北朝鮮は、米国の大統領選挙の前後に挑発を行って米国の朝野に衝撃を投じ、新政府を相手に交渉における立場を優位にしようという行動を取ってきた。ビル・クリントン大統領が就任したばかりの１９９３年初めに核拡散防止条約（ＮＰＴ）脱退を宣言したのがこのような行動の最初の事例だった。

ジョージ・Ｗ・ブッシュ氏とアル・ゴア氏が競合していた２０００年の大統領選挙当時は北朝鮮の挑発はなかったが、それは当時、米朝対話が活発だったためだった。趙明禄（チョ・ミョンノク）国防委員会第1副委員長（次帥）の訪米があり、オルブライト国務長官の訪朝があった。クリントン大統領の訪朝が推進されていた。ブッシュ氏の当選後も、これといった挑発はなかった。おそらくネオコンが強い姿勢の政策を主導していたため、北朝鮮がむやみに挑発しなかったものと推定される。ブッシュ１期前後の時期が、北朝鮮が挑発しなかった唯一の例外だ。

２００５年のブッシュ大統領再選直後、挑発があった。ブッシュ大統領の２期開始直前の２００５年２月初め、北朝鮮は「核兵器を製造し、６カ国協議はこれ以上行わない」という爆弾宣言をした。ネオコンの影響力が衰えた雰囲気に乗じてブッシュ第２期政権を揺さぶろうとする試みだった。


バラク・オバマ氏とジョン・マケイン氏が競合した２００８年の大統領選挙期間には６カ国協議が稼動したため、北朝鮮の大規模な挑発はなかった。しかし、２００９年のオバマ氏当選直後、北朝鮮は長距離ミサイル発射とつながる２度目の核実験で揺さぶりをかけた。２０１２年の大統領選挙期間にも長距離ミサイル発射を行った。２０１３年のオバマ大統領再選直後には、長距離ミサイル発射と３回目の核実験を相次いで行った。

トランプ氏とヒラリー・クリントン氏が競合した２０１６年の大統領選期間の間中、北朝鮮は２回の核実験と多くのミサイル発射を行った。２０１７年のトランプ氏当選直後もミサイル挑発は続き、ついにその年の秋には、６度目の核実験を行った。

これまでの経過を見れば、北朝鮮は対話が進行中の場合を除き、米国大統領選挙前後に核とミサイルで挑発してきた。また、核実験をするときは例外なく、長距離ミサイル実験を多発的に行った。