映画『友へ チング』でチャン・ドンゴンがユ・オソンに言った名セリフ「おれがお前のシダバリか」の「シダバリ」(使いっ走り)も日本語と考える韓国の人が多いが、事実日本では使わない言葉だ。部下を意味する言葉という。「シダ」は下という意味の日本語だろう。「バリ」はさまざまな説があるが、軍人を「軍バリ」という時のように若干おとしめる感じの「バリ」のようだ。
日本語だが韓国で別の意味で使われる場合もある。例えば韓国の新聞社や出版社などで使う「ヤマ」という言葉。日本では山という意だ。ところが韓国では核心主題という意味で使われる。「記事にもヤマがなければならない」「この記事のヤマは何なの?」という形で使う。日本の新聞社でそのような形で「ヤマ」という言葉を使うのは聞いたことがない。
そんな話を交わしながら刺身と焼酎を楽しんだ。その時馬山(マサン)出身の知人が「ソウルでは飲むのが難しい焼酎がこの店にはある」として注文した焼酎が「舞鶴(ムハク)」という馬山の焼酎だった。瓶には「舞鶴」と漢字で書いてあった。日本人ならば見ればすぐに京都北部の舞鶴という地名が思い浮かぶだろう。そこで私もその瓶を見た瞬間に日本のお酒かと思い喜んだ。馬山出身の知人によると馬山にある舞鶴山から取った名前だという。
「京都の舞鶴とは関係ない」とSNSに舞鶴焼酎の瓶の写真を上げたところ、ある日本人が「舞鶴は港町なので韓国と縁が深い」と教えてくれた。そういえば1945年8月に起きた浮島丸沈没事件も舞鶴港で起きた悲劇だった。解放後日本から帰国しようとする朝鮮出身者らが青森から釜山へ行く浮島丸に乗ったが、突然船が方向を変え舞鶴港に入港しようとしたが爆発が起き沈没した事件だ。死亡者が5000人を超えるという資料もある。計画的なものという指摘もある疑問の事件だ。
気になって舞鶴山の名前の由来を探してみたところ、山の形が鶴が踊るように見えるからという説もあり、日帝強占期に日本人によって付けられたという説もあるという。それならやはり舞鶴と関係があるかもしれない。最初に舞鶴という漢字を見てうれしがった気持ちが少し複雑になった。
韓国の人たちから日本語のような単語を聞くたびに気になって検索してみると「日帝の残滓」と説明されていることが多い。事実、建物であれ言葉であれ「日帝の残滓」に接するものは韓国にあるからだ。韓国にいれば自然に日本と関連した部分に関心が行くが、知ってみるとその大部分が植民地支配と連結されたものだ。
日本では日帝強占期に日本語を強要したという事実自体も知らない人が大部分だろう。植民地支配の歴史さえ知らない人もいるほどだからだ。3・1独立運動100周年だった昨年に韓国で公開された映画『マルモイ ことばあつめ』は1940年代に日本語を強要される中で危険を冒して朝鮮語辞典を作ろうとした人たちの話だ。正直、日本では公開するのが難しいと思いながらも、こうした歴史もあったということを伝えようと日本メディアに『マルモイ』を紹介する記事を書いた。ところが予想ははずれた。いま日本で『マルモイ』が公開され話題になっている。
『マルモイ』の日本のホームページを見ると、俳優佐野史郎のコメントがある。「数年前、韓国の方とドラマで共演した際、韓国語の中に日本語と同じ単語がいくつもあることを知った。けれどそれらは朝鮮半島が日本統治下にあった時代に、強制的に日本語を覚えさせられた結果残った言葉だったのだ」。
このようにいままで知らなかった事実に衝撃を受けて見る日本の観客もいるようだ。韓国で過ごさなければ接するのが難しいと考えた「日帝の残滓」について、海を渡った映画が代わりに教えてくれている。
成川彩/元朝日新聞記者
【コラム】韓国映画「マルモイ」日本で公開され話題…改めて知った「朝鮮語抹殺」の痕跡(1)
日本語だが韓国で別の意味で使われる場合もある。例えば韓国の新聞社や出版社などで使う「ヤマ」という言葉。日本では山という意だ。ところが韓国では核心主題という意味で使われる。「記事にもヤマがなければならない」「この記事のヤマは何なの?」という形で使う。日本の新聞社でそのような形で「ヤマ」という言葉を使うのは聞いたことがない。
そんな話を交わしながら刺身と焼酎を楽しんだ。その時馬山(マサン)出身の知人が「ソウルでは飲むのが難しい焼酎がこの店にはある」として注文した焼酎が「舞鶴(ムハク)」という馬山の焼酎だった。瓶には「舞鶴」と漢字で書いてあった。日本人ならば見ればすぐに京都北部の舞鶴という地名が思い浮かぶだろう。そこで私もその瓶を見た瞬間に日本のお酒かと思い喜んだ。馬山出身の知人によると馬山にある舞鶴山から取った名前だという。
「京都の舞鶴とは関係ない」とSNSに舞鶴焼酎の瓶の写真を上げたところ、ある日本人が「舞鶴は港町なので韓国と縁が深い」と教えてくれた。そういえば1945年8月に起きた浮島丸沈没事件も舞鶴港で起きた悲劇だった。解放後日本から帰国しようとする朝鮮出身者らが青森から釜山へ行く浮島丸に乗ったが、突然船が方向を変え舞鶴港に入港しようとしたが爆発が起き沈没した事件だ。死亡者が5000人を超えるという資料もある。計画的なものという指摘もある疑問の事件だ。
気になって舞鶴山の名前の由来を探してみたところ、山の形が鶴が踊るように見えるからという説もあり、日帝強占期に日本人によって付けられたという説もあるという。それならやはり舞鶴と関係があるかもしれない。最初に舞鶴という漢字を見てうれしがった気持ちが少し複雑になった。
韓国の人たちから日本語のような単語を聞くたびに気になって検索してみると「日帝の残滓」と説明されていることが多い。事実、建物であれ言葉であれ「日帝の残滓」に接するものは韓国にあるからだ。韓国にいれば自然に日本と関連した部分に関心が行くが、知ってみるとその大部分が植民地支配と連結されたものだ。
日本では日帝強占期に日本語を強要したという事実自体も知らない人が大部分だろう。植民地支配の歴史さえ知らない人もいるほどだからだ。3・1独立運動100周年だった昨年に韓国で公開された映画『マルモイ ことばあつめ』は1940年代に日本語を強要される中で危険を冒して朝鮮語辞典を作ろうとした人たちの話だ。正直、日本では公開するのが難しいと思いながらも、こうした歴史もあったということを伝えようと日本メディアに『マルモイ』を紹介する記事を書いた。ところが予想ははずれた。いま日本で『マルモイ』が公開され話題になっている。
『マルモイ』の日本のホームページを見ると、俳優佐野史郎のコメントがある。「数年前、韓国の方とドラマで共演した際、韓国語の中に日本語と同じ単語がいくつもあることを知った。けれどそれらは朝鮮半島が日本統治下にあった時代に、強制的に日本語を覚えさせられた結果残った言葉だったのだ」。
このようにいままで知らなかった事実に衝撃を受けて見る日本の観客もいるようだ。韓国で過ごさなければ接するのが難しいと考えた「日帝の残滓」について、海を渡った映画が代わりに教えてくれている。
成川彩/元朝日新聞記者
【コラム】韓国映画「マルモイ」日本で公開され話題…改めて知った「朝鮮語抹殺」の痕跡(1)
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