もどかしい世の中、サイダーのようなさわやかさを誰が拒むだろうか。政治家の「サイダー発言」は理由なく出てくるのではない。お金がかからないサイダー発言もあるが、少し考えればお金がかなりかかる「サイダー」が結構ある。言葉はさわやかで美しいが、その後の処理はどのようにして財布は誰が開くかはほとんど無視して通過するのが普通だ。
うまく判断できなければ「サイダー」に隠れている経済的費用をじっくりと確かめてみるのがよい。高い経済的費用を支払わなければならないケースが多い。
先月発表された大韓航空とアシアナ航空のビッグディール反対論もそうだ。世界7位圏の統合航空会社が誕生するという華麗なファンファーレが終わると、すぐに「財閥特恵ではないのか」という批判が出てきた。産業銀行が8000億ウォン(約755億円)を韓進(ハンジン)グループの持ち株会社の韓進KALに第三者割当増資などの方式で投入すれば、この資金を呼び水に大韓航空が資金を集めてアシアナ航空を買収するというのがビッグディールの骨格だ。この場合、産業銀行は韓進KALの11%の株式を保有するが、結局、経営権紛争中の趙源泰(チョ・ウォンテ)韓進会長に有利になるというのが財閥特恵論の核心だ。
財閥特恵論でM&A(企業の合併・買収)に対する世論が悪化すると、李東杰(イ・ドンゴル)産業銀行会長は記者懇談会を開き、多数の報道機関のインタビューに応じて収拾に動いた。産業銀行が趙源泰会長の韓進KAL株全体を担保とし、統合後に成果を出せなければ経営から退くという発言も出てきた。
そうでなくとも国策銀行の産業銀行を通じて政府が影響力を行使できるという点で「航空社会主義」という指摘が出ている中、公共機関のように「経営評価」までするというため、航空産業の準国有化という声につながった。産業銀行が「財閥特恵」を否認するために出した対策が過度な経営介入として、さらには事実上の「航空産業国有化」にまでつながってしまう、非常に複雑で微妙な状況だ。
財閥に特恵を与えるという批判も、結局は政府の資金8000億ウォンが投入されるだけに韓進がむやみにできないように首輪をつけておくべきという主張も「サイダー」に属する。世論の不満を一時的に和らげるかもしれないが、結局は政府と産業銀行の過度な介入につながり、統合航空会社の負担を増やす可能性が高い。業績が悪ければ切ると産業銀行が目をむく状況で、自律的な責任経営がまともに行われて民間の競争力がどれほど発揮されるだろうか。
すっきりとする完全無欠の答えがあるのならよいが、世の中はそのように完ぺきではない。やや汚れていて立派でなくても合理的な選択である場合がある。少し傷があっても今回のビッグディールは国民の負担を最も減らすことができる方法だ。李東杰会長は合併がなくなればアシアナだけでなく大韓航空の独自生存もどうなるか分からないと述べた。
いま最も重要なのは35兆ウォンの負債がある統合航空会社が滑走路からまともに飛び立てるかどうかだ。両社が1年以内に返済すべき負債だけでも13兆ウォンにのぼる。産業銀行と大韓航空が公言したように人為的なリストラをせず、どのように費用を減らして効率を高めることができるのかが気になる。代案なくビッグディールを批判すれば、統合航空会社をさらに締めつけることになる。世論に振り回されて統合航空会社が何もできず、コロナ危機が終わって航空需要が正常化することだけを待つ「天水田経営」から抜け出せない可能性もある。それがもっと心配だ。
過去に我々の社会が「サイダー」を好み、大きな代償を支払った例が少なくない。ローンスターが代表的な例だ。「投機資本ローンスターの食い逃げを防ぐべき」という世論に押されて金融当局が外換銀行売却承認を遅らせたことで結局、国際仲裁訴訟につながった。8年前に47億ドルを要求して韓国政府を相手に訴訟を起こしたローンスターは最近8億7000万ドルの妥協案を提示したという。訴訟の最終結果はともかく、これまでローンスターのために浪費した法律費用と見えない社会的費用を考えても残念でならない。
航空ビッグディールの最初の関門であるソウル中央地裁の決定がきょう出る。私募ファンドKCGI側が韓進KALを相手に出した新株発行禁止仮処分申請を裁判所が受け入れれば、ビッグディールは水の泡となる。国民の負担の最小化が航空ビッグディールを眺める基準にならなければいけない。木よりも森を眺望する裁判所の賢明な決定を期待したい。
ソ・ギョンホ/経済エディター
うまく判断できなければ「サイダー」に隠れている経済的費用をじっくりと確かめてみるのがよい。高い経済的費用を支払わなければならないケースが多い。
先月発表された大韓航空とアシアナ航空のビッグディール反対論もそうだ。世界7位圏の統合航空会社が誕生するという華麗なファンファーレが終わると、すぐに「財閥特恵ではないのか」という批判が出てきた。産業銀行が8000億ウォン(約755億円)を韓進(ハンジン)グループの持ち株会社の韓進KALに第三者割当増資などの方式で投入すれば、この資金を呼び水に大韓航空が資金を集めてアシアナ航空を買収するというのがビッグディールの骨格だ。この場合、産業銀行は韓進KALの11%の株式を保有するが、結局、経営権紛争中の趙源泰(チョ・ウォンテ)韓進会長に有利になるというのが財閥特恵論の核心だ。
財閥特恵論でM&A(企業の合併・買収)に対する世論が悪化すると、李東杰(イ・ドンゴル)産業銀行会長は記者懇談会を開き、多数の報道機関のインタビューに応じて収拾に動いた。産業銀行が趙源泰会長の韓進KAL株全体を担保とし、統合後に成果を出せなければ経営から退くという発言も出てきた。
そうでなくとも国策銀行の産業銀行を通じて政府が影響力を行使できるという点で「航空社会主義」という指摘が出ている中、公共機関のように「経営評価」までするというため、航空産業の準国有化という声につながった。産業銀行が「財閥特恵」を否認するために出した対策が過度な経営介入として、さらには事実上の「航空産業国有化」にまでつながってしまう、非常に複雑で微妙な状況だ。
財閥に特恵を与えるという批判も、結局は政府の資金8000億ウォンが投入されるだけに韓進がむやみにできないように首輪をつけておくべきという主張も「サイダー」に属する。世論の不満を一時的に和らげるかもしれないが、結局は政府と産業銀行の過度な介入につながり、統合航空会社の負担を増やす可能性が高い。業績が悪ければ切ると産業銀行が目をむく状況で、自律的な責任経営がまともに行われて民間の競争力がどれほど発揮されるだろうか。
すっきりとする完全無欠の答えがあるのならよいが、世の中はそのように完ぺきではない。やや汚れていて立派でなくても合理的な選択である場合がある。少し傷があっても今回のビッグディールは国民の負担を最も減らすことができる方法だ。李東杰会長は合併がなくなればアシアナだけでなく大韓航空の独自生存もどうなるか分からないと述べた。
いま最も重要なのは35兆ウォンの負債がある統合航空会社が滑走路からまともに飛び立てるかどうかだ。両社が1年以内に返済すべき負債だけでも13兆ウォンにのぼる。産業銀行と大韓航空が公言したように人為的なリストラをせず、どのように費用を減らして効率を高めることができるのかが気になる。代案なくビッグディールを批判すれば、統合航空会社をさらに締めつけることになる。世論に振り回されて統合航空会社が何もできず、コロナ危機が終わって航空需要が正常化することだけを待つ「天水田経営」から抜け出せない可能性もある。それがもっと心配だ。
過去に我々の社会が「サイダー」を好み、大きな代償を支払った例が少なくない。ローンスターが代表的な例だ。「投機資本ローンスターの食い逃げを防ぐべき」という世論に押されて金融当局が外換銀行売却承認を遅らせたことで結局、国際仲裁訴訟につながった。8年前に47億ドルを要求して韓国政府を相手に訴訟を起こしたローンスターは最近8億7000万ドルの妥協案を提示したという。訴訟の最終結果はともかく、これまでローンスターのために浪費した法律費用と見えない社会的費用を考えても残念でならない。
航空ビッグディールの最初の関門であるソウル中央地裁の決定がきょう出る。私募ファンドKCGI側が韓進KALを相手に出した新株発行禁止仮処分申請を裁判所が受け入れれば、ビッグディールは水の泡となる。国民の負担の最小化が航空ビッグディールを眺める基準にならなければいけない。木よりも森を眺望する裁判所の賢明な決定を期待したい。
ソ・ギョンホ/経済エディター
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