ポーランド出身のアダム・プシェボスキ米ニューヨーク大学政治学科教授は著書『民主主義の危機』で、いま民主主義の危機という幽霊が世界を飛び回っているとした。彼は民主的制度と規範が徐々に侵食され、反民主勢力が「泥棒猫のようにこっそりと」民主主義を転覆させていると明らかにした。「民主政権」が法的装置を反民主的目的で利用し民主主義を後退させているという診断も出した。民主主義の危機は脆弱な新興民主主義だけでなく強化された先進民主主義でも起きている。
現在先進民主主義で起きている危機の兆候はステルス的民主主義侵食と退行だ。新自由主義の世界化が勢いよく進行し社会経済的不平等と二極化が深化している。階級・ジェンダー・人種・種族・宗教対立が激化し、先進民主主義は2016年に英国の欧州連合(EU)離脱と米国のトランプ主義で危機の兆候を現した。
社会経済的二極化で政治も二極化し、政党間の極端な対立が日常化した。極右政治勢力が浮上し、自国民優先主義(ネイティビズム)が盛んになった。移民者・人種・女性嫌悪が蔓延し、「ストロングマン政治」が出現した。これに加えてフェイスブックやユーチューブのようなオンラインメディアで1人ニューメディアが反体制的極右または極左ポピュリズムを拡散し、民主主義制度と文化基盤が侵食されている。
◇非正常が正常なニューノーマル民主主義
米国の第4代大統領であるマディソンは1787年に米国憲法をデザインしポピュリズムから代議民主主義を保護するために、権力分立、牽制と均衡、連邦主義、法の支配、権利章典のような制度的装置を用意した。しかし現在の米国民主主義は二極化とポピュリズムがひどすぎてマディソンの憲法的保護装置だけでは民主主義を正常に戻すことはできない、非正常が正常な「ニューノーマル」民主主義時代に入った。
新興民主主義はストロングマンの復活で危機を迎えている。インド、トルコ、ブラジルは二回以上の政権交替で民主主義強化テストを通過したが、モディ、エルドアン、ボルソナルのようなストロングマンが民主主義を後退させるのを防ぐことはできなかった。ハンガリーのオルバン、ベネズエラのマドゥロ、フィリピンのドゥテルテのようなストロングマンも民主主義を退行させている。
ストロングマンは司法府を脅迫し、議会を通法部にし、公共メディアを政府側規制委員会の統制下に置いている。また、官僚らを政権利益に服務させ、法を選択的に執行し、選挙不正を行っている。ストロングマンは一度に民主主義を転覆させず、自由民主主義の法・制度を「合法的に」ひとつずつ打撃するステルス方式で民主主義を侵食している。
2016年の英国のEU離脱とトランピズムは先進民主主義の後退をもたらしたが、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾は広場民主主義と代議民主主義が結合した平和的で合法的手続きによりなされた。2017年に韓国人は朴大統領罷免後に選挙を通じて大統領を選出することにより民主主義危機を平和的に克服した。
現在文在寅(ムン・ジェイン)大統領が韓国の民主主義を転覆させる可能性はないように見え、4月15日の総選挙で執権与党が176議席という圧倒的議席を確保した後も変わることはないだろう。それでも現在の韓国の民主主義は民主主義侵食の兆候を見せている。
まず、キリスト教右派、朴槿恵追従勢力、既得権集団、右派ユーチューバーらで構成された右派ポピュリストがオンライン・オフラインで広場を占領し政府の実績と関係なく無条件政権退陣運動を行うことにより政権支持者と反対派の間で対立の政治が激しくなり民主的妥協の空間が減っている。
2番目に、政党に対する信頼が下落し政党の代議機能が弱まっている。その結果政党政治の空洞化が起きている。3番目に、非選出職の「執政官官僚ら」(guardians)の能力主義支配の強化が各種国家規制委員会、反独占規制機関、金融監督機関、検察などで見られている。専門家執政官支配の拡大は専門家執政官に対する民主的統制を弱め代議機関の管轄領域を侵食している。
◇民主主義の侵食防ぐ制度的革新が切実
現在起きている民主主義の危機は軍事クーデターや民衆蜂起のため民主主義が暴力的に崩壊する伝統的危機ではない。選出された政府により民主主義が徐々に侵食され、ステルスのように転覆する危機という点で前例のない危機だ。
韓国の民主主義はこうした民主主義危機に対する免疫力を育てなければならない。まず、市民エンパワーメントを通じて市民が民主化勢力を支援し、民主主義を後退させようとする勢力を制御しなければならない。2番目に、専門家ガーディアン集団による改革サボタージュを防ぐために政党と議会をはじめとする代議機関による民主的統制を強化しなければならない。3番目に、民主主義侵食と転覆を防止できる制度的革新を通じ韓国の民主主義を危機に強い免疫力を持つ難攻不落の民主主義として再創造しなければならない。
イム・ヒョクベク/高麗大学名誉教授、光州化学技術院(GIST)碩座教授、リセットコリア運営委員
現在先進民主主義で起きている危機の兆候はステルス的民主主義侵食と退行だ。新自由主義の世界化が勢いよく進行し社会経済的不平等と二極化が深化している。階級・ジェンダー・人種・種族・宗教対立が激化し、先進民主主義は2016年に英国の欧州連合(EU)離脱と米国のトランプ主義で危機の兆候を現した。
社会経済的二極化で政治も二極化し、政党間の極端な対立が日常化した。極右政治勢力が浮上し、自国民優先主義(ネイティビズム)が盛んになった。移民者・人種・女性嫌悪が蔓延し、「ストロングマン政治」が出現した。これに加えてフェイスブックやユーチューブのようなオンラインメディアで1人ニューメディアが反体制的極右または極左ポピュリズムを拡散し、民主主義制度と文化基盤が侵食されている。
◇非正常が正常なニューノーマル民主主義
米国の第4代大統領であるマディソンは1787年に米国憲法をデザインしポピュリズムから代議民主主義を保護するために、権力分立、牽制と均衡、連邦主義、法の支配、権利章典のような制度的装置を用意した。しかし現在の米国民主主義は二極化とポピュリズムがひどすぎてマディソンの憲法的保護装置だけでは民主主義を正常に戻すことはできない、非正常が正常な「ニューノーマル」民主主義時代に入った。
新興民主主義はストロングマンの復活で危機を迎えている。インド、トルコ、ブラジルは二回以上の政権交替で民主主義強化テストを通過したが、モディ、エルドアン、ボルソナルのようなストロングマンが民主主義を後退させるのを防ぐことはできなかった。ハンガリーのオルバン、ベネズエラのマドゥロ、フィリピンのドゥテルテのようなストロングマンも民主主義を退行させている。
ストロングマンは司法府を脅迫し、議会を通法部にし、公共メディアを政府側規制委員会の統制下に置いている。また、官僚らを政権利益に服務させ、法を選択的に執行し、選挙不正を行っている。ストロングマンは一度に民主主義を転覆させず、自由民主主義の法・制度を「合法的に」ひとつずつ打撃するステルス方式で民主主義を侵食している。
2016年の英国のEU離脱とトランピズムは先進民主主義の後退をもたらしたが、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾は広場民主主義と代議民主主義が結合した平和的で合法的手続きによりなされた。2017年に韓国人は朴大統領罷免後に選挙を通じて大統領を選出することにより民主主義危機を平和的に克服した。
現在文在寅(ムン・ジェイン)大統領が韓国の民主主義を転覆させる可能性はないように見え、4月15日の総選挙で執権与党が176議席という圧倒的議席を確保した後も変わることはないだろう。それでも現在の韓国の民主主義は民主主義侵食の兆候を見せている。
まず、キリスト教右派、朴槿恵追従勢力、既得権集団、右派ユーチューバーらで構成された右派ポピュリストがオンライン・オフラインで広場を占領し政府の実績と関係なく無条件政権退陣運動を行うことにより政権支持者と反対派の間で対立の政治が激しくなり民主的妥協の空間が減っている。
2番目に、政党に対する信頼が下落し政党の代議機能が弱まっている。その結果政党政治の空洞化が起きている。3番目に、非選出職の「執政官官僚ら」(guardians)の能力主義支配の強化が各種国家規制委員会、反独占規制機関、金融監督機関、検察などで見られている。専門家執政官支配の拡大は専門家執政官に対する民主的統制を弱め代議機関の管轄領域を侵食している。
◇民主主義の侵食防ぐ制度的革新が切実
現在起きている民主主義の危機は軍事クーデターや民衆蜂起のため民主主義が暴力的に崩壊する伝統的危機ではない。選出された政府により民主主義が徐々に侵食され、ステルスのように転覆する危機という点で前例のない危機だ。
韓国の民主主義はこうした民主主義危機に対する免疫力を育てなければならない。まず、市民エンパワーメントを通じて市民が民主化勢力を支援し、民主主義を後退させようとする勢力を制御しなければならない。2番目に、専門家ガーディアン集団による改革サボタージュを防ぐために政党と議会をはじめとする代議機関による民主的統制を強化しなければならない。3番目に、民主主義侵食と転覆を防止できる制度的革新を通じ韓国の民主主義を危機に強い免疫力を持つ難攻不落の民主主義として再創造しなければならない。
イム・ヒョクベク/高麗大学名誉教授、光州化学技術院(GIST)碩座教授、リセットコリア運営委員
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