株価上昇を意味するラリーは気分がいい言葉だ。クリスマスを控えたサンタラリー、夏休みを控えたサマーラリーなどが代表的な例だ。しかし今回は違う。最近の株価急騰について、米CNBC放送は「世の中で最も悲しくて残忍なラリー」と表現した。米国民の90%が社会的隔離や封鎖などコロナで苦痛を受けている半面、株式とファンドを保有する上位10%だけが大きな流動性を背にして甘いラリーを楽しんでいるからだ。ウォール街も社会的弱者の犠牲と相対的な剥奪感を意識して「史上最も憎まれるラリー」と認めている。コロナが呼んだ悲劇だ。
米国ヘッジファンドが株式を無差別に買う理由は単純だ。コロナに対抗して天文学的な資金が供給されるからだ。コロナによる米国経済の損失額は3兆7000億ドルと推算される。しかし米連邦準備制度理事会(FRB)とトランプ政権が注ぎ込む資金は12兆ドルにのぼる。こうした莫大な流動性で資産価格が上がると見ているのだ。さらに2008年の金融危機当時は「サブプライム事態を引き起こした金融機関をなぜ血税で助けるのか」という政治的な非難を気にしていた。しかし今回は大胆だ。米与野党は中国発コロナ恐怖のほか、11月の大統領選挙を控え、お互い金融緩和に血眼になっている。現金中毒と変わらない。
韓国も資金を大規模に供給している。コロナ事態の6カ月間に140兆ウォン(約12兆6500億円)も投じた。しかし資金が消費・投資など実物経済でなく不動産・株式に大きく傾き、資産バブルを招いた。ソウルのマンション取引価格は現政権に入って45%も上昇し、個人投資家は融資を受けて株を買っている。一方、コロナ拡大による消費減少に苦しむ自営業者・零細企業には豊富な流動性は他国の話のように聞こえる。今年4-6月期の卸小売・宿泊・飲食店業への融資は18兆8000億ウォンと、過去最高となった。事実上、借金に頼って生存する局面だ。深刻な「動脈貨幣」で一方は流動性の豪雨で、別の一方は深刻な流動性不足で疲弊している。
市場の機能はまひしている。各国政府と中央銀行の無差別な現金供給で「良い商品を選び出す」市場機能が作動不能に陥ったのだ。これによって不確実性が高まり、資金があふれてもむしろ保身を図る雰囲気だ。同時に通貨流通速度と通貨乗数は過去最低に落ち、流動性の罠まで憂慮される状況だ。日本はアベノミクスでなんとか流動性の罠から抜け出した。マイナス金利と極端な流動性拡大でようやく脱出した。しかし韓国は外国資金流出恐怖と国債の格付けのためこうした劇薬処方は可能でない。実際、韓米の政策金利が逆転した2005年8月-07年8月、ソウル証券市場から19兆7000億ウォンの外国資金が流出した。
コロナ事態で社会的弱者が苦痛を受けるほど、金融をさらに緩和するという悪循環は続く。こうした流動性祭りが終わるには2つの変数が考えられる。一つは治療薬とワクチンの開発だ。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は「ウイルスによる災難であるため、金融・財政よりも医学的な解決策が出てこなければ根本的な治癒は難しい」と述べた。治療薬で経済活動が正常化してこそ過剰な流動性も回収できる。もう一つはインフレーションの可能性だ。グローバル金融危機当時は莫大な流動性にもかかわらず、生産性の向上と中国産の低価品のおかげで物価が上がらなかった。一方、2004-06年に消費者物価が4%の高空行進をすると、米国は政策金利を1%から5.25%に引き上げた。前例がないほどの引き上げだった。
歴史的に基軸通貨国の米国が金利を引き上げれば世界は苦しむ。1994年から米政策金利が3%ポイント上がると、中南米が通貨危機を迎えた。2年後にはアジアにまで伝染し、通貨危機を迎えた。2004年の利上げはグリーンスパン議長の非対称的通貨政策の決定版だった。ドットコムバブルの崩壊を収拾しようと過度な低金利を維持したことでインフレと住宅バブルを招いたという反省によるものだ。しかし急速な利上げはサブプライムモーゲージ事態というもう一つの破局を呼んだ。
コロナ事態で韓国経済は一度も経験したことがない危険な道に進んでいる。コロナウイルスは飲食・卸小売業種、青年・女性と非正規職など最も弱い部分から侵食している。その渦中に苦痛の分担どころか、不動産は急騰し、株式市場は残忍なラリーを続けている。パウエルFRB議長は「いつか景気は回復するだろうが、その速度は期待ほど速くないかもしれない」とし「その時まで多くの企業と家計が破壊されるだろう」と警告した。
今からでも財政支援と流動性供給は社会的弱者に精巧に合わせる選択と集中が求められる。全国民に災難支援金や通信費を無差別に給付するのはモラルハザードでありぜいたくだ。いつ治療剤とワクチンが開発されてコロナ事態が終わるかは誰にも分からない。第3次・第4次災難支援金まで覚悟しなければならない真っ暗なトンネルを通過している。豊かであるべき秋夕(チュソク、中秋)がいつよりも苦々しくて重い。
イ・チョルホ/中央日報コラムニスト
米国ヘッジファンドが株式を無差別に買う理由は単純だ。コロナに対抗して天文学的な資金が供給されるからだ。コロナによる米国経済の損失額は3兆7000億ドルと推算される。しかし米連邦準備制度理事会(FRB)とトランプ政権が注ぎ込む資金は12兆ドルにのぼる。こうした莫大な流動性で資産価格が上がると見ているのだ。さらに2008年の金融危機当時は「サブプライム事態を引き起こした金融機関をなぜ血税で助けるのか」という政治的な非難を気にしていた。しかし今回は大胆だ。米与野党は中国発コロナ恐怖のほか、11月の大統領選挙を控え、お互い金融緩和に血眼になっている。現金中毒と変わらない。
韓国も資金を大規模に供給している。コロナ事態の6カ月間に140兆ウォン(約12兆6500億円)も投じた。しかし資金が消費・投資など実物経済でなく不動産・株式に大きく傾き、資産バブルを招いた。ソウルのマンション取引価格は現政権に入って45%も上昇し、個人投資家は融資を受けて株を買っている。一方、コロナ拡大による消費減少に苦しむ自営業者・零細企業には豊富な流動性は他国の話のように聞こえる。今年4-6月期の卸小売・宿泊・飲食店業への融資は18兆8000億ウォンと、過去最高となった。事実上、借金に頼って生存する局面だ。深刻な「動脈貨幣」で一方は流動性の豪雨で、別の一方は深刻な流動性不足で疲弊している。
市場の機能はまひしている。各国政府と中央銀行の無差別な現金供給で「良い商品を選び出す」市場機能が作動不能に陥ったのだ。これによって不確実性が高まり、資金があふれてもむしろ保身を図る雰囲気だ。同時に通貨流通速度と通貨乗数は過去最低に落ち、流動性の罠まで憂慮される状況だ。日本はアベノミクスでなんとか流動性の罠から抜け出した。マイナス金利と極端な流動性拡大でようやく脱出した。しかし韓国は外国資金流出恐怖と国債の格付けのためこうした劇薬処方は可能でない。実際、韓米の政策金利が逆転した2005年8月-07年8月、ソウル証券市場から19兆7000億ウォンの外国資金が流出した。
コロナ事態で社会的弱者が苦痛を受けるほど、金融をさらに緩和するという悪循環は続く。こうした流動性祭りが終わるには2つの変数が考えられる。一つは治療薬とワクチンの開発だ。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は「ウイルスによる災難であるため、金融・財政よりも医学的な解決策が出てこなければ根本的な治癒は難しい」と述べた。治療薬で経済活動が正常化してこそ過剰な流動性も回収できる。もう一つはインフレーションの可能性だ。グローバル金融危機当時は莫大な流動性にもかかわらず、生産性の向上と中国産の低価品のおかげで物価が上がらなかった。一方、2004-06年に消費者物価が4%の高空行進をすると、米国は政策金利を1%から5.25%に引き上げた。前例がないほどの引き上げだった。
歴史的に基軸通貨国の米国が金利を引き上げれば世界は苦しむ。1994年から米政策金利が3%ポイント上がると、中南米が通貨危機を迎えた。2年後にはアジアにまで伝染し、通貨危機を迎えた。2004年の利上げはグリーンスパン議長の非対称的通貨政策の決定版だった。ドットコムバブルの崩壊を収拾しようと過度な低金利を維持したことでインフレと住宅バブルを招いたという反省によるものだ。しかし急速な利上げはサブプライムモーゲージ事態というもう一つの破局を呼んだ。
コロナ事態で韓国経済は一度も経験したことがない危険な道に進んでいる。コロナウイルスは飲食・卸小売業種、青年・女性と非正規職など最も弱い部分から侵食している。その渦中に苦痛の分担どころか、不動産は急騰し、株式市場は残忍なラリーを続けている。パウエルFRB議長は「いつか景気は回復するだろうが、その速度は期待ほど速くないかもしれない」とし「その時まで多くの企業と家計が破壊されるだろう」と警告した。
今からでも財政支援と流動性供給は社会的弱者に精巧に合わせる選択と集中が求められる。全国民に災難支援金や通信費を無差別に給付するのはモラルハザードでありぜいたくだ。いつ治療剤とワクチンが開発されてコロナ事態が終わるかは誰にも分からない。第3次・第4次災難支援金まで覚悟しなければならない真っ暗なトンネルを通過している。豊かであるべき秋夕(チュソク、中秋)がいつよりも苦々しくて重い。
イ・チョルホ/中央日報コラムニスト
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