でアイドルがまともにトレーニングを受けられずにいるという事実を知ることになった。
日本で人気が多いK-POPアイドルのうちガールズグループTWICEとIZ*ONEはオーディション番組を通じてデビューし、メンバーに日本人がいるという共通点がある。オーディション番組を見て自分もできるという夢を見る日本の若者が多くなったようだ。いまでは日本のアイドルよりK-POPアイドルになりたい10代が多いようだ。NiziUのプロモビデオを見ると、メイクやヘアスタイル、ファッションなどのスタイルがK-POPアイドルのように見えるだけでなく、日本語の歌詞なのに韓国人が日本語で歌うような発音やアクセントに聞こえる。映画『金子文子と朴烈』に金子文子役で出演したチェ・ヒソが韓国語のセリフを日本人が話す発音とアクセントでしたため多くの観客が日本人女優と思ったということを思い出した。
おもしろいのは「Nizi Project」が若い人だけに人気があったのではなく、中年男性の間でも話題になったという点だ。彼らの関心はアイドル志望生よりはプロデューサーのパク・ジニョンに対することだった。彼が志望生に投げかける助言や評価がそれぞれの個性を尊重し勇気を与える言葉だったためだ。こうして世代を超えて心に響いたという。日本では「JY Park」と呼ばれ尊敬の対象になった。
書店やレコード店に行けばNiziUやパク・ジニョンがどれだけ人気があるかを感じられる。特にNiziUが正式デビューした12月初めにNiziUのメンバーが表紙になったファッション誌が多く見られた。政治など一般ニュースを扱う週刊誌「アエラ」の表紙もNiziUだった。「グローバルガールズグループ」と紹介された。J-POPなのかK-POPなのかと考えていたが、このように分類することにしたようだ。アエラによるとメンバーは約1年間に韓国で共同生活をしながらデビューの準備をしてきたという。やはり韓国で過ごしてこそK-POP風になるのだろうか?
「週刊文春エンタ!」は6ページにわたりパク・ジニョンの魅力を分析した。例えばパク・ジニョンが志望生に助言する時にまず長所を話した後に短所を話す方式を効果的だと評価した。会社では上司が部下にその反対の順で話すことが多いが、そうすると心を閉ざすのでコミュニケーションがうまくできないということだ。パク・ジニョンの方式をビジネス技術として学ぼうという趣旨だ。
韓国の人たちは日本にまだレコード店があると言えば驚くかもしれない。もちろん昔ほどではないが、それでも結構ある。レコード店にもNiziUだけでなくパク・ジニョンのアルバムが目立つように陳列されていた。日本で初めてのアルバムが2020年10月7日に発売されたというので「Nizi Project」の影響であるのは間違いない。アルバムジャケットにJY Parkの別冊語録が付いていると書かれている。私の夫はもともと韓流に特に関心がなかったが、JY Parkがどんな話をしたのかはSNSを通じて話題になり知っており、感銘を受けたという。むしろNiziUに対しては新しく出てきたK-POPアイドル程度とだけ知っており、全員日本人とは知らなかったという。
日本にいれば「NiziUは韓国でも人気があるのか」という質問をしばしば受ける。私が10~11月に韓国で過ごして感じたところでは知らない人が多かった。IZ*ONEが誕生した「PRODUCE48」のようにオーディション番組が韓国のテレビで放映されなかったことが大きな原因のようだ。いくらJYPエンターテインメントのプロジェクトであっても全員日本人なら放映は難しかっただろう。
これほどまで両国間の認識が違うと感じたのは今回が初めてだ。これは新型コロナウイルスにより人的交流が少なくなったためだけではないかもしれない。最近私は知らなかった事実を知ることになった。2019年7月の日本政府の輸出規制に関することだ。私は率直に強制徴用や慰安婦問題など過去史に関する問題より韓国側の反応が大きかったのが意外だった。それまで韓日関係が悪いといってもあれほど多く日本を訪れていた韓国の人たちが突然旅行を中断するのを見て理解がよくできなかった。輸出規制対象が半導体関連だったということが韓国の人々の感情を大きく逆なでしたと聞いた。半導体は韓国の主要産業であるためだ。韓国に5年半住んだ私が最近までこの事実を知らなかったが、ほとんどの日本人が理解できないのはもしかしたら当然かもしれない。
◇両国とも互いに敏感な部分は触れるべきでない。
2012年に当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領が独島(ドクト、日本名・竹島)を訪問ししばらく熱かった第2次韓流ブームが突然冷めてしまったことがあった。その時も事実日本の人たちはほとんど独島に関心がなかったが、そのタイミングで李大統領が天皇に謝罪を要求したことが日本の人々の感情を逆なでしたのだ。互いに敏感なところを触れてはならない部分があるのにこれをよく理解できていないようだ。
日本に対する感情が悪化した状態でコロナが広がったことが認識格差の主原因のようだ。輸出規制以降に日本の韓流ファンは何の変化もなかったが、韓国アイドルや俳優は日本での公演やファンミーティングをすることを韓国側に知らせないようにする傾向を見せた。いまもそのような状態が続いているかもしれない。日本で人気があるということを韓国の人たちが否定的に受け止めるかも知れないという懸念のため韓国側に伝えないのだ。日本国内の韓流ブームを韓国側がよりうまく活用できるという思いに遠くからもどかしい気持ちで見守っている。
成川彩/元朝日新聞記者
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