民主党に有利に傾いていた運動場が奇跡のように平衡になった。誰も次の大統領選挙の最終勝者を断言できなくなった。与野党を行き来する風雲児、金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員長招聘の効果だ。
今の第1野党は長期間にわたり大韓民国の主流だった。しかし3年半前の朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾以降、大統領選挙、地方選挙、総選挙で惨敗して奈落に落ちた。自由韓国党、未来統合党、国民の力と順に改名しながら気力を回復している。
国民の力は2002年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏を大統領にした「ノサモ(盧武鉉を愛する会)」の政治・言論改革ネットワークと同じ名称だ。英語で「People Power Party」。中国と北朝鮮の英語表記に含まれるPeople(人民)を前に出した進歩・社会主義の雰囲気の造語だ。保守イメージを消すための苦肉の策だった。反発があったが、金鍾仁委員長は動じなかった。
金鍾仁氏の第1野党改造は時代との不和を解消して間隙を狭める過程だ。既得権・反共・守旧保守を一気に中道・合理路線に包装した。アスファルト右派の実力者、全光フン(チョン・グァンフン)牧師との決別はハイライトだった。5・18民主墓地でひざまずいて謝罪したことで、総選挙前に黄教安(ファン・ギョアン)代表と一体となって動いた全光フン勢力を政治的に去勢した。
「神の私にふざけたことをすれば死ぬ」と言いながら「文在寅(ムン・ジェイン)下野」のために青瓦台に進撃しようという極端主義者の全光フン牧師はこの時代の常識と衝突した。コロナ防疫が危機を迎えた中でも光化門(クァンファムン)集会を主導し、本人を含む信者約1000人が感染した。西暦2世紀、3世紀に疫病がローマを襲った当時、キリスト教は命がけで感染者を助ける連帯と犠牲の共同体だった。世界の宗教になった原動力だ。1919年の植民地朝鮮のキリスト教徒は人口の2%だった。しかし三一独立運動民族代表33人のうち16人がキリスト教徒だった。防疫を妨害する極端主義勢力はキリスト教の歴史の汚点だ。
金鍾仁氏は基本所得を政綱1号と明文化し、男女平等という進歩的な議題を抱き込んだ。しかし金鍾仁氏のワンマンショーだけでは「国民の力」の根本は変わらない。党自体が全光フン極右勢力と確実に分離しなければいけない。
第1野党の主流の嶺南(ヨンナム)の多選の議員は、首都圏と湖南(ホナム、全羅道)を狙った金鍾仁氏の「左クリック」を受け入れがたいだろう。党内の呼応が制限的な理由だ。金鍾仁氏は2012年、進歩の核心議題の経済民主化で朴槿恵(パク・クネ)候補を当選させたが、「兎食狗烹」となった。経済民主化は痕跡もなく消えた。不渡り小切手を持って保守の城門に再び入った金鍾仁氏の革新の前途は依然として霧中だ。
文在寅大統領はどうか。第1野党に全光フン牧師の極端主義が毒なら、文大統領には「ムンパ(文大統領の熱烈支持者)」が運命的な克服対象だ。ムンパは大統領の言動がもたらす一切の状況と反応に深く介入する。いかなる批判も異論も「不敬」となる。共和国の市民を王朝の臣民に格下げさせる「親衛クーデター」が彼らの日常だ。執権勢力の誰も近衛兵の監視網を避けることができない。立法・司法・行政府も彼らの偏狭な世界観に萎縮している。
こうした状況であるため、国家の重大事が緻密な検討と公論化の過程なく突然推進される。23回のでたらめな不動産対策で国民を絶望させ、コロナ非常防疫の渦中に医師定員拡大を持ち出して混乱を呼んだ。診療報酬体系の見直しなしには百薬が無効という医療界の声には耳をふさいだ。
文大統領は先日、教会指導者に会い、「大統領を罵って気持ちが収まるのならそれもよい」と述べた。しかしムンパは大統領を「無謬の帝王」にして久しい。大統領がかばうチョ・グク前法務長官を批判すれば「積弊」、反日強硬路線と違って韓日関係を改善しようといえば「土着倭寇」と烙印を押す。メッセージ自体でなくメッセンジャーを攻撃する。無条件に沈黙して従えということだ。「私を罵ってもよい」という大統領の言葉は虚言だ。大統領の上にムンパの極端主義がある。
1930年代初め、スウェーデン保守党はヒトラーを支持したスウェーデン民族主義青年同盟を除名した。党員2万5000人が離党し、地方選挙で苦戦した。しかし極端主義勢力との距離を置く戦略で反民主主義勢力の登場を阻止することができた。ハーバード大政治学教授のスティーブン・レビツキー氏とダニエル・ジブラット氏は著書『民主主義の死に方』で「主要政党が門番の役割を果たすためには極端主義勢力を孤立させて抑制する力がなければいけない」と主張した。韓国の民主党は果たしてムンパを抑えることができるのだろうか。国民は極端主義勢力の悪行に疲れている。金鍾仁氏がいる国民の力は全光フン極端主義勢力を政治的に追放した。文大統領も決心が求められる。洞窟の中から手のひらほどの視野で世の中を広々と眺めていると錯覚するムンパの狂信的崇拝から抜け出さなければいけない。本人も生きて、国も生きる道だ。
李夏慶(イ・ハギョン)/主筆
今の第1野党は長期間にわたり大韓民国の主流だった。しかし3年半前の朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾以降、大統領選挙、地方選挙、総選挙で惨敗して奈落に落ちた。自由韓国党、未来統合党、国民の力と順に改名しながら気力を回復している。
国民の力は2002年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏を大統領にした「ノサモ(盧武鉉を愛する会)」の政治・言論改革ネットワークと同じ名称だ。英語で「People Power Party」。中国と北朝鮮の英語表記に含まれるPeople(人民)を前に出した進歩・社会主義の雰囲気の造語だ。保守イメージを消すための苦肉の策だった。反発があったが、金鍾仁委員長は動じなかった。
金鍾仁氏の第1野党改造は時代との不和を解消して間隙を狭める過程だ。既得権・反共・守旧保守を一気に中道・合理路線に包装した。アスファルト右派の実力者、全光フン(チョン・グァンフン)牧師との決別はハイライトだった。5・18民主墓地でひざまずいて謝罪したことで、総選挙前に黄教安(ファン・ギョアン)代表と一体となって動いた全光フン勢力を政治的に去勢した。
「神の私にふざけたことをすれば死ぬ」と言いながら「文在寅(ムン・ジェイン)下野」のために青瓦台に進撃しようという極端主義者の全光フン牧師はこの時代の常識と衝突した。コロナ防疫が危機を迎えた中でも光化門(クァンファムン)集会を主導し、本人を含む信者約1000人が感染した。西暦2世紀、3世紀に疫病がローマを襲った当時、キリスト教は命がけで感染者を助ける連帯と犠牲の共同体だった。世界の宗教になった原動力だ。1919年の植民地朝鮮のキリスト教徒は人口の2%だった。しかし三一独立運動民族代表33人のうち16人がキリスト教徒だった。防疫を妨害する極端主義勢力はキリスト教の歴史の汚点だ。
金鍾仁氏は基本所得を政綱1号と明文化し、男女平等という進歩的な議題を抱き込んだ。しかし金鍾仁氏のワンマンショーだけでは「国民の力」の根本は変わらない。党自体が全光フン極右勢力と確実に分離しなければいけない。
第1野党の主流の嶺南(ヨンナム)の多選の議員は、首都圏と湖南(ホナム、全羅道)を狙った金鍾仁氏の「左クリック」を受け入れがたいだろう。党内の呼応が制限的な理由だ。金鍾仁氏は2012年、進歩の核心議題の経済民主化で朴槿恵(パク・クネ)候補を当選させたが、「兎食狗烹」となった。経済民主化は痕跡もなく消えた。不渡り小切手を持って保守の城門に再び入った金鍾仁氏の革新の前途は依然として霧中だ。
文在寅大統領はどうか。第1野党に全光フン牧師の極端主義が毒なら、文大統領には「ムンパ(文大統領の熱烈支持者)」が運命的な克服対象だ。ムンパは大統領の言動がもたらす一切の状況と反応に深く介入する。いかなる批判も異論も「不敬」となる。共和国の市民を王朝の臣民に格下げさせる「親衛クーデター」が彼らの日常だ。執権勢力の誰も近衛兵の監視網を避けることができない。立法・司法・行政府も彼らの偏狭な世界観に萎縮している。
こうした状況であるため、国家の重大事が緻密な検討と公論化の過程なく突然推進される。23回のでたらめな不動産対策で国民を絶望させ、コロナ非常防疫の渦中に医師定員拡大を持ち出して混乱を呼んだ。診療報酬体系の見直しなしには百薬が無効という医療界の声には耳をふさいだ。
文大統領は先日、教会指導者に会い、「大統領を罵って気持ちが収まるのならそれもよい」と述べた。しかしムンパは大統領を「無謬の帝王」にして久しい。大統領がかばうチョ・グク前法務長官を批判すれば「積弊」、反日強硬路線と違って韓日関係を改善しようといえば「土着倭寇」と烙印を押す。メッセージ自体でなくメッセンジャーを攻撃する。無条件に沈黙して従えということだ。「私を罵ってもよい」という大統領の言葉は虚言だ。大統領の上にムンパの極端主義がある。
1930年代初め、スウェーデン保守党はヒトラーを支持したスウェーデン民族主義青年同盟を除名した。党員2万5000人が離党し、地方選挙で苦戦した。しかし極端主義勢力との距離を置く戦略で反民主主義勢力の登場を阻止することができた。ハーバード大政治学教授のスティーブン・レビツキー氏とダニエル・ジブラット氏は著書『民主主義の死に方』で「主要政党が門番の役割を果たすためには極端主義勢力を孤立させて抑制する力がなければいけない」と主張した。韓国の民主党は果たしてムンパを抑えることができるのだろうか。国民は極端主義勢力の悪行に疲れている。金鍾仁氏がいる国民の力は全光フン極端主義勢力を政治的に追放した。文大統領も決心が求められる。洞窟の中から手のひらほどの視野で世の中を広々と眺めていると錯覚するムンパの狂信的崇拝から抜け出さなければいけない。本人も生きて、国も生きる道だ。
李夏慶(イ・ハギョン)/主筆
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