米国の新型弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」 [写真=ロッキードマーチン ホームページ]
日本政府は北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対応するとし、2017年に米国産「イージス・アショア」の導入を決めた。その後、4500億円にのぼる配備費用と10年以上にわたり数千億円がかかる施設修理費について「あまりにも高い」という批判が絶えなかった。配備予定地(秋田県と山口県)の住民が反対する中でも配備作業を強行してきた安倍政権には打撃が避けられないとみられる。
河野防衛相が明らかにした計画停止の理由は技術的な限界による費用と時間の問題だった。特に迎撃ミサイルを発射する際に使用するブースターを訓練場内に落下させることができるかについて技術的な確信が難しいと説明した。ブースターを訓練場内に落とすことができなければ、配備地域の住民の安全を保障できないということだ。今まではソフトウェアの改修で可能と考えてきたが、ハードウェアまで改良する必要があることが明らかになり、結局、計画停止を決めたと河野防衛相は説明した。
しかし安倍首相が「日米同盟の象徴」としてきたこの事業の停止には「変わり者」河野防衛相の判断が決定的な影響を及ぼしたとみられる。朝日新聞の報道によると、河野防衛相は今年に入って米国からの導入が決定していた装備の目録を確認し始めた。導入を決めた当時より価格が大幅に上がった装備を対象に「導入を断念する場合、代替可能な選択肢がないか」を主にチェックした。予算の浪費を防ぎ、防衛費を効率的に使用するための作業だった。
こうした状態で「イージス・アショア」のブースター落下問題が提起されると、河野防衛相は「投資としても合理性がない。別のミサイル防衛のやり方を考えないと、国防を担う責任を果たしていない。潔くやめよう」と言って決断したと、朝日新聞は伝えた。河野防衛相は今月4日と12日の2度にわたり安倍首相に会って「合理的でない」と理解を求め、同意を受けたという。普段から独特のキャラクターで特異な行動も見られる河野防衛相らしい発想だった。今回の決断をめぐっては「次期首相関連の世論調査で3、4位の河野防衛相が勝負に出た」という解釈もある。
2人の間にどんな対話が交わされたのかは確認されていないが、安倍首相が河野防衛相の提言を快く受け入れなかった可能性もある。朝日新聞によると、安倍政権の幹部は河野防衛相について「おかしい」という批判もしている。政権の核心部では「今回の発表は河野防衛相が主導したもので、結局は彼の思い通りに進まないこともある」という見方も出ている。日米関係に及ぼす悪影響を心配する外務省も戸惑っている。
また、16日に開かれた自民党の国防部会・安全保障調査会合同会議では「寝耳に水」「無責任」という批判が続出し、安倍首相に説明を要求する主張も出てきた。特に防衛相を務めた小野寺五典安保調査会長は「それなら陸上イージスに代わる抑止力として『敵基地反撃能力』を持つべきだ」という主張までした。
日本政界では「安倍政権がレームダック状態であることを如実に見せる決定的な事例」という指摘も出ている。いかなる経緯であれ、2017年12月から安倍首相が精力的に主導してきた事業が白紙化された。また、安倍首相の地元の山口県が「イージス・アショア」配備予定地域だったという点で「首相の威信が失墜した」という主張が自民党内部で出ている。
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