中年男性なら誰でも幼い頃、空き地に２つのかばんをゴールポストのかわりに置いてサッカーをした記憶があるだろう。１９世紀後半まで、サッカーのゴールポストは、これとさして変わらなかった。サッカーがラグビーと別の道を歩み始めた当時は、ゴールポストはあったが、クロスバーはなかった。２つのかばんをちょっとましにした程度だったわけだ。

当時はシュートしたボールがゴールポストの間を通過しさえすれば、どれだけ高くてもゴールとして認められた。初のサッカー規則として、１８６３年に制定された英国サッカー協会の規則には、「ボールの高さには関係なく、ゴールポストの間を通過すれば得点として認める」と明示されている。


クロスバーが登場したのは１８７５年のこと。国際サッカー連盟（ＦＩＦＡ）と英国の４つのサッカー協会（イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド）は、サッカーの規則を改正し、ゴールの高さに制限を設けることを決めた。


はじめはゴールポストの間にひもを結んだ。それでクロスコード（Ｃｒｏｓｓ　Ｃｏｒｄ）と呼んだ。しかし、シュートしたボールがクロスコードに当たった場合、得点にするかどうかをめぐる議論が多発、１８８０年代に入り、現在と同じような横に柱をかけたバー（Ｃｒｏｓｓ　Ｂａｒ）が登場した。

ここでも、別々の道を行くサッカーとラグビーの差が出ている。ラグビーのコンバージョンキックはクロスバーを越えて初めて得点になるが、サッカーではボールが四角形のゴールポストの中に入って得点になる。

シュートしたボールが何度もゴールポストやクロスバーに弾かれれば敗れる、というジンクスがある。なぜだろうか。互角のチーム同士では、得点のチャンスがそれほど多くない。ゴールポストにあたるシュートは、めったにないチャンスの１回を逃したことになるため、得点の確率もそれだけ低くなる。このジンクスは至極当然の話である。