秋美愛(チュ・ミエ)事態は結局、第2のチョ・グク事態になった。平等と公正と正義を叫ぶ現政権の人たちが、実際には自分たちの城砦で特権を享受してきた事実がまた明るみに出たのだ。対応の基調も当時と全く変わらない。「適法」ならいかなる問題もないということだ。これだけは確実にいえる。適法というそのやり方で、庶民が子どもを試験なしに医学専門大学院に入れたり、電話だけで子どもの休暇を延長することはあり得ないということだ。
◆犯罪者の弁明技法
かなり以前にチョ・グク前法務長官はSNSでこのようなコメントを共有したことがある。「犯罪者の弁明技法。(1)絶対にしていないと白を切る(2)証拠が出てくれば特別なことではないという(3)特別なことならあなたもやったことがあるはずだ食いかかる(4)それでもだめなら尻尾を切る」。文在寅(ムン・ジェイン)政権もチョ・グク前長官とその家族の不正疑惑をまさにこの「技法」で処理した。秋美愛法務長官の事件も同じ軌跡を描くようだ。
当初、秋美愛長官は息子の件に一切関与していないと白を切った。「小説を書くつもりか」。これはすぐに嘘だと明らかになった。親が連絡を入れた記録があると、国防部が発表したのだ。議員室補佐官が部隊に何度か電話をした事実も明らかになった。さらに国防長官政策補佐官が通訳兵の選抜に関連してあちこちに不適切な請託をし、「行動に気をつけなさい」という警告を受けた事実も明らかになった。
証拠が出てくると第2段階に入った。「KATUSA(在韓米軍管轄下の韓国陸軍兵士)自体が楽な職務なので休暇を取ったか取らなかったかは特に意味のない話」(禹相虎議員) 、「電話をしたのは事実だが、圧力ではない」(金南局議員)、「補佐陣は公私の境界線にいて、問い合わせの電話は問題にならない」(洪翼杓議員)、さらには「親子関係も切らなければいけないのか」(張耿態議員)という抗弁、「連絡することは権力を行使することではない」(ソル・フン議員)という詭弁までが出てきた。
事件が「特別なこと」になると第3段階が始まった。支持者が「自分の子どもをよくみろ」と叫ぶ。金南局(キム・ナムグク)議員は野党に矛先を向けた。「野党には軍隊に行っていない人たちが多い」。ところが確認してみると、兵役免除を受けた議員は民主党が野党より3倍も多かった。兵役免除を受けた議員の2世の15人のうち14人が民主党所属だ。これに鼓舞された野党議員はチャットルームで軍隊に行った子どもの写真コンテストをした。
◆デジャブ
第3段階までは与野党に関係なく使用されてきた技法だ。民主党独特の特性が表れたのはやはり第4段階だ。なぜか。民主党の辞書には「尻尾切り」という言葉がないからだ。チョ・グク、尹美香(ユン・ミヒャン、正議連元理事長)も、秋美愛も切らない。民主党の方法は、この人たちがいかなる過ちも犯していない代案世界を創造し、国民をそこに移住させることだ。そのバーチャルリアリティはもちろん幼稚な陰謀説ととんでもない美談で構成される。
民主党の金鍾民(キム・ジョンミン)議員は「これらすべてのことが秋長官を中心に推進中の検察改革を揺さぶろうする陰謀」と主張する。キム・オジュン氏は「弾劾を否定する太極旗部隊の作品」と規定する。この陰謀説とセットになる感動的な美談も作られた。キム・オジュン氏のラジオ番組「ニュース工場」は匿名のKATUSA出身者を出し、ソ一等兵(秋長官の息子)は「十字靭帯破裂」だったと語った。彼は軍隊に行く必要もなかったのに行った愛国者だったということだ。
国防部はこれらすべてが適法だったと釈明した。その釈明は民主党と調整したものであることが確認された。国防部の立場ではなく民主党の立場だったということだ。国防部が法務部の支庁に転落したのだ。この件がある3カ月前、国防部は「診療目的の請願休暇は10日間であり、延長が必要な場合は軍病院療養審査委員会を通すべき」と指示したという。
最善の防御はやはり攻撃だ。秋長官は暴露者と彼の証言を報道した放送局を告訴した。数年前、秋長官はこう話していた。「内部告発者は大きな決心と勇気が必要であり、告発後には背信者と見なされて生きていくのが現実だ」。その告発が自分に向かうと考えが変わったようだ。さらにある民主党議員は情報提供者を犯罪者と呼び、検察に「徹底的な捜査」を促した。
◆長官なのか、母親なのか
明らかな事実は、ソ一等兵が休暇の延長を受ける過程で父母のうち一人が国防部に連絡し、補佐官が3回の電話をしたということだ。これと共に通訳兵の選抜過程にも民主党出身の国防長官政策補佐官の働きかけがあったことも明らかになった。龍山(ヨンサン)配置の請託の件も「最初から龍山に送るべきだった」というソ一等兵のコメントからみて、事前にそのための動きがあったと推定するのが自然だ。
事実は虚構で作られた彼らのマトリックスに脅威となるしかない。そのためか、秋長官が発表した謝罪文には一切「事実」に対する釈明が見られない。ただ、国民が求めてもいない三歩一拝をして膝を痛め、ハイヒールを履けない重症障害を得たという劇があるだけだ。したがって我々は謝罪を聞いてもそれが「何」に対する謝罪だったのかは分からない。
国会に呼ばれても秋長官は「事実」確認をすべて避けた。「実際、補佐官が電話したかどうか、また、どんな動機でしたのかは話す情況でない」。「連絡をしたのは夫だったのか」という質問には「週末夫婦なので夫に尋ねる情況でない」と話す。自分は嘘をついたことがないという。「私は黒いものを白いと話したことがない」。そうだ。ただ、黒いものを黒いと「話す情況でない」と言ったにすぎない。
不都合な事実を遮断したまま妄想に逃避した秋長官はその中で息子と共にこの事件の「最大の被害者」になった。「スポーツ経営学を勉強した」私の子どもがむしろ逆差別を受け、通訳兵の選抜に落ちて納得しがたいという。ここでは選抜方式が面接から抽選に変わったのが自分側の働きかけだったという話は抜けている。国会の壇上で彼女は「長官」ではなく、子どもの母親として行動した。
◆適法なら問題はない
「適法なら問題にならない」。請託はほとんど「忖度」の形で行われるため、法廷で直接的な指示を立証するのは容易でない。捜査チームも証人の重要な証言を抜いてきた人たちだ。たとえ疑惑が事実と明らかになっても確実に適用できる法律を探すのも難しい。今回も適法の基準で倫理的な責任を避けるという思惑だ。チョ・グク事態で見られたパターンと全く同じだ。
この事件の本質は、秋長官が公人としてやってはならない、いかがわしいことをしたということだ。補佐官は普段から息子をよく知っているとしても、国防長官の政策秘書官が通訳兵選抜のための請託をするのは秋長官本人の関与なしには考えにくいことだ。この事件で我々が投げかけるべき質問はこうだ。「自分の子どもだけを特別に考える母親が一国の正義を担当する部処のトップを務めてもよいのか」。
秋長官は24年前、こういう言葉で政治を始めた。「裕福な家庭の娘であれ貧しい家庭の息子であれ、社会に進む時には誰もが同等に出発できる機会均等の夢がある社会をつくりたい」。2016年の党代表選挙ではこのように叫んだ。「富を握った人であるほど、高位公職者であるほど、反則で特恵を受け、機会が公正でないヘル朝鮮になった」。その彼女が代表になると反則で特恵を享受しようとした。
秋長官の前任も変わらなかった。チョ・グク前長官もヘル朝鮮の現実を糾弾した。「どの家に生まれたかが人生を決めてしまう社会、ぞっとしませんか」。そういう人たちがそのぞっとする地獄の高い地位に座って魔王の役割をしている。その破廉恥にもかかわらずチョ・グクを任命しなければ「悪い前例を残すことになる」と言った大統領。「良い」と「悪い」の基準が逆さになった人だけに、その人の役割に期待することもできない。
ろうそくの火は地獄の火になった。悲しいのは、その地獄の囚人が「私たちがチョ・グク」「私たちが秋美愛」とし、自分の子どもを焼く火を熱心に煽るという事実。過去には特権を批判することもできた。今はそれまでが不可能になった。なぜか。反則がすでに規則として固まったからだ。彼らはすでに請託を「美談」と呼んでいる。このヘル朝鮮を創造された大魔王に問いかけたい。閣下、「どの家庭で生まれたかが人生を決めてしまう社会、ぞっとしませんか」。
陳重権(チン・ジュングォン)/元東洋大教授
◆犯罪者の弁明技法
かなり以前にチョ・グク前法務長官はSNSでこのようなコメントを共有したことがある。「犯罪者の弁明技法。(1)絶対にしていないと白を切る(2)証拠が出てくれば特別なことではないという(3)特別なことならあなたもやったことがあるはずだ食いかかる(4)それでもだめなら尻尾を切る」。文在寅(ムン・ジェイン)政権もチョ・グク前長官とその家族の不正疑惑をまさにこの「技法」で処理した。秋美愛法務長官の事件も同じ軌跡を描くようだ。
当初、秋美愛長官は息子の件に一切関与していないと白を切った。「小説を書くつもりか」。これはすぐに嘘だと明らかになった。親が連絡を入れた記録があると、国防部が発表したのだ。議員室補佐官が部隊に何度か電話をした事実も明らかになった。さらに国防長官政策補佐官が通訳兵の選抜に関連してあちこちに不適切な請託をし、「行動に気をつけなさい」という警告を受けた事実も明らかになった。
証拠が出てくると第2段階に入った。「KATUSA(在韓米軍管轄下の韓国陸軍兵士)自体が楽な職務なので休暇を取ったか取らなかったかは特に意味のない話」(禹相虎議員) 、「電話をしたのは事実だが、圧力ではない」(金南局議員)、「補佐陣は公私の境界線にいて、問い合わせの電話は問題にならない」(洪翼杓議員)、さらには「親子関係も切らなければいけないのか」(張耿態議員)という抗弁、「連絡することは権力を行使することではない」(ソル・フン議員)という詭弁までが出てきた。
事件が「特別なこと」になると第3段階が始まった。支持者が「自分の子どもをよくみろ」と叫ぶ。金南局(キム・ナムグク)議員は野党に矛先を向けた。「野党には軍隊に行っていない人たちが多い」。ところが確認してみると、兵役免除を受けた議員は民主党が野党より3倍も多かった。兵役免除を受けた議員の2世の15人のうち14人が民主党所属だ。これに鼓舞された野党議員はチャットルームで軍隊に行った子どもの写真コンテストをした。
◆デジャブ
第3段階までは与野党に関係なく使用されてきた技法だ。民主党独特の特性が表れたのはやはり第4段階だ。なぜか。民主党の辞書には「尻尾切り」という言葉がないからだ。チョ・グク、尹美香(ユン・ミヒャン、正議連元理事長)も、秋美愛も切らない。民主党の方法は、この人たちがいかなる過ちも犯していない代案世界を創造し、国民をそこに移住させることだ。そのバーチャルリアリティはもちろん幼稚な陰謀説ととんでもない美談で構成される。
民主党の金鍾民(キム・ジョンミン)議員は「これらすべてのことが秋長官を中心に推進中の検察改革を揺さぶろうする陰謀」と主張する。キム・オジュン氏は「弾劾を否定する太極旗部隊の作品」と規定する。この陰謀説とセットになる感動的な美談も作られた。キム・オジュン氏のラジオ番組「ニュース工場」は匿名のKATUSA出身者を出し、ソ一等兵(秋長官の息子)は「十字靭帯破裂」だったと語った。彼は軍隊に行く必要もなかったのに行った愛国者だったということだ。
国防部はこれらすべてが適法だったと釈明した。その釈明は民主党と調整したものであることが確認された。国防部の立場ではなく民主党の立場だったということだ。国防部が法務部の支庁に転落したのだ。この件がある3カ月前、国防部は「診療目的の請願休暇は10日間であり、延長が必要な場合は軍病院療養審査委員会を通すべき」と指示したという。
最善の防御はやはり攻撃だ。秋長官は暴露者と彼の証言を報道した放送局を告訴した。数年前、秋長官はこう話していた。「内部告発者は大きな決心と勇気が必要であり、告発後には背信者と見なされて生きていくのが現実だ」。その告発が自分に向かうと考えが変わったようだ。さらにある民主党議員は情報提供者を犯罪者と呼び、検察に「徹底的な捜査」を促した。
◆長官なのか、母親なのか
明らかな事実は、ソ一等兵が休暇の延長を受ける過程で父母のうち一人が国防部に連絡し、補佐官が3回の電話をしたということだ。これと共に通訳兵の選抜過程にも民主党出身の国防長官政策補佐官の働きかけがあったことも明らかになった。龍山(ヨンサン)配置の請託の件も「最初から龍山に送るべきだった」というソ一等兵のコメントからみて、事前にそのための動きがあったと推定するのが自然だ。
事実は虚構で作られた彼らのマトリックスに脅威となるしかない。そのためか、秋長官が発表した謝罪文には一切「事実」に対する釈明が見られない。ただ、国民が求めてもいない三歩一拝をして膝を痛め、ハイヒールを履けない重症障害を得たという劇があるだけだ。したがって我々は謝罪を聞いてもそれが「何」に対する謝罪だったのかは分からない。
国会に呼ばれても秋長官は「事実」確認をすべて避けた。「実際、補佐官が電話したかどうか、また、どんな動機でしたのかは話す情況でない」。「連絡をしたのは夫だったのか」という質問には「週末夫婦なので夫に尋ねる情況でない」と話す。自分は嘘をついたことがないという。「私は黒いものを白いと話したことがない」。そうだ。ただ、黒いものを黒いと「話す情況でない」と言ったにすぎない。
不都合な事実を遮断したまま妄想に逃避した秋長官はその中で息子と共にこの事件の「最大の被害者」になった。「スポーツ経営学を勉強した」私の子どもがむしろ逆差別を受け、通訳兵の選抜に落ちて納得しがたいという。ここでは選抜方式が面接から抽選に変わったのが自分側の働きかけだったという話は抜けている。国会の壇上で彼女は「長官」ではなく、子どもの母親として行動した。
◆適法なら問題はない
「適法なら問題にならない」。請託はほとんど「忖度」の形で行われるため、法廷で直接的な指示を立証するのは容易でない。捜査チームも証人の重要な証言を抜いてきた人たちだ。たとえ疑惑が事実と明らかになっても確実に適用できる法律を探すのも難しい。今回も適法の基準で倫理的な責任を避けるという思惑だ。チョ・グク事態で見られたパターンと全く同じだ。
この事件の本質は、秋長官が公人としてやってはならない、いかがわしいことをしたということだ。補佐官は普段から息子をよく知っているとしても、国防長官の政策秘書官が通訳兵選抜のための請託をするのは秋長官本人の関与なしには考えにくいことだ。この事件で我々が投げかけるべき質問はこうだ。「自分の子どもだけを特別に考える母親が一国の正義を担当する部処のトップを務めてもよいのか」。
秋長官は24年前、こういう言葉で政治を始めた。「裕福な家庭の娘であれ貧しい家庭の息子であれ、社会に進む時には誰もが同等に出発できる機会均等の夢がある社会をつくりたい」。2016年の党代表選挙ではこのように叫んだ。「富を握った人であるほど、高位公職者であるほど、反則で特恵を受け、機会が公正でないヘル朝鮮になった」。その彼女が代表になると反則で特恵を享受しようとした。
秋長官の前任も変わらなかった。チョ・グク前長官もヘル朝鮮の現実を糾弾した。「どの家に生まれたかが人生を決めてしまう社会、ぞっとしませんか」。そういう人たちがそのぞっとする地獄の高い地位に座って魔王の役割をしている。その破廉恥にもかかわらずチョ・グクを任命しなければ「悪い前例を残すことになる」と言った大統領。「良い」と「悪い」の基準が逆さになった人だけに、その人の役割に期待することもできない。
ろうそくの火は地獄の火になった。悲しいのは、その地獄の囚人が「私たちがチョ・グク」「私たちが秋美愛」とし、自分の子どもを焼く火を熱心に煽るという事実。過去には特権を批判することもできた。今はそれまでが不可能になった。なぜか。反則がすでに規則として固まったからだ。彼らはすでに請託を「美談」と呼んでいる。このヘル朝鮮を創造された大魔王に問いかけたい。閣下、「どの家庭で生まれたかが人生を決めてしまう社会、ぞっとしませんか」。
陳重権(チン・ジュングォン)/元東洋大教授
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