「交渉の場ではできる限り友好的に行動する考えだ。私は俳優のようにドラマチックに行動するタイプではない」。
米中貿易交渉代表のロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が1984年、ニューヨークタイムズ(NYT)のインタビューで述べた言葉だ。NYTは当時、レーガン大統領がUSTR副代表に抜てきした37歳のライトハイザー氏を「若き通商専門家」として大きく取り上げた。
しかし実際に交渉の場でライトハイザー氏を相手にした人たちは彼の自評に同意しない可能性が高い。ライトハイザー氏の交渉スタイルをよく知るある外交関係者は27日の電話で匿名を前提に「ライトハイザー氏は『闘鶏』として知られている」と伝えた。
このためトランプ大統領が引退後に通商弁護士として活躍していたライトハイザー氏を2017年にUSTR代表として招くと、フォーリンポリシーは「通商のツァー(czar、皇帝)が帰ってきた」と歓迎した。
ライトハイザー氏が好んで使う武器は「スーパー301条(通商法301条)」だ。米国が貿易対象国に対して世界貿易機関(WTO)が禁止する差別的な報復も可能にした措置だ。韓国もスーパー301条のため輸出の道がふさがる危機を何度か迎えている。
ライトハイザー氏と交渉テーブルで向き合った人物には青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長もいる。通商専門法曹人で構成された小数精鋭ローファーム「スキャデン」出身の2人は、2017-18年の韓米自由貿易協定(FTA)交渉の場で向き合った。
◆実用主義の優れた通商専門家
ライトハイザー氏に苦しめられた国が日本だ。急成長する日本経済にブレーキをかける「プラザ合意」で核心的な役割をした人物がライトハイザー氏だ。プラザ合意は円高ドル安を誘導する措置だ。その後、日本経済は円高による輸出不振などでバブル崩壊を迎えた。
峨山政策研究院のジェームス・キム・ワシントン事務所長兼選任研究委員は27日の電話で「ライトハイザー氏は米国の通商利益を最優先にする交渉家」とし「交渉にプラスになるのなら立場も変える柔軟性を備えているというのがワシントン政界の評価」と伝えた。日本に対する良くない感情からプラザ合意を引き出したのではなく、当時はそれが米国の国益になるため猪突的に交渉したということだ。
通商専門家としてライトハイザー氏の柔軟性と実用主義を表す事例が日本に対する彼の態度だ。ライトハイザー氏は新しいターゲットの中国に対応するため日本と手を握った。
ライトハイザー氏は27日、朝日新聞のインタビューで「米日貿易交渉で日本側の立場に配慮する」とし「80年代に日本と交渉していたころ、日本の歴史を学び始め、とても好きになった」と述べた。交渉相手の茂木敏充外相については「すばらしい」という表現まで使った。
朝日新聞は「80年代の貿易摩擦を通じて強硬派として知られるが、米国の経済・軍事覇権をおびやかす中国をにらみ、日米連携を強く訴えた」と伝えた。
◆ハト派とタカ派の間
トランプ大統領の経済参謀は大きく親中穏健派(ハト派)と反中強硬派(タカ派)に分かれる。ライトハイザー氏は当初、タカ派だった。ハト派にはムニューシン財務長官、トランプ大統領の娘婿のクシュナー上級顧問、クドロー国家経済会議(NEC)委員長が属する。ロス商務長官は当初、穏健派に分類されたが、最近はファーウェイ(華為技術)制裁で強硬派に転じた。
フィナンシャルタイムズ(FT)は6月、「ライトハイザー氏がトランプ時代の貿易戦争に再点火する可能性がある」とし、中国に対する彼の強硬な立場に注目した。しかしこの数カ月間のライトハイザー氏の態度を見ると、強硬一辺倒とは言えないというのがワシントンの大半の意見という。実用主義者の姿を表したのだ。
ジェームズ・キム選任研究委員は「ワシントンの話を聞いてみると、ライトハイザー氏は強硬と穏健の間にスタンスを変えたようだ」とし「中国とのデカップリングを甘受して中国を抑えるべきという強硬派でなく、中国との貿易を維持しながら米国の利益を守るということだ」と伝えた。このようにスタンスが変わったのは、ライトハイザー氏の中国側カウンターパート、劉鶴副首相とのネットワークが大きく影響したという。
実際、ライトハイザー氏は25日、第1段階の米中貿易合意を生かした。トランプ大統領が「私はもう中国との貿易交渉に興味を失った」と合意破棄を示唆しながら圧力を加えたが、劉鶴副首相との電話会談後に「第1段階の貿易合意を点検し、今後の履行案について議論した」と明らかにした
ライトハイザー氏がハト派に完ぺきな変身をしたと期待するのは早い。ライトハイザー氏が残した言葉の中には「見えざる手が解決すると信じる人たちは間違い」というものがある。猪突的な交渉態度に対する指摘について、ライトハイザー氏は「外国の政府が『見えざる手』を操縦している」とし、米国政府の強い介入を擁護する。中国体制の特性を勘案すると、彼が中国に対する警戒を緩めることは期待しにくいということだ。
米大統領選挙(11月3日)日程上しばらくは状況を眺めるだろうが、いつかまた鋭いタカの爪を見せる可能性があるということだ。
米中貿易交渉代表のロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が1984年、ニューヨークタイムズ(NYT)のインタビューで述べた言葉だ。NYTは当時、レーガン大統領がUSTR副代表に抜てきした37歳のライトハイザー氏を「若き通商専門家」として大きく取り上げた。
しかし実際に交渉の場でライトハイザー氏を相手にした人たちは彼の自評に同意しない可能性が高い。ライトハイザー氏の交渉スタイルをよく知るある外交関係者は27日の電話で匿名を前提に「ライトハイザー氏は『闘鶏』として知られている」と伝えた。
このためトランプ大統領が引退後に通商弁護士として活躍していたライトハイザー氏を2017年にUSTR代表として招くと、フォーリンポリシーは「通商のツァー(czar、皇帝)が帰ってきた」と歓迎した。
ライトハイザー氏が好んで使う武器は「スーパー301条(通商法301条)」だ。米国が貿易対象国に対して世界貿易機関(WTO)が禁止する差別的な報復も可能にした措置だ。韓国もスーパー301条のため輸出の道がふさがる危機を何度か迎えている。
ライトハイザー氏と交渉テーブルで向き合った人物には青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長もいる。通商専門法曹人で構成された小数精鋭ローファーム「スキャデン」出身の2人は、2017-18年の韓米自由貿易協定(FTA)交渉の場で向き合った。
◆実用主義の優れた通商専門家
ライトハイザー氏に苦しめられた国が日本だ。急成長する日本経済にブレーキをかける「プラザ合意」で核心的な役割をした人物がライトハイザー氏だ。プラザ合意は円高ドル安を誘導する措置だ。その後、日本経済は円高による輸出不振などでバブル崩壊を迎えた。
峨山政策研究院のジェームス・キム・ワシントン事務所長兼選任研究委員は27日の電話で「ライトハイザー氏は米国の通商利益を最優先にする交渉家」とし「交渉にプラスになるのなら立場も変える柔軟性を備えているというのがワシントン政界の評価」と伝えた。日本に対する良くない感情からプラザ合意を引き出したのではなく、当時はそれが米国の国益になるため猪突的に交渉したということだ。
通商専門家としてライトハイザー氏の柔軟性と実用主義を表す事例が日本に対する彼の態度だ。ライトハイザー氏は新しいターゲットの中国に対応するため日本と手を握った。
ライトハイザー氏は27日、朝日新聞のインタビューで「米日貿易交渉で日本側の立場に配慮する」とし「80年代に日本と交渉していたころ、日本の歴史を学び始め、とても好きになった」と述べた。交渉相手の茂木敏充外相については「すばらしい」という表現まで使った。
朝日新聞は「80年代の貿易摩擦を通じて強硬派として知られるが、米国の経済・軍事覇権をおびやかす中国をにらみ、日米連携を強く訴えた」と伝えた。
◆ハト派とタカ派の間
トランプ大統領の経済参謀は大きく親中穏健派(ハト派)と反中強硬派(タカ派)に分かれる。ライトハイザー氏は当初、タカ派だった。ハト派にはムニューシン財務長官、トランプ大統領の娘婿のクシュナー上級顧問、クドロー国家経済会議(NEC)委員長が属する。ロス商務長官は当初、穏健派に分類されたが、最近はファーウェイ(華為技術)制裁で強硬派に転じた。
フィナンシャルタイムズ(FT)は6月、「ライトハイザー氏がトランプ時代の貿易戦争に再点火する可能性がある」とし、中国に対する彼の強硬な立場に注目した。しかしこの数カ月間のライトハイザー氏の態度を見ると、強硬一辺倒とは言えないというのがワシントンの大半の意見という。実用主義者の姿を表したのだ。
ジェームズ・キム選任研究委員は「ワシントンの話を聞いてみると、ライトハイザー氏は強硬と穏健の間にスタンスを変えたようだ」とし「中国とのデカップリングを甘受して中国を抑えるべきという強硬派でなく、中国との貿易を維持しながら米国の利益を守るということだ」と伝えた。このようにスタンスが変わったのは、ライトハイザー氏の中国側カウンターパート、劉鶴副首相とのネットワークが大きく影響したという。
実際、ライトハイザー氏は25日、第1段階の米中貿易合意を生かした。トランプ大統領が「私はもう中国との貿易交渉に興味を失った」と合意破棄を示唆しながら圧力を加えたが、劉鶴副首相との電話会談後に「第1段階の貿易合意を点検し、今後の履行案について議論した」と明らかにした
ライトハイザー氏がハト派に完ぺきな変身をしたと期待するのは早い。ライトハイザー氏が残した言葉の中には「見えざる手が解決すると信じる人たちは間違い」というものがある。猪突的な交渉態度に対する指摘について、ライトハイザー氏は「外国の政府が『見えざる手』を操縦している」とし、米国政府の強い介入を擁護する。中国体制の特性を勘案すると、彼が中国に対する警戒を緩めることは期待しにくいということだ。
米大統領選挙(11月3日)日程上しばらくは状況を眺めるだろうが、いつかまた鋭いタカの爪を見せる可能性があるということだ。
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