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【時々刻々】だれのために働く長官なのか=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
耳を疑った。女性家族部長官の言葉とは想像すらしがたい詭弁だった。部下への性暴行あるいはセクハラ疑惑で落馬した与党出身のソウル・釜山(プサン)市長再補欠選挙を「国民が性認知感受性を学習する機会」と呼んだ。「権力型性犯罪なのか」という野党議員の質問にも「捜査中のため罪名を規定するのは適切でない」と回避した。呉巨敦(オ・ゴドン)前釜山市長が自ら認めた犯罪までかばった格好だ。「被害者が学習教材なのか」「学習は長官と与党がしろ」「長官は辞任せよ」という批判があふれた。

事実「李貞玉(イ・ジョンオク)女性家族部」のがっかりするスタイルはこれだけではない。朴元淳(パク・ウォンスン)、呉巨敦事件の際に渋々対応したり沈黙で一貫して「与党家族部」と皮肉られたりもした。朴元淳事件の被害者を「被害告訴人」と呼んだりもした。安熙正(アン・ヒジョン)前忠清南道(チュンチョンナムド)知事のセクハラ告発の際にいち早く批判声明を出した鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)前長官の時と比較される。もっとも、そのことで当時女性家族部報道官が経緯書を書いたという話があるので、今回の緩い対応の背景も推し量れるというものだ。

世界最大の児童性搾取サイト「ウェルカム・トゥ・ビデオ」運営者のソン・ジョンウが1年6月の軽い処罰で米国召喚が不許可となったのに女性家族部は傍観していた。「司法の判決に意見を出すのは不適切だ」という理由だった。これに対しキリスト教団体と野党議員が女性家族部の小学生性教育推薦図書「私らしさ」を問題にするとすぐに反論することなくすぐに回収を決めた。「『私らしさ』が対立要素になることを望まない」という長官の言葉に従ったからだ。長官の頭の中には与党関係者をかばい、裁判所や捜査当局の意向を考え、考えが異なる人たちとは対立を避けることしかないという話だ。歴代級の「保身長官」だ。女性家族部解体請願が10万人を突破すると長官は「国民の受容性または理解不足」を原因に挙げた。


女性家族部は2001年に金大中(キム・デジュン)時代に初めて政府官庁の女性部として誕生した。1980~90年代の至難な女性運動の結果だった。2005年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代に女性家族部になり、両政権下で戸主制廃止、家庭内暴力特別法と売春防止法制定などの大きな成果が出てきた。一時は女性家族部廃止を推進した李明博(イ・ミョンバク)政権を経て今日に至る。年間予算が1兆ウォン前後、政府総予算の0.2%にすぎないミニ官庁だ。やることをしっかりやっていないという批判もあるが、予算不足と低い地位などで限界があるのも事実だ。その上絶えず女性家族部を揺さぶる人たちがいる。企画財政部がしっかりできなければしっかりやれと言い解体しろとは言わないのに、海洋警察でもない女性家族部はいつも解体しろとばかり言われる。

チョ・ハン・ヘジョン延世(ヨンセ)大学名誉教授はある文で「20年前に世界の報道機関と海外フェミニストは経済奇跡と政治民主化を同時に成し遂げたアジアの小さな国が『性平等部(ministry of gender equality、女性部の英語表記)』を設立したことを絶賛した」とし、その後「女性家族部が少ない予算で苦労してどうにかやっている間に世の中はその官庁にまた別の途方もない課題を抱かせた」と指摘した。まだはるかに遠い男女平等問題に、深まるジェンダー対立、少子化、嫌悪文化、デジタル性暴行、性的マイノリティ・人権問題などを合わせなければならないという話だ。

残念なことは、いま「こんなことなら女性家族部がなぜ必要なのか」という失望と憤怒の声が女性の間からも出ているという点だ。女性問題を街頭とオンラインで20~30代のヤングフェミニストが先導する間に女性家族部は手をこまねいているだけでなく塩漬けにしている状況だ。社会学者である李長官は文在寅政権で3人目の女性家族部長官だ。鄭鉉栢、陳善美(チン・ソンミ)の2人の前任長官に比べ知られていなかった人物で、「サプライズ起用」の背景に関心が集まった。大邱(テグ)・慶尚北道(キョンサンブクド)の文在寅大統領支持団体発起人、参与連帯での活動程度が目立つ履歴だ。依然として家父長的現実を生きている女性・性的マイノリティより青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)を眺めているかのような長官が女性家族部を最悪の危機に追いやっている。自称フェミニスト政権ではおかしなことばかり起きる。

ヤン・ソンヒ/論説委員



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