新型コロナウイルス流行後に流動性は140兆ウォン(約12兆5234億円)増えたが実体経済に資金はまともに回らずにいる。新型コロナウイルスがいつ終息するのか見通しが立たず、企業と家計が投資と消費を減らし資金は金融圏だけでぐるぐる回っている。このため株式と不動産など資産価格は上昇するが実体経済は沈滞に陥る資産と実体経済の乖離現象が激しくなっている。
15日の韓国銀行によると、7月の市中通貨量(M2)は3094兆2000億ウォンで、韓国政府と韓国銀行が新型コロナウイルスに対応するために本格的に金融を放出する前の2月の2954兆6000億ウォンに比べ140兆ウォンほど増えた。M2がこのように大きくなったのは韓国銀行が基準金利を年1.25%から年0.50%に引き下げ、韓国銀行と政府が市中に資金供給を増やした結果だ。
市中に少なくない資金が放出されたが、消費や投資など実体経済には流れずにいる。資金がどれだけ回っているかを示す通貨流通速度(名目国内総生産をM2で割った値)は4-6月期に0.63で過去最低を記録した。2018年10-12月期に0.71、2019年10-12月期に0.68と毎年低くなる中で、今年に入ってからは新型コロナウイルス流行でその下落幅が大きくなった。
通貨流通速度は貨幣1単位が一定期間にどれだけの付加価値(国民所得)を創出するかを示す。例えば通貨流通速度が1なら貨幣1単位を放出すると生産が1増えたという意味だ。通貨流通速度は1990年代まで1を上回っていた。
また別の指標である通貨乗数(通貨量÷マネタリーベース)も7月に14.9倍と過去最低を記録した。韓国銀行が市中に1ウォンを供給した時に市中通貨量は14.90ウォン増えたという意味だ。通貨乗数は2018年末と2019年末に15.6倍を記録して停滞状態を見せ、新型コロナウイルスの衝撃で過去初めて15倍以下に落ちた。
漢陽大学経済学部のハ・ジュンギョン教授は「政府が金融を緩めても実体経済に流れずに家計は資金を貯め込んでばかりいる。いわゆる『流動性の罠』状況で、韓国銀行の通貨政策悩みが大きくなった」と評価した。
◇市中通貨量3100兆ウォン…消費・投資につながらず沈滞持続
◇不動産・証券市場にだけ流動性集まり「資産バブル」の懸念増幅
韓国銀行と政府は新型コロナウイルスによる影響を克服するために資金を大幅に供給している。だがその効果は韓国銀行と政府の期待に満たずにいる。以前に比べ市中に資金が回る速度が落ちているためだ。増えた流動性は実体経済に流れ込まず金融圏と資産市場にだけとどまっている。このため韓国経済が流動性の罠に陥るのではないかとの懸念が出ている。
市中で資金がどれだけよく回っているかを見ることができる指標の通貨流通速度と通貨乗数は今年に入り過去最低を記録している。家計と企業が消費と投資などで資金をやりとりする活動がそれだけ減ったという意味だ。金融を緩めても金融圏の総預金が2月から7月までで63兆ウォン増え、実体経済には流れ込まないでいる。これにより今年の成長率は韓国銀行の見通しでマイナス1.3%と、通貨危機の時である1998年のマイナス5.1%以降で最悪になるものと予想される。
市中にあふれる流動性は短期資金化し、不動産・株式価格を釣り上げる「着火剤」の役割をしている。現金といつでも現金化できる要求払い預金、随時入出式貯蓄性預金などを合わせた短期資金は7月末基準1198兆922億ウォンで過去最大を記録した。昨年末に比べ152兆5000億ウォン増えた。
だが株価・不動産価格の上昇は生産活動の付加価値を求める国内総生産(GDP)に反映されない。株価・不動産価格急騰が実体経済にむしろ否定的影響を及ぼしかねないという分析が出ている。朴昇(パク・スン)元韓国銀行総裁は先月中央日報とのインタビューで「不動産など資産バブルの懸念が大きくなっている。市中流動性が住宅価格過熱をあおる最近の韓国経済の様相は1980~1990年代の日本経済と似ている」と話した。
専門家らは新型コロナウイルスで不安を感じた家計と企業が消費・投資を躊躇していると診断した。一進一退する不動産政策と追加補正予算案編成など政府の経済政策に対する不信も家計・企業を縮こまらせたという分析が出ている。7月の韓国の経済政策不確実性(EPU)指数は313.44で1990年に統計作成を開始してから7番目に高い数値を記録した。米ノースウエスタン大学のスコット・ベイカー教授らが開発したこの指数は基準値である100より高ければ不確実性拡大、低ければ縮小を意味する。
流動性の罠に陥った韓国経済の流れが日本の「失われた10年」と似た様相に流れかねないとの診断も出てきた。日本は景気が低迷した1998年9月に基準金利を年0.50%から年0.25%に引き下げ、2001年1月まで金利を据え置いた。だが1998~2001年の年平均成長率は0.5%にとどまった。低成長・低物価・低金利の3低現象が明確になった。日本人が低金利でも支出を増やさなかった影響だ。韓国も日本の前轍を踏んでいるという分析が出ている。
日本は金融危機以降にマイナス金利と極端な流動性拡大政策により流動性の罠から抜け出した。だが資本流出を懸念する非基軸通貨国の韓国の場合、こうした政策を展開しにくい。最近起きている流動性の罠現象がややもすると日本のような長期不況に入る契機になりかねないという懸念も大きくなっている。西江(ソガン)大学経済学部のホ・ジュンヨン教授は「通貨政策の実効性が大きくない状況でそれだけ政府の財政政策の役割が大きくなった。中長期的に規制などを緩和し短期的に適切なところに財政を注いで需要を引き出さなければならないだろう」と話した。
15日の韓国銀行によると、7月の市中通貨量(M2)は3094兆2000億ウォンで、韓国政府と韓国銀行が新型コロナウイルスに対応するために本格的に金融を放出する前の2月の2954兆6000億ウォンに比べ140兆ウォンほど増えた。M2がこのように大きくなったのは韓国銀行が基準金利を年1.25%から年0.50%に引き下げ、韓国銀行と政府が市中に資金供給を増やした結果だ。
市中に少なくない資金が放出されたが、消費や投資など実体経済には流れずにいる。資金がどれだけ回っているかを示す通貨流通速度(名目国内総生産をM2で割った値)は4-6月期に0.63で過去最低を記録した。2018年10-12月期に0.71、2019年10-12月期に0.68と毎年低くなる中で、今年に入ってからは新型コロナウイルス流行でその下落幅が大きくなった。
通貨流通速度は貨幣1単位が一定期間にどれだけの付加価値(国民所得)を創出するかを示す。例えば通貨流通速度が1なら貨幣1単位を放出すると生産が1増えたという意味だ。通貨流通速度は1990年代まで1を上回っていた。
また別の指標である通貨乗数(通貨量÷マネタリーベース)も7月に14.9倍と過去最低を記録した。韓国銀行が市中に1ウォンを供給した時に市中通貨量は14.90ウォン増えたという意味だ。通貨乗数は2018年末と2019年末に15.6倍を記録して停滞状態を見せ、新型コロナウイルスの衝撃で過去初めて15倍以下に落ちた。
漢陽大学経済学部のハ・ジュンギョン教授は「政府が金融を緩めても実体経済に流れずに家計は資金を貯め込んでばかりいる。いわゆる『流動性の罠』状況で、韓国銀行の通貨政策悩みが大きくなった」と評価した。
◇市中通貨量3100兆ウォン…消費・投資につながらず沈滞持続
◇不動産・証券市場にだけ流動性集まり「資産バブル」の懸念増幅
韓国銀行と政府は新型コロナウイルスによる影響を克服するために資金を大幅に供給している。だがその効果は韓国銀行と政府の期待に満たずにいる。以前に比べ市中に資金が回る速度が落ちているためだ。増えた流動性は実体経済に流れ込まず金融圏と資産市場にだけとどまっている。このため韓国経済が流動性の罠に陥るのではないかとの懸念が出ている。
市中で資金がどれだけよく回っているかを見ることができる指標の通貨流通速度と通貨乗数は今年に入り過去最低を記録している。家計と企業が消費と投資などで資金をやりとりする活動がそれだけ減ったという意味だ。金融を緩めても金融圏の総預金が2月から7月までで63兆ウォン増え、実体経済には流れ込まないでいる。これにより今年の成長率は韓国銀行の見通しでマイナス1.3%と、通貨危機の時である1998年のマイナス5.1%以降で最悪になるものと予想される。
市中にあふれる流動性は短期資金化し、不動産・株式価格を釣り上げる「着火剤」の役割をしている。現金といつでも現金化できる要求払い預金、随時入出式貯蓄性預金などを合わせた短期資金は7月末基準1198兆922億ウォンで過去最大を記録した。昨年末に比べ152兆5000億ウォン増えた。
だが株価・不動産価格の上昇は生産活動の付加価値を求める国内総生産(GDP)に反映されない。株価・不動産価格急騰が実体経済にむしろ否定的影響を及ぼしかねないという分析が出ている。朴昇(パク・スン)元韓国銀行総裁は先月中央日報とのインタビューで「不動産など資産バブルの懸念が大きくなっている。市中流動性が住宅価格過熱をあおる最近の韓国経済の様相は1980~1990年代の日本経済と似ている」と話した。
専門家らは新型コロナウイルスで不安を感じた家計と企業が消費・投資を躊躇していると診断した。一進一退する不動産政策と追加補正予算案編成など政府の経済政策に対する不信も家計・企業を縮こまらせたという分析が出ている。7月の韓国の経済政策不確実性(EPU)指数は313.44で1990年に統計作成を開始してから7番目に高い数値を記録した。米ノースウエスタン大学のスコット・ベイカー教授らが開発したこの指数は基準値である100より高ければ不確実性拡大、低ければ縮小を意味する。
流動性の罠に陥った韓国経済の流れが日本の「失われた10年」と似た様相に流れかねないとの診断も出てきた。日本は景気が低迷した1998年9月に基準金利を年0.50%から年0.25%に引き下げ、2001年1月まで金利を据え置いた。だが1998~2001年の年平均成長率は0.5%にとどまった。低成長・低物価・低金利の3低現象が明確になった。日本人が低金利でも支出を増やさなかった影響だ。韓国も日本の前轍を踏んでいるという分析が出ている。
日本は金融危機以降にマイナス金利と極端な流動性拡大政策により流動性の罠から抜け出した。だが資本流出を懸念する非基軸通貨国の韓国の場合、こうした政策を展開しにくい。最近起きている流動性の罠現象がややもすると日本のような長期不況に入る契機になりかねないという懸念も大きくなっている。西江(ソガン)大学経済学部のホ・ジュンヨン教授は「通貨政策の実効性が大きくない状況でそれだけ政府の財政政策の役割が大きくなった。中長期的に規制などを緩和し短期的に適切なところに財政を注いで需要を引き出さなければならないだろう」と話した。
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