#2020年9月、晴れた午後のソウル・清渓川(チョンゲチョン)。20代初めの大学生4人が菓子とビールの周りに車座になり携帯電話を穴があきそうなほど見ている。数分が過ぎると「私の勝ち」とある女子学生が手を上げる。他の学生は残念そうにしながらもげらげら笑いながらビールを飲み干す。
#2020年9月、別の日の夕方。ある会社の社員8人が一堂に会した。飲み会のためだ。場所は? 各自の家だ。コンピュータの前には飲み物とおつまみが置かれている。在宅勤務をする彼らは業務終了後にテレビ会議システムに接続し話に夢中になった。いわゆる「リモート飲み会」だ。
新型コロナウイルスの感染拡大の余波でこのところよく見られる風景だ。1年前はどんな様子だっただろうか。おそらく清渓川で楽しくゲームをする大学生は学校周辺のネットカフェやビアホールでオンラインとオフラインの遊びを楽しんだだろう。会社員は会社近くの飲食店でいろいろな料理を楽しみ、あれこれ話を交わしただろう。
だが新型コロナウイルスが人と会う場所を1段階飛び超えさせた。ネットカフェ、カラオケ、ビアホール、カフェ、食堂だ。韓国でこれらの大部分が自営業者の領域だ。相当数の自営業者は対面のスペースを提供する。だが新型コロナウイルスはすべての人に多様なスタイルの「非対面」を強要する。新型コロナウイルスの勢力が大きくなるほど対面スペースで営業する自営業は萎縮するほかない。
新型コロナウイルスは韓国の自営業者の墓場になりつつある。自営業者は「打撃」程度ではなく「焦土化」したと絶叫する。中身はすでに燃え尽き炭になったと話す。打撃は状況がある程度好転すれば再び立ち上がることができる。焦土化は違う。相当数が再起の踏み台を用意しにくい状況という意味だ。
全国経済人連合会が休憩飲食業、外食業、宿泊業など22種類の業種を代表する協会を対象に上半期の業績と下半期の見通しを調査したところ、上半期の売上高は前年同期に比べ27%、純利益は33%減少した。下半期はさらに暗鬱だ。社会的距離確保(ソーシャルディスタンス)第2段階が維持されれば売上高が36%、純利益が42%減り、第3段階になれば売上高が46%、純利益が53%減りほぼ半減すると予想した。
外国人観光客であふれたソウル・明洞(ミョンドン)は2軒に1軒で休廃業の案内文が貼られている。周辺に行くほど事情はさらに深刻になる。ネットカフェ、カラオケだけでなく、休憩飲食業は売り上げが80%以上減り事実上業種そのものが消滅する危機に陥った。7月の自営業者は554万8000人で前年同月より12万7000人減った。減少幅は1年前の5倍に達する。
韓国の自営業は雇用において洪水の時に水を蓄えた森の役割をした。韓国の森が蓄えている水の量は昭陽江(ソヤンガン)ダムの10倍に達する。景気低迷などで失業者があふれれば彼らは自営業を通じて第2の人生を始めたり、再起の踏み台とする事例が多かった。だが新型コロナウイルスで自営業そのものが崩壊し雇用生態系が揺らいでいる。自営業という森が失われるため失業大乱という大洪水に襲われることになった。
韓国は自営業者が就業者の4人に1人の割合で先進国より過度に多い。経済協力開発機構(OECD)によると韓国の自営業者の割合は2018年基準で25.1%に達する。この割合は米国の約4倍に達し、ドイツと日本の2.4~2.5倍程度だ。ドイツと日本の水準に自営業者の割合が減っただけでも数百万人が職を失い路頭に追い出されることになる。
問題は新型コロナウイルスの余波が今年だけでなく来年も持続するだろうというところにある。世界の主な識者は「新型コロナウイルス後に人類は完全に違う生活を送ることになるだろう」と診断する。非対面や自動化の拡散などパラダイムが変わったという意味だ。韓国の自営業はどのような形態であれ萎縮の道を歩むほかない。
時間はいくらも残っていない。政府は対面中心の自営業を非対面部門に領域を大幅に拡張するよう誘導しなければならない。過渡期で発生する失業者の保護、業種転換に向けた教育など、体系的で長期的な計画も用意されなければならない。ケンブリッジ大学のチャン・ハジュン教授(経済学)は著書『コロナ・サピエンス』で、「自営業は1回か2回間違えれば極貧層に転落したりもする。市場主義の元祖という英国ですら自営業者も賃金生活者のように80%まで政府で所得を補填するという政策を出した」と明らかにした。
自営業という森をしっかりと生かしてこそ失業大乱という洪水を防げる。韓国が新型コロナウイルス後に自営業者の墓場にならないようにするならば…。
キム・チャンギュ/経済ディレクター
#2020年9月、別の日の夕方。ある会社の社員8人が一堂に会した。飲み会のためだ。場所は? 各自の家だ。コンピュータの前には飲み物とおつまみが置かれている。在宅勤務をする彼らは業務終了後にテレビ会議システムに接続し話に夢中になった。いわゆる「リモート飲み会」だ。
新型コロナウイルスの感染拡大の余波でこのところよく見られる風景だ。1年前はどんな様子だっただろうか。おそらく清渓川で楽しくゲームをする大学生は学校周辺のネットカフェやビアホールでオンラインとオフラインの遊びを楽しんだだろう。会社員は会社近くの飲食店でいろいろな料理を楽しみ、あれこれ話を交わしただろう。
だが新型コロナウイルスが人と会う場所を1段階飛び超えさせた。ネットカフェ、カラオケ、ビアホール、カフェ、食堂だ。韓国でこれらの大部分が自営業者の領域だ。相当数の自営業者は対面のスペースを提供する。だが新型コロナウイルスはすべての人に多様なスタイルの「非対面」を強要する。新型コロナウイルスの勢力が大きくなるほど対面スペースで営業する自営業は萎縮するほかない。
新型コロナウイルスは韓国の自営業者の墓場になりつつある。自営業者は「打撃」程度ではなく「焦土化」したと絶叫する。中身はすでに燃え尽き炭になったと話す。打撃は状況がある程度好転すれば再び立ち上がることができる。焦土化は違う。相当数が再起の踏み台を用意しにくい状況という意味だ。
全国経済人連合会が休憩飲食業、外食業、宿泊業など22種類の業種を代表する協会を対象に上半期の業績と下半期の見通しを調査したところ、上半期の売上高は前年同期に比べ27%、純利益は33%減少した。下半期はさらに暗鬱だ。社会的距離確保(ソーシャルディスタンス)第2段階が維持されれば売上高が36%、純利益が42%減り、第3段階になれば売上高が46%、純利益が53%減りほぼ半減すると予想した。
外国人観光客であふれたソウル・明洞(ミョンドン)は2軒に1軒で休廃業の案内文が貼られている。周辺に行くほど事情はさらに深刻になる。ネットカフェ、カラオケだけでなく、休憩飲食業は売り上げが80%以上減り事実上業種そのものが消滅する危機に陥った。7月の自営業者は554万8000人で前年同月より12万7000人減った。減少幅は1年前の5倍に達する。
韓国の自営業は雇用において洪水の時に水を蓄えた森の役割をした。韓国の森が蓄えている水の量は昭陽江(ソヤンガン)ダムの10倍に達する。景気低迷などで失業者があふれれば彼らは自営業を通じて第2の人生を始めたり、再起の踏み台とする事例が多かった。だが新型コロナウイルスで自営業そのものが崩壊し雇用生態系が揺らいでいる。自営業という森が失われるため失業大乱という大洪水に襲われることになった。
韓国は自営業者が就業者の4人に1人の割合で先進国より過度に多い。経済協力開発機構(OECD)によると韓国の自営業者の割合は2018年基準で25.1%に達する。この割合は米国の約4倍に達し、ドイツと日本の2.4~2.5倍程度だ。ドイツと日本の水準に自営業者の割合が減っただけでも数百万人が職を失い路頭に追い出されることになる。
問題は新型コロナウイルスの余波が今年だけでなく来年も持続するだろうというところにある。世界の主な識者は「新型コロナウイルス後に人類は完全に違う生活を送ることになるだろう」と診断する。非対面や自動化の拡散などパラダイムが変わったという意味だ。韓国の自営業はどのような形態であれ萎縮の道を歩むほかない。
時間はいくらも残っていない。政府は対面中心の自営業を非対面部門に領域を大幅に拡張するよう誘導しなければならない。過渡期で発生する失業者の保護、業種転換に向けた教育など、体系的で長期的な計画も用意されなければならない。ケンブリッジ大学のチャン・ハジュン教授(経済学)は著書『コロナ・サピエンス』で、「自営業は1回か2回間違えれば極貧層に転落したりもする。市場主義の元祖という英国ですら自営業者も賃金生活者のように80%まで政府で所得を補填するという政策を出した」と明らかにした。
自営業という森をしっかりと生かしてこそ失業大乱という洪水を防げる。韓国が新型コロナウイルス後に自営業者の墓場にならないようにするならば…。
キム・チャンギュ/経済ディレクター
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